東に戻る途中のこと。
 
 
はるか大昔、桃から誕生した戦士と交戦した鬼の城があったとかいう地域で足を止め、(VΛV)リエルはけろけろと己の懐に取り込んだ人間どもを吐き出した。
 
正確に言うと、ラニエルの内とその周辺にいてシチューになったりローストになった人間群である。目的名称を与えて呼称するならば、「碇シンジを捕まえ隊」ということになるのだろうがもはや、そんな気も失せていることだろう。
 
大使徒の懐に抱かれるという、掛け値無しのオーマイガッな至高体験をしてしまったのだから。俗世で塗れに塗れたダーク方面のアイデンティティー・ペイントもすっかり抜け落ちてしまっていた。悪人が善人に変化する、という単純な話でもないが、なんらかの目覚めは全員にあった。そしてまた乾燥ワカメのように水気を得ると、人界にゆらゆらと戻っていくことになる。この先、どのような人生を歩むのか・・・・しばらくは本人たちにも分からない。
 
 
(VΛV)リエルが彼らを解放した意図は人間には分からない。
 
ただの気まぐれだったのかもしれないし、念の入った迎えがやってきた、楽しい狩り時間の終わりを告げにやってきた”使者”たちの到着を知り、なんとなく出てしまった溜息のついで、だったのかもしれない。
 
なんにせよ、人間のかたちに戻してやった人間たちが、信仰に目覚めようと宇宙人とコンタクトを始めようと、知ったことではなかった。
 
 
あまりにも小さかった。
 
 
小さくて幼いものはたいてい可愛いと相場が決まっているのだが、どうもこう、可愛げがないのだろう・・・・(VΛV)リエル内でのかわいさランキングでは、人類というやつはドンケツではないものの、ブービー賞だった。
 
 
そして、なんともかわいくない系統の使徒たちが慇懃に、出迎えの陣座を構築しようとしている。その慇懃さは、人間たちの群体集合、街という名の硬殻住巣を、打ち壊してしまうだろう。ただ、この身を迎えるためだけに。迎えるにふさわしい清場を創るためだけに。
 
半分、脅迫を加えながら。「ここまでするのですから、逃げてもらっては困りますよ」と。
 
そのあたり、こちらの気ままを苦笑いしながらも許してくれたヤシチエルたちと違う。
 
野の味わいを知らぬ使徒たちだから仕方がないといえば仕方がないのだが・・・・
 
ああ、いや、それを知り尽くすゆえに、早めに連れ戻しにかかった重鎮もきているが。
 
 
さあ・・・・・どうしたものか
 
 
一応、部下使徒たちがそこまでやろうとしているのだから、迎え陣座の構築が終わるまで待つのが上司たる大使徒の役割か・・・・・・待つのは苦にならない性分ではあるが。
 
 
その代償として、ブービーたちがその本質本性から断ち切られる、堪えられるはずもない暗黒の苦痛を味わわされるのも、どうなのであろうか・・・・・金狼は笑ったが、東方はしずかに泣いた。
 
 
 
北より、ホ・バエル
 
 
 
南より、<ハ>ミズノミドリエル
 
 
 
東より、ジブエリル
 
 
 
その匂い、間違いない。ヤシチエルたちのことがあったためか、隙の無さ過ぎる陣容。
この(VΛV)リエルに対して。人間たちにはいうまでもなく。
 
脅迫専門のホ・バエルはいいとして、実働は<ハ>ミズノミドリエルなのだろうが、使徒名鑑から改名もしてかなりのやる気の感じられる<ハ>ミズノミドリエルだけでも戦場の平らげには十分だろうが、万が一のしくじりのないように「千尋千の移動要塞」の異名を取るジブエリルが後詰めにきているあたり、もう次はないのが分かる。いまさらゼルエルが出てこようと壊しきる前に事はなってしまうだろう。終わりだ。
 
