極小の粒の集合体、粉山使徒。いかなる突いたり蹴ったり(本気で痛いぜジャングルブーツ攻撃を含む)する物理的攻撃も効かず、下手にミサイルなどぶち込もうものなら粉塵爆発を起こすこと間違いなしで、そのガタイの小ささからいいかなる場所にも入り込み、機械などの調子を狂わす・・・・苦戦必至の使徒をエヴァ弐号機と葛城ミサトはあっさりと平らげた。そのやり方は以下の通りである。
 
 
壱、超電磁コーティングされた盾を用意する。電源はそこらのビルから引きましょう。
念のため焦げつかないよう油を塗るのがベター。
 
 
弐、非常に移動速度の遅い(マギの計算によると年に三センチほど移動するらしい。これもんで高速移動されたら手に負えなかっただろうに)粉山使徒の周りに巨大な鉄板で囲いをつくる。ビルの工事現場のようなあれである。
 
 
参、そこに水を注ぐ。エヴァを冷やすためにネルフ本部には水は大量にあるし、水利もうまいことしてある。それに加えて今回は生体部品製造実験やその他もろもろの化学実験により使用された”残り水”を有効再利用した。粘度が大幅に上昇し、つなぎの働きをなす。
 
 
四、てきとうな泡立て器でこねる。こねる。ダマがのこっていてはいけません。
 
 
五、それを熱せられた盾の裏面におタマで掬ってのこさずかけます。
 
 
六、膨れ具合焼け具合をみて、しばらくしたらプログナイフ・・では小さいので、使徒斬り日本刀・初凰(エヴァ初号機専用)でも使ってうまくひっくりかえしましょう。料理上手な初号機専属操縦者の御利益で不器用な貴女もきっとうまくいきます。
 
 
七、片側も焼けて膨れていびつな感じでまるくなってきたら出来上がりです。
おそらくコアもこの中のどこかには入っているでしょう。インチキな縁日屋台ではありませんから。多少、小さくとも。どこかには。そして、大声でこう叫ぶのです。
 
 
「超電磁たーこーやーきーーーー!!!」と。
(注*もし、膨れなかったら”超電磁カルメラ”で)
 
 
弐号機パイロットは”超電磁た”・・・・のところまでいって急に口を噤みました。
そして、無言のまま、無言のまま破壊。使徒殲滅。
「なんでアタシがこーゆーことを・・・こんなのは完全シンジの役回りでしょうに・・・・あったく・・・」そう言いながら初凰を拭き拭きしながら納刀。
次の文句を言う間もないうちに、雷電鉾でバリケード造りに向かう。ありあまる電力でリニアモーターを作動させて多少は動かしやすくしてあるが、大荷物にはかわりない。
「戦闘兵器っていうよか・・・こりゃ工事機械よね・・・・」
えっちらおっちらと。惣流の篭屋がほいさっさ。
 
 
 
 
セントラルドグマ
 
 
「へえ・・・・やるものねえ」
弐号機と使徒との戦闘をモニタで見ながら感心したようにいう碇ユイ。
「エヴァの機動と発令所の指令速度。いい感じで組上がってる・・・長島カントク風に言うといわゆるひとつの”スピード&チャージ”攻めの気持ちがすごいわね。いわゆる、攻撃的な守備ってのが出来てる」
まだ白衣は脱いでいない。
 
「あの・・・・本当に初号機で戦闘を・・・なさるんですか」
”女偏にブルー”の赤木リツコ博士が確認し直す。出来れば、この目で実験機体・エヴァ初号機の機能を見たくはなかった。それは白銀の管理機体のことを思い出すから。感傷といってよい。のんきに感傷に浸っていられるのは理由がある。
この人に関して、戦闘の心配をする必要はないから。一日の長どころではない。
 
