特務機関ネルフにおける現体制下での危険人物レベル評価
 
 
 
LEVEL1
 
 
副司令・冬月コウゾウを長にすえる旧体制からの職員派閥。実働的代表格は日向マコト。
説明らしい説明もないままに司令の交代、体制の大幅な切り替えに一番の被害を被っている層であり、通常ならば新体制に大いなる不満とともに組織を揺るがす病根になりかねないのであるが、この層がそれを実行すれば未だ混沌模糊とした組織集団が崩壊するのは間違いなく、体力精神ともに過重な負担に耐えながらなんとか現状の組織を維持しており、危険行動に割ける時間、労力ともにともになし。
 
 
 
LEVEL2
 
 
最上アオイ
大井サツキ
阿賀野カエデ
 
 
発令所勤務のオペレータであり、LEVEL1の旧体制派閥層に基本的に属しているが、新体制下の特殊指揮形態、作戦部長連の個人補佐を実質的に勤めているためレベルを上げた。
役職として命じられてはいないが、半ば既成事実化している。最上アオイは座目楽シュノに、大井サツキはエッカ・チャチャボールに、阿賀野カエデは我富市由ナンゴクに付き、身体的に不自由な三名の部長連の指示を受け都度動いている模様。
能力的には日向マコト、伊吹マヤ(現・上海支部)、青葉シゲル(現・北欧支部)には及ばないものの、上位にランクする。
 
が、三名の内、大井サツキは過去の経歴が曖昧な部分があり要調査。工作員の訓練を受けた特殊技能の所持は確定。上記の指示を受けたものか、市街での異常行動あり。(日常の精神鑑定は正常値内)
受動的性質の強い阿賀野カエデによる我富市由ナンゴクの強制影響も考慮必要。
 
現時点では判明していないが、次使徒戦による部長連の順列が決定され最上アオイが付く座目楽シュノが部長連の首位に就いた場合、個人的関係を構築していると覚しき彼女と既定の作戦指揮ラインとの交錯、作戦部との確執が生じる可能性あり。
 
 
 
LEVEL3
 
 
現司令・ル・ベルゼ・バビデブゥル
派遣された血族技術集団ル氏のメンバー(司令による虚偽操作から員数不明)
 
 
放置することで新体制を泥細工の如く構築する支配技法は特異。それ以上に現世の組織管理に関心が見られない。唯一、ロンギヌスの槍の管理に関する事象にその意思を覗かせる。
位階放棄に近い影響度、と現時点では言わざるを得ない。
血族の掌握がどれほどの強度であるのか、理解は不能。槍の保管領域に終日篭もる。本部職員との接触、対話はほぼ皆無。ル氏それ自体の調査は最高レベルまで上昇。
 
 
現在名称が確認されているのは、ル・エンタ・シルジルス、ル・キャスト・カサドライオン、ル・ルルルー・キョウワ、ル・イーンテ・ンキ、ル・パーンダ・サド、ル・クァビカ・バタロウテイル、ル・パロウ・ヴォイシス・・・・・・
 
 
 
LEVEL4
 
 
参号機新パイロット、未確定チルドレン=洞木ヒカリ、鈴原トウジ
 
 
最終調査済み、過去の経歴に改竄の余地なし。エヴァとのシンクロ可能、適格理由不明。
渚式分類法による分類を行われておらず、パイロットではあるがチルドレンとしてナンバリングされていない、ナンバレスチルドレンとでもいえばよいのか不確定要素の強すぎる操縦者。組織に対する影響力も最小から最大に針が振れる・・・性質、思想ともに一般市民の範囲内であるが、振幅の激しさによりこのレベルに記した。補完事項として、この二名に目付のようにして諜報三課課長代理「洞木コダマ」がついて行動。洞木ヒカリの実姉でありながら任務の性質上、幼い姉妹には秘匿していたようであるが、志願してその位置についたかどうかは不明。家族構成は、祖父ゴヒャクベエ、祖母ケイ、父親ポポヤ(故人)、母親アサダ、長女コダマ、次女ヒカリ、三女ノゾミ。鍼灸院と連結した動物病院を経営。
鈴原トウジの家族構成はネルフ職員名簿を参照のこと。入院中の妹ナツミがおり、鈴原トウジへの脅迫行為使用を未然防止の観点から、さらなる警護強化が必要と認められる→三課人員配置済み。
 