 
戦士を産み出すこともない桃の木が鬼の大群に対抗できるはずがない。
 
・・・・・例えがちょっと不適当かもしれないが。部下に鬼はひどいかもしれない。
しかし、これも地元効果というもの。ネタも地産地消。
 
こだわらない大きな懐の(VΛV)リエルなのであった。
 
 
さて、どうしたものか
 
 
さて、どうしたものか
 
 
考えているわけでは、ない。そろそろ戻らないとならないのは分かるのだが、もう少しくらいいてもいいのではないか。少々、人間の巣の一つがぺしゃんこに叩き潰されても。
まあ、場所的に運が悪かったのだ。そんなところで生きているから。そんなことに。
使徒ならば、そのように割り切ってしまう。己の使命のために。他の全てを排除する。
そして、果てる。使徒というものは、そのようなもので。
 
 
だが、大使徒は
 
 
ピインッッ
 
上空を音速飛行していった、使徒のかたちを一部真似した使徒ではないもの。東から西へ。
 
その空の切り裂き方ひとつ、領域の軋り方、音の鳴り方ひとつで、全てを察知する。
 
牙剣は、対空迎斬するものかと構えていたが・・・・主が鞘走らせることはなかった。
 
あれもまた可能性の一つ。袋小路に入るかもしれないと知りながら。それでも進む意思をもつなら。階段を上がるだけが全てではない。
 
その不自由な贋作を、大使徒は、許した。
 
 
 
風の流れの変化を嗅ぎ取る。この列島で何かが生まれようとしている。
 
 
・・・なかなか、変わったものだ。その「誕生」は、ちょっと見てみたい・・・・・
 
 
獣医学部の学生ではないが、とくにその傾向が強い(VΛV)リエルであった。
 
生まれるかも知れないし、生まれないかも知れない。
 
 
もうちょっとだけ、ここで様子を見ることにしよう・・・・・・・・・・・・・・・
 
桃と鬼との古戦場で・・・・一休みではない、時空間嗅覚で把握
 
するのだ。
 
 
もちろんこれは日和見でもなんでもない。仕事より興味を優先させるなどとんでもない。
 
単純に、大使徒がいる場所こそが最重要天王山なのであるから。
 
分かってやっているなら、果てしなく始末に悪い。
 
 
 
大使徒(VΛV)リエルは潜伏した。こうなると、見つかることはない。
レリエルのような目利きでもない限り、一万年さがそうと使徒でも見抜けない。
 
 
ホ・バエル、<ハ>ミズノミドリエル、ジブエリルの三使徒もうっすらと接近を把握していた大使徒の気配がいきなり消えたが「そうきたか」と驚きもせず納得した。
 
「そんなことしても、こっちはこっちの仕事をするんだもんね」と、途惑いもせず。
 
「こっちにはホ・バエルがきてるから、最後にはこっちのやることを受け入れてもらえるんだもんね」と確信があるらしい。なんか口調が東海林さだお先生っぽいが。
 
 
使徒は大使徒に対してのみ、その気を使い。
人間の足掻きなど、歯牙にもかけていなかった。
 
 
また、人間の方も足掻こうとも、その足並みも満足にそろっていなかったのだが。
 
 

 
 
 
「諸君には、心配をかけた。・・・すまない」
 
 
ネルフ本部発令所に、ようやく冬月副司令が戻ってきた。
 
入れ替えられたニセモノではなく、本物らしい。これから使徒戦だ、というところで指示するものがいきなり頭をさげるあたり演技を徹底しきれない、仮面がガラスっぽくもあったが、無惨に消耗しきった部下たちの姿を見るなり、そう言わざるを得なかったのだろう。これからさらに寿命を削るような思いをするとなれば。この勢いで「日向くんには特別大ボーナスを出そう!」とか言い出したらまたニセモノ扱いされたかもしれないが。
 
実った稲穂がその人徳の重みで自然に、というより、頭をさげた当人も、部下たちから見てかなりボロボロの有様でなんとか老いたりの根性で威厳を保とうとしているその姿が。
 
 
なんとも、ネルフの副司令であり。オペレータの中にはぽろぽろ泣き出した者もいた。
 
いちばん泣きたいのは日向マコトであっただろうが。再誘拐の可能性など、副司令の安全を考慮するに、もう幽霊マンモス団地に籠もってそこから遠隔指揮を執ってもらおうかと思っていたのだが、こうして実物がこの場にいると、やはり、違う。理屈で考えればその言葉が届きさえすればどこにいようと関係ないはずだが。パイロットと違い。と思ったが。
 