「だってアスカちゃんひとりだけを戦わすわけにはいかないでしょ。シンジが抜けたのはわたしのせいなんだし」
やはりこともなげに返答される。初号機本来の機能を復活させる準備は順調に進んでいる。
こと、エヴァの戦闘面に関しては碇ユイほど知り尽くした人間はいない。
実験機モードに変換すればチルドレンでない、碇ユイが動かせるのもひどく順当な話で、かつて実験機に乗っていたのも彼女なら、それを応用して戦闘プログラムを組んだのも彼女で、なんせ動作に関してはモーションキャプチャーさえやっているくらいで。他のエヴァが戦闘面であれだけ激しく自在に動けるのも、基本的に碇ユイ、彼女の運動神経体動能力のおかげだといえる。モデルが良かったのだ。碇ユイはおそろしく喧嘩実戦に強かった。
赤木リツコ博士は母親からかつてその武勇伝を聞いていた。研究もよくやったが喧嘩もよくやったという。特に最大規模は碇ゲンドウとの結婚式で、六分儀家との間で揉めに揉めて網走千人斬りの学帽政もびっくりの修羅場らばんばになったそうだ。
「紅いウェディングドレスなんてはじめてみたよ・・・・それを嬉しそうに着るんだから・・・・これはかなわないな、と思ったわよ。いいね、リッちゃん、ユイさんにだけは逆らっちゃダメよ」
もしそれが十分の一でもほんとううだったとしたら・・・・
実験というのは要するに、限界をはかることだ。その運用を。ヒトの限界を。
昔のデータから分かることだが、実験機時代のエヴァ初号機の能力を超えたエヴァは今現在世界で稼働しているエヴァの中にはいない。超えられるはずもない。実験初号機のデータから各エヴァの運用限界値が定められているのだから。それ以上、強く速く鋭く、動けない。それをやれば拘束具や装甲が保たないからだ。計算強度が弾けて破壊される。
そして、何よりATフィールドの出力がケタ違い。その展開の豊かさ広域についても。
よく子供の追いつくレベルではない。
唯一、超えた、と思われるのは同じくエヴァ初号機戦闘系の、北海道からここまでの帰還での「雷降下」のあれだけ。計測不能の、あれだけ。
エヴァシリーズが強いのも、使徒に勝っているのも、世界がサードインパクトおこさずに平和でいられるのも、郵便ポストが赤いのも、みぃんな、碇ユイのおかげといえる。
「エヴァのすすめ」から始めたドシロウトの碇シンジが戦果をあげて皆、驚きはするがその現実を信じるのは、少年が碇ユイの息子だから。
 
ただ、さすがにエントリープラグに搭乗して、エヴァを駆るわけにはいかなかった。
「エントリープラグは外しておきましょう。初号機が”どちらに”従えばいいのか混乱してしまいますものね」
 
 
「さて、そろそろいきましょうか」
ばさっと、まるで夕焼けの決闘に向かう番長のように最強に強まった好戦光に照らされ、威勢良くかつ、いなせに白衣を剥いだ。
「この戦闘の様子は詳しくビデオに記録しておいてね。あとでシンジにみせるから」
 
「人類最後の決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオンをどうやって扱うか・・・・
まだまだ少年少女はわかってないみたいだから。大人の戦い方ってのを伝授しとかなくちゃね・・・・あー、ヒロシマの山の中はひまだったから必殺技も二十ばかり編み出しちゃったわよ。あ〜腕が鳴るわ。ぽきぺき」
悪い冗談のように聞こえる・・・・・。しかし、圧倒されっぱなしの赤木リツコ博士。
なんでこう、楽しげなのだろう。一線を超えた絶対の覚悟によって「人間以上の人間」になってしまったせいか・・・・・いや、もともとこういう女性だったっけ・・・そうだ。
 
 
これだけの力をもちながら、なぜヒロシマなんかに隠棲しなければならなかったのか。
息子を乗せず、自分でエヴァを操っていたなら、たやすく使徒を撃退していただろう。
 
 
「リツコちゃん、あのトランクからお願い」
「はい」
碇ユイの荷物、ヒロシマから運んできた楽器を入れるような細長いトランクには
 
 
赤の義腕
 
 
いや、義碗と言うにはまともな腕の形をしていない。丸みのない棒のように伸びた腕先は手指どころかねじくれた音叉のようになっていた。それを赤木リツコに手伝わせ装着する碇ユイ。「なんで泣きそうになってるの?リツコちゃん。震えてるし」
「いえ・・・いえ・・・・」それを見た途端に身体が震え、涙がぽろぽろと溢れてくる。
必至で涙腺上で耐える。その胸のうちで、あなたこそなぜ泣かないのか問いながら。
自分のような科学者が・・・・宗教の深い信徒のような感情に囚われるか。
 
 
「これはただの道具よ。そんな、心動かされることもないわ」
ふいふいと二三度振ってみて具合を確かめる。「フック船長みたいでしょ」
それから、巨大な円筒形の、ホムンクルスを育てる錬金術師の筒のような”試作操縦席”に歩み寄る。
 
「ほんとうはエヴァなんて使徒殲滅のためには必要ないの。
兵器として考えた場合、エヴァはあまりに使い勝手が悪いもの。だから、それを支援する組織、人間、操縦者全てが歪になる。どだい、話がむちゃなのよ。
それはあなたがたを見ていればわかる。砂上の楼閣を支えようとしているあなたたちを。
ネルフはこういう形にするべきではなかった。島国ひとつ、使徒の領域、実験場として与えてやればよかった。使徒の全終結・・・その後に全ての決着を一夜でつけるべきだった。
 
まるで、サーカスのよう。第三新東京市、それが丸盆でエヴァが道化。吠える作戦家が猛獣で、冷たい科学者が計算をするイルカのよう。でも、サーカスの団長になりながらも、あの人は待つことが出来なかった。計画を無視して時計の針を進めてしまった。
それが、メジュ・ギペール・・・・取り込まれてしまっていることに、まだあの人は気づいていない。
過去と現在と未来、三つの時計が必要なのよ。いま、その三つともこの都市にはいないから、かわりにわたしが数えている。時間の、許す限り。時が消えるその瞬間まで。
 