 
 
LEVEL5
 
 
旧第二支部構成員・・・・例の事件以降、統合されて本部に所属となったが、再建途中、立地の距離もあり十分な稼働、交流には至っていない。使徒迎撃用の戦闘力を棄て製造ラインに特化した研究工場となったわけであるが・・・・機密漏洩に関係しない、奇妙な事象、噂が続出している。あの高度から落下した巨大構造物にいた者たちがなぜ生存していたのか、大規模な再調査の必要ありと思われる。構成員の死体が全て”取り替えられた”と考えた方が常識的であろう。・・・が、前作戦顧問野散須カンタローから赤木博士の直通で救助作業記録はマギの中に機密保管され閲覧も許可されていない。
あれだけの人数が全て偽物であれば、その危険性の高さは言うまでもない。
 
 
アレクセイ・シロパトキン
我富市由ナンゴク
エッカ・チャチャボール
孫毛明
座目楽シュノ
シオヒト・Y・セイバールーツ
 
 
特殊極まる指揮形態である作戦部長連・・・・・球体につながる六名の作戦家の指揮が実戦で効果的に示されたことは未だなく、本部に混乱を招く一助となっている。現在、孫毛明がその座から外された。(その後、別人と判明)。個々の能力は高くとも、それが使徒戦闘で生かされるか適応しているかは別問題であり、こちらも適格者を選別する必要があるだろう。船頭多くして船、山に登らされる危険性を示す意味でこのランクをつける。
 
 
 
LEVEL6
 
 
赤野明ナカノ
 
 
新体制発足後、整備として参号機ケージに配属される。整備の仕事内容は基礎的であり能力も平均以上ではないが、実子赤野明ラルトを背負って施設内のセキュリティレベルを無視して自由に移動する・・・ありえぬ「正当性」を保持している・・・折り紙付きの危険人物。・・・独自の防壁を敷いた一課の機密処置室にもやすやすと入られた事実から、”PZ”との関連を調査中。”PZ”は上海にも立ち寄り認証偽造を計画したとの報告あり。
身体能力は軍人のそれであり、戦自、国連軍等に照会調査中。→現作戦従事者にも該当なしとの一次連絡→死亡不明者リストまで調査拡大指示済
 
 
 
LEVEL7
 
 
綾波レイ
 
 
ファーストチルドレン、エヴァ零号機パイロット。でありながら、現体制ネルフ本部での実質的中心人物。牽引者。彼女の意向に従って参号機の再生、テストを兼ねたのであろう長距離の運搬作業などの前体制でも行わなかったであろう突飛ともいえる難解任務が実行された。鈴原トウジ、洞木ヒカリといった一般の子供のパイロット指定もその一つ。
言うまでもないが、通常のパイロット業務に組織の管理、作業計画の立案遂行まで含まれない。それを若年の身で冷然と行う彼女はすでにチルドレン、と呼称しがたい。最近、護衛役としてか、ネルフ職員ではない紅眼の血族を引き連れて行動することが多くなっている。その重要度から考慮すると正規の護衛にあたるはずの三課の戦闘力ではとても務まらず、当人の身の安全を思えば黙認するしかないのが現状である。
前司令碇ゲンドウと強い繋がりがあった模様だが、連絡を取り合う気配は皆無。彼方の指示はなく彼女自身が全てを考案して行動している・・・・・それだけに組織の浮沈はその思考次第ということになり、本部に与える影響力は最大、極限といえる。
 
 
 

 
 
「ん・・・・」
執務室の自分の机で考えをまとめるために、乱雑にそこらの用紙にメモ書きしていたネルフ本部諜報一課所属・剣崎キョウヤの手が止まった。火織、までいっていたのだが。
 