 
「今回の戦闘の指揮は私が執りたいと思いますが。よろしいでしょうか」
 
最初からやる気のあろうはずもない蠅司令から、これ以上の横槍を入れられぬよう言質をとっておくのはやはり本人が現場におらぬと。これはスタッフの努力でどうにもならぬ。
 
 
「逐電した・・・・のでは、なかった・・・・のだな・・・・・・まあ、いい・・・・・再儀式は、戦闘の後だ・・・・・・可能な限り、速やかに・・・・・終わらせよ・・・・・・・紋言構築を・・・・・組み直す・・・・・・」
 
 
要するに、こっちのやるべきことで指揮なんかしとれんから、お前らで勝手にやっとれ、という有り難いお言葉であった。いちいちキレていてはネルフ職員はつとまらない。
 
これで「槍」を戦場に出すな、などと言われた日にはまたこじれたのだろうが。
 
冬月副司令もまたスネに傷もない、きれいな体、というわけでもない。
水上左眼と竜号機のことやら、下手に知られると困った爆弾もある。
 
 
どうせ危ない橋なら、サジ加減が出来るぶんだけ、てめえでやった方がいい。
逃げるといってもどこに逃げるというのやら。赤信号でも皆で渡るほかないのだ。
・・・悲壮感で水増しせねば、危険度などそのようなものだ。世のどこを見ても。
 
 
 
使徒は、三方角から、三体。
 
 
北から、巨大な鳥籠のような・・・・・・その内部に無数の、数百以上か、黒い鳥が、鴉を連想させるが、いずれも首のないのでなんともいえない・・・駕篭内部を羽ばたき飛び回っているので”生きて”はいるのだろう・・・・作動している、というべきか。いずれにせよ、なんともイヤーな、不吉な印象しかない黒い首無し鳥を内部に飼っている使徒。
 
コアは分かりやすく、駕篭内の中央軸についている。使徒名鑑にそれらしいものはない。
飛行と言うには遅すぎる、浮遊速度でこちらに向かってきている。
 
 
南から、これまた巨大な、水飲み鳥を思わせる使徒が。どういう原理か不明だが、長い脚部を動かし海を歩いてくるのだが、足が触れると凍るのだ。つまり、すごく冷たい足、または、足がすごくつめたい、わけである。その機能にどういう利点があるのか分からないが、見た目シンプルのため、特徴はそれくらいしかない。これは使徒名鑑に載っていた。
 
「ミズノミドリエル」。弱点のコアも分かりやすく堂々さらしてある。
 
さらし具合はほぼ同じなのに、こちらの方が好感度は高い。鳥籠使徒が悪すぎることもあるが。まあ、どちらにせよ、使徒。殲滅するだけだ。向こうにも情け容赦はあるまい。
 
 
そして、東から。
 
 
これまたでかい。使徒というものはたいてい大きいわけだが、それに比しても群を抜いてでかい。雲を突き抜けている。そのスケールも尋常ではないが、デザイン面もちと異常であった。城や館、そういった建築物をある種のパズルのように縦に重ねて、長大な塔のようにしてある。人恋しい妖怪の建築家に好き勝手やらせたらこうなりました、という感じで、移動は二本の足で行う。片方は鉄骨を繋いだようなメカの足だが、もう片方はどう見てもブタの足だった。物理法則ももちろん、デザイン法則も無視して直立歩行していた。普通考えれば、こんな総重量では足が地にめり込んで一歩も動けなくなりそうなものだが。
見た目だけ、なのか。こんな手間がかかっていそうな姿の割りには。
 
使徒名鑑には、それらしいものは、ない。が、このスケールを考えると、適当な距離まで近づかれて、そのままボディプレスをかまされたら、それで第三新東京市は終わる。
 
コアは表面上には見あたらない。もしかすると、内部で戦闘用使徒を運ぶ、輸送が役目の使徒なのかもしれない。・・・・・そうであってもなくても、かなり厄介そうな。
いい砲撃のマトではあるが、効かなければ命中しても、ただの税金の無駄遣いである。
 