だけれど、その懸命なかたちが、いつかあなたたちを救う、窮地に陥った時の切り札になるでしょう。
 
ありがとう、シンジを、息子をいつもささえてくれて。あの子にもいっておくわ。
どんなことがあっても、なにがおころうと、あなたたちのことを忘れてはいけないって。
 
たとえ、ひとのかたち、こころのかたちを失っても」
 
 
「え・・・そ、それは・・・・どういう・・・」
 
「・・・・ま、実戦となれば百パーセント勝てる保証もないから、こういうことも言っておくわね。規則通りの遺言よ。もう、滅多に会うこともないだろうし・・・・
そういえば、リツコちゃん、あなた・・・・」
 
「は、はいっ!!」
 
「お見合いする気ない?じつはそっちの方も心配で・・・」
外見上は自分より若いこの人に言われてもなあ・・・若いだの老いだの関係ないけれど。
「シンジから聞いた話によるとまったくもって完全に男っ気なしみたいだし・・・・かといって職場結婚しようにも、完全にネルフの男連中からは一目も二目も置かれてて同年代じゃ釣り合う人もいないっていうんじゃねえ・・・・年寄りはいやでしょ」
「は、はぁ・・・・・」
 
「ま、冗談ばかりいってないで、そろそろ行きましょうか。アスカちゃんが善戦してくれてるウチに。あ〜、シンジはぼっとしてるから、ほんとにこういう覇気覇気した娘がおよめさんになってくれればねえ・・・・いいんだけど」
碇ユイは惣流アスカを、またはその腕っ節を大いに気に入ったようだ。覇気覇気。
 
 
 
モニターの中で、エヴァ弐号機は雷電鉾をテコにして、「うぬぬぬぬぬぬぬ・・・・・・おいさあっっ!!」超巨大なアイロン使徒を縦にもちあげていた。
そうすればアイロンは何もできない。主婦なら誰でも知ってることだが、葛城ミサトがその知識を知っていたということが周囲の驚きを誘った。「あんたたちね・・・・・」
 
 
 
ばたん、と試作操縦席が閉じられる。すぐに血のように赤い試作LCLで満たされる。
それと同時に円筒に隔壁がおろされる。遠隔操作で戦闘領域にいるわけでもない、本来は必要ない措置だが、これは碇ユイの希望。
戦闘する己の姿を誰にも見られたくない、と。その生体モニター映像さえ切らせた。
セントラルドグマに自分一人しか連れなかったのも。
これで、数値でしか彼女の姿は外部に伝わらなくなる。隔壁に隠される前の噴き出す赤LCLに濡れた顔・・・・やりきれなさに、そして、恐怖に一瞬、歪んだ表情。それはすぐに復帰された。凄まじい精神力。すぐに己を取り戻した。精神汚染に強い耐性を持つ。
何者にも・・・エヴァにも取り込まれぬ精神力の持ち主・・・だから・・・あの人は。
あんな役目を負わされた。
そして、すぐに計測機械は、通常のデータからは考えられぬ数値を次々と弾きだし始めた。心拍数、脳波、その他の生体データ。子供と大人の違いを遙かに超えて。人の壁を。
シンクロ値が100を超えてまだ上昇を続ける・・・・。
 
 
「エヴァ初号機、起動」
 
 

 
 
ろぉんしい・・・・まいらぁ・・・・んん・・・・しばぁいらぁ・・・・んん・・・
 
ろぉんしい・・・・まいらぁ・・・・んん・・・・しばぁいらぁ・・・・んん・・・
 
遠くの方からコーランだかお経だかアーメンだか、放送声が風に乗って聞こえる。
CMなどではない、ここには購買欲をそそられる元気な人間はいないから。
これは弔いの声。
 