 
部下からの連絡が入ったのである。こんな時でも外さないサングラスと同じ色の携帯を取り出す「ポークか」
 
 
「はい、ポークです。ほんとはあなたの下に二名配置される予定でコードネームはホークとポーターの予定でしたけど、組織改編の煽りをうけて一名に変更、それでもせっかく考えたコードネームがもったないからって合体させて、ホークとポーターで”ポーク”になったポークですよ」
 
「・・・・なんでそんなに説明口調なんだ。もうちょっとキャラを畳め。諜報員が目立ってどうする。悔しかったらもう少し鼻を鷲鼻にしてみろ。そうしたらホークにしてやる。俺もこうして自分の執務室でもサングラスをとらないくらいに努力してるというのに。加持路線は邪道だぞ」
 
「キャラは立てるモノで畳むもんじゃないですよ。剣崎主査。洗濯物じゃないんですから・・・・・まあ、それはいいとしてですね」
 
 
「狙撃に使用された銃の件だな」
 
 
「なんです、それ」
 
「いや、ちょっと言ってみただけだ。諜報員のあるべき影道を薫陶してみただけだ。遠慮なく嗅いでいいぞ。プロテクトされているから誰にも盗聴されないだろうからな」
 
 
「・・・そういうことを言うから皆からその財閥系ボクサーみたいな名前とルックスで”剣ちゃん”呼ばわりされるんですよ。やはりサングラスで隠しても滲み出てくるんでしょうね、嬉しげなオーラが・・・・これで仕事はできるんですからねえ・・片端から出世にはつながりそうもない面倒ごとを引き受けては片付けて・・・加持さんやら葛城さんやらからもいいように使われてたとか・・・江戸時代あたりに生まれれば幸せだったかもしれませんね」
 
 
「ああ、加持リョウと葛城か、あいつら結婚してなかったというのが・・・、あれは驚いた。二人でパチプロにでもなってギャンブラーな人生を二人三脚してるのかと思ってたらココで再会だからな。デジタル四谷怪談の異名をとった赤木リツコ・・・とと、そんなことはどうでもいい・・・・・・なんだそのケーキ屋の子供のような、嬉しげオーラというのは・・・」
 
 
「はじめたのは主査でしょう。報告に入りますよ。そうはいっても、ル課の連中がズタボロになりながらようやく得た西帰りネタの取りこぼしを拾ってきただけですがね」
 
 
「それだけでもお前の有能さが分かるぞ、ポーク」
とんとん、とメモ書きしていた用紙裏をペンでつつく剣崎キョウヤ。レベル7まで挙げた危険評価であるが、一番厄介で危ないのは・・・・・警戒を要せねばならないのは
「で・・・、確定か」
 
 
しゅ、とペンを走らせる。斜めになったそれは8にも∞にも見えた。
 
 
「はい、碇シンジの居場所が確定しました。父親の碇ゲンドウと共に竜尾道坂内部に生存、寺を借りて二人で暮らしているようですね」
 
 
「人どころか、使徒も手出しができない、いきはよいよいかえりはこわい坂の上の海、水上断絶の街、切断海賊都市・竜尾道・・・それは、そう簡単に連れ戻すわけにもいかない、か」
 
「半信半疑でこっちに来てわたしも驚きましたよ・・・最近、使徒が第三新東京市に来なかったのはこっちの都合に合わせた幸運なんかじゃなかった。ただ、奴さんたちは別の場所にターゲットを定めてただけで・・・・・戦線が西に移動してただけなんです」
 
「情報の入りにくい地域ではあるからな・・・・・なにせ国が認めていない、地図上では村以下の、点だ。それでも、知っている者は知っている、というわけだ。何が目的なのか知らないが、文句をつける資格もないだろう?今、戦っているのは俺たちじゃない」
 
 
 
現時点で、使徒殲滅の最前線となっている街。
 
 
 
碇ゲンドウと碇シンジ、母親のいる霧の山街からここよりは近い街に、今、碇の親子はそこにいる。司令職も初号機もないというのに、使徒来襲の災渦、その中心に立っている。
 
 
「その意味を分析するのは、一課の仕事ではないが・・・」
 
 
サングラスを弄びながら剣ちゃんが、危険に笑った。顕れた片目だけが、紅い。