 
この三体・・・・・・こちらの戦力を考えると、それ以上、増えて欲しくないところだが・・・・・・それを、殲滅するのがこちらの仕事だ。ネルフの、使命だった。
 
 
 
「副司令」
 
 
日向君が青葉君と並んで指示を求めている。副司令が復帰直接指揮となれば、シロパトキンは一歩引くことになる。我富市由ナンゴク、シオヒトあたりなら大いに異を唱えたかもしれないが、現実を知る作戦家はあっさり承知して、同格の部長連であった(もう過去形でよかろう)我富市由ナンゴクに対する処置を担当することになった。裏方ですらない闇仕事であるが、かえって距離があるだけに適任であった。能力的にも経歴的にも影響力的にも。そんなことで使徒戦を知る日向マコトや青葉シゲルらを使いたくない副司令の意向にも沿っていた。死なばもろともの自爆火の玉モードになった我富市由ナンゴクの相手が務まるのは、火薬庫状況の泰斗ともいうべきアレクセイ・シロパトキンしかいなかった。
 
最悪、共倒れになるかもなあ、と冬月副司令は見ていたが、そこまで心配する余裕などあるはずなかった。
 
 
こちらも最悪な状況なのだ。まあ、考えてみれば、いつもそんな感じでは、あったが。
ここにはいない心強い猛者たち、去った者もいるが、まだここに留まり続ける者もいる。
ブーメランのように戻ってきた者もいる。
 
 
深く、肯く。
 
今を、認める。
 
昔がどうあれ、今は、こうなのだ。
 
内心はもう、ギリギリであるが、面には出すことなく。
 
こんな年寄りのギリギリぶりなど、誰が見たいものか!
 
 
ゆえに不敵に。無敵ではないかわりに、せめて不敵に。
 
 
「混乱することもあっただろうが、もう迷うことはない。諸君」
 
 
偽預言者や偽救世主を演じたりしなくていいのは助かる。いくらなんでもそこまでは。
 
 
「いつもとやることは変わらない。同じだ。ネルフの、仕事をする」
 
 
そんなものにあっさり騙される部下たちでもまた困るのだ。まさにシトシト詐欺。
手持ちでなんとかやりくりするしか、ないではないか。もう少しアジって勢いをつけた方がいいのかもしれないが。そこまで面倒見きれるものか。碇や葛城君ではあるまいに。
 
 
だが、エッカ・チャチャボールのような特異な目を持つ者がこの場にいれば、その言葉が、すとん、と発令所内にはまったことを感じ取ったに違いない。安定を増す菊金具のように。
立て続けに起こったアンビリバボーな事件に全員超動揺していただけに。
 
 
「そのために、エヴァに一働きしてもらわねばならないのだが・・・・」
 
 
副司令権限で正式に本部発令所勤務に緊急配置転換した直属のロンゲ部下を見る。
もちろん、戻したからにはこれまで以上の仕事をしてもらわねばならぬわけだ。
 
 
「参号機はコンタクトがとれぬままか」
 
 
パイロットが乗っていないはずの参号機が勝手に起動したあげくに、するり、と拘束から外れた、と思ったら、あれよあれよと射出口も勝手に作動して、そこから許可も出ていないのに地上へ出撃してしまった・・・・・八号機に続いてこいつもか!?と血も逆流、もしくはここでよもや暴走!?吃驚仰天、地獄へ叩き落とされるような気分を発令所スタッフ全員で共有していたところだった。やはり目の前でやられると衝撃度が違う。
 
 
幸い、といっていいのか、地上に上がった後は、西の方角へ駆けて去る、ということもなく。突っ立っているだけで、ぼーっとしている。ように、見えた。内部の、エントリープラグの様子が分からないため、なんとも言えないが。自然体、といえば聞こえはいい。
いつの間にか体色を青銅、ブロンズ色に変えていた。そのあたり、像のようでもあり。
意識、意思、といったものが感じられない。電気刺激を与える前のカエルの足のような。
 