海からつきたつ神のように巨大な腕・・・緑腕、黒腕、青腕、・・・・ポートピア第�郡�工事計画により製造された人工の神腕、超巨大なクレーン・・・それらによって持ち上げられて水没から免れている、そして、日々成長を続けるそれらの腕により、天上に近づいていく、いつか天上に辿り着くまち。第�挟�工事に造られた第二次天災に消された魂たちの安置所、世界一広大な墓場「ゆきみる」を抱きながら。人工環境にありながらかくの事情で、恐山も富士山も及ばぬ日本最強の霊地になってしまった人工島。神も仏も予想だにしない展開であったので、霊的にどえらく備えがなかった。なんの防御措置もない原発が稼働している、と考えてもらうと分かりやすいか。周囲の県にその力を思う存分放出し、まき散らした。その力に感応した人間はレミングのようにしんこうべに激走し、しんこうべに辿り着くと同時に心臓マヒで死んでしまう、などというええじゃないかのおかげ参りよりタチの悪い事態が数千人単位で発生した。第二次天災の混乱期で詳しい資料が残されているわけではないが、死んでから甦った人間も出た、という話もある。とにかく、ばかでかい墓場があるせいか、それに引き寄せられて死にたくなる人間が後を絶たなかった。そこで、結界をはるべく、あちこちの有力神社仏閣から勧進してそれ用に神社仏閣を建設してみたのだが、効果はなかった。建設途中で事故がおきて未完成に終わったり、霊力に呑み込まれて炎上したりと、ひどいのになると完全に死にたくなる霊力の手先になったりするところもあった。政府も神社仏閣業界もすっかりびびってしまったところに要請を受けて闇から京都から出馬してきたのが、碇ゲンドウだった。このころはまだ六分儀ゲンドウと名乗って碇ユイと結婚してなかった。
ゲンドウのやり方は神も仏もあるものか方式で、なんとしんこうべに大きな病院を六つ開業させた。霊力にひかれてしにたくなるよーな奴は一時的な精神錯乱、病気であるので病人は入院させて完治させて金をとる、ということだった。
そのやり方は当たり、霊力にひかれてしんこうべにやってきた人間も、病院の看板を見るとそっちの方へ行ってしまった。不思議なもので、それが結界になった。科学の長男が大学なら次男くらいにあたる病院がである。病院が賑わいだすと、霊異もおさまってきた。
状況も丸くおさまってきたし、ゲンドウもさて京都に帰ろうと準備していたある日のこと。
重大な事件が起こった。
碇ゲンドウのあずかり知らぬ、許認可していない病院がこともあろうにゆきみる墓場のある緑腕地区の植物園の中にオープンしたのであった。もぐり医者が現れるのは商売繁盛のあかしだが、勝手にやられるのはまずい。金銭第一に見えても、碇ゲンドウはきちんと霊力の流れる方向を見極めながら(実際の作業をおこなったのは赤木レンタロウ)病院を造った。立ち入り禁止してある緑腕地区に人が流れるのはせっかく整っている気脈を乱す恐れがあった。しかも、その病院は腕がいいのか、専用のバス路線がつくられるほど毎日患者が通っていた。とくに、ほかの六病院が匙をなげた患者を好んで拾う、というのは実務完全主義の細かいゲンドウの気にいらなかった。
いちおう、造るからにはその委託された権力をもって超一流のスタッフを集め、設備も大金かけて整えたのだから。昔からゲンドウにはそういうところがあったのだ。かけた金が無駄になるのがいやだったのかもしれないが。
そして、自分の目で確かめるべく、ゲンドウはその病院・・・「綾波脳病院」に乗り込んでいった。そこで、「綾波ナダ」と名乗る赤い瞳の人物に出会うことになった・・・・
 
 
墓場と病院の都市・しんこうべ。
 
 
「ふう・・・・ふう・・・・・やっと着いた・・・・」
一山越えて息を整える碇シンジ。ここはロープウェー乗り場。ここからロープウェーに乗って降ってしんこうべ市内に入る。
いったん、列車はしんこうべの手前で駅でもないのに停車して、山の中そこで碇シンジを下ろした。碇シンジは地図を片手にリュックを背負ってえっちらおっちらと山登り。
なんでそんなめんどうくさいことをするかというと、母親のユイの指示であった。
 
��
 
「万が一、かぎつけられたら駅で捕まって面倒なことになるからね。特別列車なんかでこようものならすぐにばれちゃうし。追撃を阻むためレイちゃんがシンジの人相を教える可能性も・・・・」
 
��
 
「とにかく、碇姓は使っちゃだめよ。偽名もだめ。連中にはすぐに見破られるから。
六分儀、そう、お父さんの旧姓、六分儀にしておきなさい」
 
��
 
「身体は鍛えてる?アチョーな中国拳法とか、オメーンな剣道とか、オラオラオラな喧嘩とか、ガッツなボクシングとかアントニオなプロレスとかグレートなグレーシー柔術とか・・・・ぜんぜん?まったく?チェロなら弾ける?・・・・そんなのでどうやって好きな女の子を悪漢の手から守るのよ・・・・エヴァで使徒から守ってもらっても女の子はあんまり感謝とかしないのよ。そういう生き物なの。いい、シンジ。こういう話があるの」
 
��
 
「ガッツ石松さんがある時連想ゲームに出演したの。そして、リンゴ、といわれてゴリラ、と答えたの・・・・なぜか分かる?・・・・・分からない?・・・・うーん、ちょっとむつかしかったかしら。デートの時、この質問したらお父さんも答えれなかったから」
 
��
 
「アントニオ猪木さんがある時、予備校に講義に行ったの。そして、居並ぶ生徒にこう言ったの。”おれは君たちに気合いを入れるためにここに来た。しかし、おれが君たちを殴ったらひとたまりもなく死んでしまうだろう。そこで、君たちがおれを殴ってほしい。そして、君たち自身に気合いをいれてくれ”・・・・・じーん、とくるわね。くるでしょ。
それで、生徒たちは猪木さんを次々殴っていくんだけど、その中にパンチの強い子がいたわけね。それで、猪木さんはついカッとなってその生徒を殴り飛ばしてしまうの。
本能的にね」
 
��
 
「まあ、とにかく身を守る手段を持っていきなさい。逃げるだけじゃことは成らないし、あの連中はやたらに足が速いから。碇シンジだとばれた上で、捕まったら間違いなくフクロにされて海に沈められるから」
 
��
 
「とにかく!、なにがなんでも!!、至上命題として!!、レイちゃんを取り返してくるのよ。たとえ世界中を敵にまわしても。母さんと、忘れてるけどお父さんのお願い。
それが出来るのは、世界中でシンジ、あなたひとりだけなんだから。
本人にもできないことは、ひとが手を貸してあげるしかないから」
 
��
 
「わたしがレイちゃんを覚えてるわけ?さあ。レイちゃんが知らない場所にいたからかな。
誰も覚えてないならわたしがいくところだけど、シンジがまだ覚えてるなら任せるわ。
留守のことなら、心配しなくてもいいわ。母さんがなんとかしてあげる。
まだ、”蒼・・・、アレ”が来る時間じゃないから。初号機は大丈夫・・・・」
 
��
 
「そういえば、シンジ。お姉さんと妹、どっちがほしい?・・・・ふふ、どっちなの・・・・・・妹が欲しい?やっぱり。・・・・というわけで、シンジ、実は・・・・
レイちゃんは・・・・・あなたの・・・」
 
 
��
 
 
「っていうと、なんか気合いが入るでしょ。このまま信じさせても良かったけど、現地についてから話が面倒になりそうだから。許嫁でしたっていうのもどこかのさすらいの格闘家みたいだし・・・・・シンジの場合ねえ・・・・ふーむ・・」
 
��
 
「少々強引でもいいわ。これだけのことやったんだから、多少の説得じゃ帰る気にはなれないだろうから。・・そうねえ思い切って、ネルフ壊滅、全滅、崩壊の危機!!〜〜
って感じのリアルなハッタリをガツーンと一発、かましてあげなさい。レイちゃんにはあなたの心は読めないだろうし、初号機パイロット直々にしんこうべまで来ざるをえない状況ってのはいかにもそれっぽいし、演技ね、演技力が勝負の分け目の関ヶ原になるわ」
 
��
 
「もし、どうしても困ったり、怪我をして身体を診せなきゃならないような時は、
”綾波トア”。この人を探して頼りなさい。しんこうべで唯一人、シンジの敵にまわらない人だから・・・急ぎの時は探してる時間がない?それは大丈夫、しんこうべに着いたらすぐに分かるような人だから・・・・・まあ、会わなきゃ会わないでいいんだけど」
 
��
 
「出来れば、なんで第参新東京市を去ったのか、その理由も聞き出してほしいけど・・・・・あ、でも無理そうだったらいいわ。それ相応の覚悟なんでしょうし。覚悟を決めると理由ってのは消滅しちゃうから。後戻りできないほど強烈なやつは・・・・ね」
 
�筺ΑΑΑΝ筺ΑΑΝ筺ΑΑΑ�
 
母親のユイから”電話”がかかってきたのだ。
本部の碇ゲンドウから葛城家へ連絡がある前に。この間、第参新東京市全域の電話機が普通になった。原因は不明。調査さえ差し止められた。これで長電話だったら大迷惑だ。
だが、碇母子はけっこうな時間、36分しゃべりあげた。この間、市内上空になぜか流れ星が36個見えたという。一分間にひとつ流れる奇妙に正確な流れ星が。
 
自分の部屋に電話をもっていった碇シンジは近況と綾波レイのことを問われて、思い切りばらした。自分以外の皆が皆、綾波レイのことを忘れていることを。
問われた、ということは覚えている、ということに他ならない・・・・。
すべてをあらいざらい話した。幽霊団地の影波さんのことも。
 
「どうすればいいんだろう」という少年らしい青若色の問いに、母ユイは。
 
「命の危険がかなりあるけど、連れ戻しにいくべし、断固いくべし、えぐりこむようにいくべし」という恐ろしい「あしたのために」な指示をくれた。
 
「母さんは僕に死ねっていうのかよ!母さんは僕より綾波さんの方が大切なんだー!」ということにもならず、碇シンジはその指示に従った。こういうのはマザコンなのだろうか。
母ユイは自分と入れ替わりに第参新東京市にやってくる。やってくるのである。
”都市が迷う”と母ユイは言った。よく分からないが、碇家の母子はあまり長い時間、同時に第参新東京市にいてはいけないのだという。エディプスでもあるまいし。
まあ、とにかく実際に「おいしい(というのも語弊があるが夫婦であるし)」思いをするのは碇ゲンドウ父さんだけ(というのも語弊があったが)であり、碇シンジにとってこの道行きは・・・・どれほどの値打ちをもつか。
 
 
母ユイか綾波レイか。
 
 
ねうちの選択を。
 
 
「ふう・・・・・・・・・・このまちのどこかに・・・・」
どこかにというか、所在地の住所は分かっているのだが。
「しんこうべバス 緑腕地区 綾波脳病院前」へ停留所からバスにのればいい。
 