 
格闘戦最強、の威風など、微塵も。体の調子の悪いでくのぼうにしか。
 
 
「はい。パイロットと繋がりません。こちらからのアクセスは全て拒絶されます。無人ではないようですが・・・LCLに変質が見られます。(この成分・・・まさかな)パイロットの意識もあるのかないのか・・・・。こりゃ・・・・赤木博士でないと」
 
参号機を赤木博士がフランケンシュタインでも造るように一から組み直したとかいう話は聞いていたが、この急場に趣味で仕込まれた謎回路なんぞあった日には解析しているヒマはない。やった当人を問いつめた方が早いですよ副司令、と青葉シゲルの目が告げる。
 
副司令と一緒に鈴原君たちも本部に来ているはずであるから、これが強奪の類でないならいったん戻らせてパイロット交代、というのが至極当然の流れであるが。
 
 
もし、これが強奪ならば・・・・・・レイの零号機で取り押さえる、ということになるが。
 
こんな状況で。使徒を目前にして。なにやってるのか知らないが、赤木博士がこの場にいないのはおかしい。ダメすぎるだろう。さすがに。碇司令が戻らないからふて寝、とかいうのは勘弁して欲しいもんだが・・・・まあ、シゲルよりマヤちゃんが戻った方がよかっただろうけど・・・・・日向マコトも首をひねる。おかしなことだらけだ。
 
 
「ふーむ、赤木博士か・・・・」
 
と、言いつつ、その本人が疲労困憊しておそらく死んだように眠りこけているだろうことを知っている冬月副司令。
 
父親の依頼でとんでもないものを、とんでもない速度で造らされたのだ。年齢を考えるといますぐに呼んでも使い物になるかどうか。切り札の知性が、こんな肝心なところで寝ボケた言動をしてくれると、非常に士気にかかわる。全員、ものすごく不安になるだろう。
碇ならまったくお構いなしに叩き起こして呼び出しただろうが・・・・・「む?」
 
 
青銅色の参号機が、動いた。
 
 
ほたほた、と、二、三歩あるいた、と思ったら。手を伸ばして、アンビリカルケーブルの電源を己の体に繋いだ。エヴァの定石、というか、当たり前の手順であった。もう少し異常なアクションを想像していただけに、拍子抜けする発令所。が、それもわずかの間。
 
 
ジュグジュグジュグジュグ・・・・・・・・
 
 
そんなイヤな音をたてながらケーブルが腐食していった。参号機の背中に触れる部分からみるみる間に。強酸でもかけられたように、「当該ケーブルの電源オフ!!」慌てて日向マコトが指示を飛ばすのとほぼ同時、ちぎれた。電力はエヴァ稼働の生命線であるから、そう簡単にいかれるようなヤワな代物ではない。それが・・・・
 
 
「おいおい・・・・・」
「なんだこれは・・・」
青葉・日向でもこんな反応しかできないのだから、他の者のショックは推して知るべし。
特に、鈴原トウジ、洞木ヒカリの両名の衝撃はいかほどのものか。
 
 
「・・・・・・起こすしかないな」
 
早いか遅いかの違いしかなかったようだ。やはり、赤木博士しかいない。
こんな、怪奇大作戦に対抗できるのは。すまない。しかし、私よりは若いから。
なんとか、がんばってもらいたい冬月コウゾウ副司令であった。
 
 
参号機に何者が乗っているのかも、確信した。
 
 
そして。
 
 
「零号機の状況は」
「戦闘可能、すぐに出撃できるそうです」
日向マコトの返答は確固としているが、苦い。その意も汲める。
 
 
本来ならば、修復終了、という返答が先にくるはずなのだが、レイはそのままでいくという。己の属する組織の長に片足もがれた機体に乗り込み、戦場に出る、と。
 
一瞬、左眼に助太刀を懇願したくなるが、なんとか堪える。
 
使徒殲滅はネルフの仕事であり、エヴァ同士のそれは言うに及ばず。
 
 
独逸から弐号機を引き戻す、か・・・・・・・向こうもバージョンアップしたその力を実戦で試してみたくて仕方がなかろう。皮肉なことに、このタイミングしかない。