これは、気分。「ここが、綾波さんの故郷・・・・・・」
 
その気分は実はすでにSDATから流れる音楽に支配されていた。
「お〜、メリーアン・・・・・・とーつぜん、どこにきえたのか・・・」
アルフィーの名曲「メリーアン」である。碇ユイはこの曲でてめえの息子を洗脳してしまっていた。「そうでもしないと、レイちゃんよりわたしを選ぶ可能性大だし、あの子・・」
母親にも信じてもらえないとは、碇シンジ、名前負けしている。
 
そして、碇シンジ自身も消えてしまう。ロープウェー乗り場のトイレに隠れてしまうと中で着替える。ゆったりとした六分儀の法服、椎茸のような編み笠、そしてサングラス。
怪しい。しかし、しんこうべの風にのっている。六分儀シンジが登場した。
 
「あなたのすがたを 求め歩くぅ・・・・・
誰もが通り過ぎる道しるべか・・・・・・・」
 
そして、ゆらゆらと、ロープウェーで綾波レイの本貫地・しんこうべに降り立った。
 
 

 
 
エヴァ弐号機が苦戦しだした。
 
どうにもやりにくい使徒が現れた。なんというか・・・異色な、異色でなかった使徒もいなかったが・・・・あえていうなら、「ガッツのある使徒」とでもいおうか。
 
始めは楽勝だったのである。楽勝というか、そいつはなんと選んだよーに第参新東京市のはしっこ、エヴァ弐号機から最も遠い位置に降臨すると、弐号機に向かってもこずにセコセコと電源ビルのしかも、電源コンセントを狙って、小槌のような武器で破壊しはじめた。
その外見は、力太郎になるまえの垢でこしらえられた垢人形とでもいうか、人間型をしてはいるが、大きさはおよそエヴァの三分の一。薄汚い色をしてゴミ捨て場に転がっているズタボロ人形のような姿である。使徒に順列があるとしたら、最下層の奴だと見てまず間違いあるまい。だが、エヴァ弐号機に対して電源を破壊しておくという戦術は有効でナイスだった。武将の前を露払いする小物でござい、ともろにその行動が語る。
「やつは”タパエル”と命名しよう」と冬月副司令が伝家の宝刀を抜く。
 
だが・・・・・
 
弐号機のヒト蹴りでタパエルは吹っ飛んでひくひくと震え、動かなくなった。
パターン反応も消失した。弱すぎる。あの一撃でコアも砕けたのであろう。
 
そして、弐号機が背を向けて次の使徒に備えるべく去っていくと「むくり」と起きあがりパターン反応も復活した。「死んだふり」であった。弱いなら弱いなりの特殊能力がないとやはり使徒の世界でも生きていけないのかもしれない。そして、チョコチョコと弐号機から遠ざかるようにして距離をとり、セコセコと電源コンセントの破壊を続ける・・・・
 
「なんちゅー使徒よ・・・・」葛城ミサトもあきれるしかない。
 
こーゆー敵が惣流アスカの騎士道精神に反してコケにして逆らってとにかく最も怒らせるのはいうまでもない。すぐに駆けてとってかえすとタパエルを「このこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこの・・・・・このこのこのこのこのこのこのこのっっっ!!」
カルシュウムが足りないんじゃないのか、と冬月副司令が心配するほどの高速さで百五十回くらい踏みつけてやった。さすがにくたばっただろう、と踏みつけるのを止めた途端、 今度は小槌で反撃にかかった。それもわずかに一回で、弐号機の装甲になんのダメージも与えなかったが、窮鼠猫を噛むで、満足したかのようにパターン消失。今度こそ死んだ。
 
だが・・・・・
 
弐号機がその場を離れると・・・・・・「むくり」とまた復活。
「「アンタねえ!!」」惣流アスカと葛城ミサトの声がダブルで。
だが、すぐに苛立ちは鎮められる。タパエルの姿が変化していた。
大きさがエヴァの半分くらいに、そして、小槌が斧に、腹部に胴丸のような装甲が生まれていた。そういえば一度目は一蹴りだったのが、二度目は踏みつけ百五十回だ。
、となると三度目は・・・・その認識が発令所に冷水を浴びせかけた。
「こりゃあ考え方を変えないと・・・・アスカ、てきとうにあしらって」
「あしらえって言われても・・・・」
ほっとくわけにもいかず、かといって倒してしまうわけにもいかない。
こんなに倒しやすいのにーーー!!・・・・あっ!
斧を振るって今度は兵装ビルを木こりのように倒しにかかるタパエルに、とりあえず武器を奪おうとふるったソニック・グレイヴの一撃がクリティカルにヒットした!!
力みのぬけた、スムースな、帝王ニクラウスも唸るであろう会心の一撃。
・・・・・・やってしもうた。すぱこん、とタパエルの身体を両断してしもうた。
パターン反応消失。
「あちゃー・・・・いっそ、外に連れ出して焼いてしまうか・・・・」
「弐号機が離れた時にあやつは甦って来ておる・・・・いっそ背負わせて戦うかの・・・・・まあ、最初の弱さが偽装である可能性がないでもないが。とかく焦りは禁物じゃな」
「子連れ狼じゃないんですから・・・・」
「いっそ、捕獲してしまうのもひとつの手ではあるのう。あとは地下牢にぶちこんでおけばいい。本日はお客が多いことでもあるしの」
このまま反応消失してくれればこの話も打ち切りになるが・・・・そうもいかないらしい。四度目に際し、葛城ミサトは撃滅から捕獲に指示体勢をスイッチさせた。
 
 
そして。
「もう一体、来ますっっ!!」敵陣である赤入道雲を検索していたオペレータが叫ぶ。
 
 
ヒィーーーー・・・・・・・・・・・・ン
 
 
高速飛行型の茜色に輝く蝶のはねと大翼と鈎爪をもち鳥と女の半身を縦に割り合わせて触覚をアンテナにした・・・イカロス阿修羅鳥蝶型の使徒。戦闘機乗りが理想の女神を描くとしたらこんなかたちになるだろうか。はっきいって妖艶でシャープで格好いい。
発令所の男性オペレータたちの数名がなぜか前屈みになってしまっていた。
 
とんでもなく素早い。赤い入道雲から超高速降下をしてくると、なんと、弐号機の頭に
「ふわり」、と着頭した。ハシボソカラスのように脳天に穴をあけるようなダメージを与える気になればやれたであろう。弐号機のATフィールドの盾を切り裂いて接近したのだ。
 
「なあっっ!!めるなあっっっ!!」
惣流アスカのそこからの反射攻撃は発令所の人間にして「あっ」といわせた美技であった。片手をつきながら身体を沈めると、同時に三日月のようなオーバーヘッドキック!!
手で捕まえにいくより遙かに攻撃的であり防御的に理にかなっている。
 
だが、そこからイカロス阿修羅蝶(裏死海文書使徒名鑑未掲載につき、早めの命名が求められる)型使徒は「イカロス阿修羅蝶エル・・・・ではさすがにいかんだろう・・・・」
・・・・弐号機の頭があったあたりの宙に留まったままで、弐号機の蹴りを鈎爪足で受け止めた。物理的にありえない光景だった。パワー勝負はともかくとして、宙に浮いたままの使徒が飛ばされずに蹴りをこらえたというのは。土台もなしで。
そして、強力な鈎爪が弐号機の足をホールドしたまま絞られた。
 
ザクッッ
 
受け止められた足が半分がた切られ、派手に出血する。
高シンクロ率があだになり、パイロットの惣流アスカの頭の中に激痛が走る。
 
ゆら・・・・
ATフィールドで造られた止まり木でもあるらしい。イカロス阿修羅蝶型使徒は宙に鈎爪足を中心に半回転した。そして、今度は弐号機の顔面を手の鈎爪で・・・・・・
 
 
切り裂かれる
 
 
視界が赤く染まる直前、惣流アスカは激痛を忘れて恐怖に震えた。
顔が裂かれる、という当然の恐怖以上に、自分がやられてはあとがない、という認識が心を震わせた。いいように都市が蹂躙される・・・・大量の人間が死ぬ・・・・責任が果たされないという山よりも重たい悲壮に潰される。この期に及んで初号機を当てにしていなかった。だって、そうだろう。いくら動かせるとはいえ、戦闘がこなせるわけもない。
せいぜいやれて銃器をもっての援護射撃くらいなもんだろう。しゃしゃり出て来るくらいだからATフィールドくらいははれるのだろうけど。
初号機はあのバカのもの。あのバカしかよー扱えない。わたしにはわかる。
それなのに、なんであのバカが初号機に乗ってない?この場にいない?
わたしひとりだけで。何をしに行った?それほどたいせつなこと?
それほどたいせつなことが、あのバカにはある・・・・・・
それが、なんなのか、知りたいような、知りたくないような・・・・・
 
わたしひとりだけなのに
 
この世で最も赤い孤独の声で泣いた。エヴァ弐号機という赤い壁が倒れたら・・・・
誰かがいればまだ続けられる。渚の四号機なり、シンジの初号機なり、・・・・の零号機なり・・・。敗亡という許されざる失敗をおかしてしまった。頭部が裂かれる・・・
これで戦闘は続けられなくなる・・・・わたしの、負けだ・・・・ごめんなさい・・・・
 
 
なれど引き裂かれるは鳥翼蝶羽。
 
 
「遅れてごめんねえ、アスカちゃん。ひとりでこんなに、よくがんばったわね・・・・」
後ろからやすやすと使徒を引き裂きながらエヴァ初号機が。
それを試作操縦筒の中で操る碇ユイが。鈎爪の手足をやすやすと破砕しながら。
はじめて自分ひとりで料理をつくってみた娘をいとおしむような声で。
「ちょっとしたコツを覚えれば、もう二度とこんな空中殺法しか能のないメキシコレスラーみたいなのにやられないからね・・・・よく見てて」
よくがんばった、というわりには「休んでなさい」とはいわない碇ユイであった。
エヴァ初号機は使徒の首根っこをつかんだままで、そのまま宙にむけて振り回した!
 
ドゴン!!
 
なにもないはずなのにでかい音がした。使徒の頭がなにかにぶつかりひしゃげた。
おそらくATフィールドなのだろうが・・・・
碇シンジが駆る並の・・・いや、それ以上の腕力だった。鳥頭も女神に似た女の顔も訳が分からない顔になった。まさに容赦がない。「分かった?」とニコニコ声で。
 
それで何を分かれというのか、謎だが、碇ユイはそれで十分通じると思っているようだ。
「ふふ・・・かわってないなあ、ユイ君は」「ああ・・・・・・・」
発令所の指令席にある二人以外はあっけにとられるしかない。なんかこわかった。
「作戦顧問・・・・分かりますか?」「いや・・・・ちょっとのう・・・」
小声で葛城ミサトが年の功にたずねる。その他、発令所の誰も分からなかった。
 
「わ、わかりません・・・」
分かったのは、今の初号機がとんでもない乱暴者に操られていることくらいだ。
 
「正直でいいわね。レイちゃんならすぐに分かったでしょうけど・・・まあ、それもちょっと寂しいわね。で、要するに、分かってもらいたいのはATフィールドを足場にするってことなの。・・・・・・ちょっと、あなた邪魔しないで」
恐れを知らないタパエルはよりにもよってユイ初号機の方へ襲いかかってきた。
実力もついてきて、だんだんと勇敢になってきているわけだ。大きさもエヴァの四分の三くらいまでになり、さらに装甲が強力になり白銀に輝きだし、武装もポールアクスに進化し左腕には大砲のような物までついてきていた。確実に強くなっている。もはやタパエルではなく、ガッツのある使徒、ガッツエルと呼んだ方がよかろうか。だが、相手が悪かった。ユイ初号機はガッツエルの襟首をつかむと第三新東京市の外まで投げ飛ばした。
あの角度では墜落死は間違いあるまい。また復活してくるだろうが・・・・
 
「あ、あの使徒は・・・」惣流アスカが説明しようとしたが、
「説明の間だけよそに行ってもらえればいいわ。今度来たらすぐにやっつけてあげるから」
こともなげに碇ユイは言い、説明の続きをした。
やっつけちゃいけないんだけどなー・・・と思いつつこの状況で逆らえるわけもない。
さらに、ユイ初号機は鳥翼も蝶羽も引き裂かれすでに半死半生の使徒を一発実験台の見本にどやかしただけでトドメもささずに放してしまった。
「あっ・・・・!!」「ええっ!!」惣流アスカも葛城ミサトも驚いて口答えしようとした。ユイ初号機が強いのはわかったが、使徒相手にあまりに余裕のこきすぎた。
ギャーギャー喚くふたりに碇ユイはやっぱり余裕で反省の色などない。
「自然衰弱死させとけばいいじゃないの。やっつけちゃうとレベルアップして甦ってくるんでしょ?まー、敵の首を確実に落とさないと殺った、って感触がないのは分かるけど」
 
 
「「「「そりゃ、さっき放り投げた奴ですって。おかあさん」」」」
 
 
この状況を知る発令所スタッフのほぼ90%が同時につっこんだ。なにが敵の首だ。
ちょっと泣きそうな顔で司令席を見上げる葛城ミサト。碇ゲンドウは・・・・無言。
えらいことになった。よろぼろと飛んでいく飛行使徒はアイロン使徒の方へ向かっていく。
なんかいやな予感が発令所を貫いた。
 
「あら。そうだったの。まあ、まとめて面倒みてあげるから大丈夫」
 
その自信はどんな根拠からこんこんと湧いてくるんですか・・・
 
「で、大事なのはね、アスカちゃん。文化的なシンジと違って武術を修めているあなたなら分かるでしょうけど、要は動きは足場で決まるの。分かりやすい例をあげれば階段で戦うことを想像してみて。階段の上と下。どっちが有利か。たとえば、路地裏で喧嘩したりする場合、バケツををひとつ踏み台にしてジャンプすれば、頭ひとつ分高い相手でも力点で打撃することができるでしょ・・・・フィールドを足下につくってそれを足場にすれば一段高い場所で戦えるし、逆上がりの補助に使うような斜め角度足場にしておけば急な方向転換だって出来るわ・・・・」
 
ユイ初号機の喧嘩講義はガッツエルがさらに強化して現れるまで続いた。
もちろん、その様子はセントラルドグマで赤木リツコ博士がしっかり記録していた。
 
ユイ初号機はガッツエルを「ある方法」でしおしおのぱぁのタパエルに戻してしまうのだが、詳しい方法はまた次回。