鋼鉄のガールフレンド事件アンコール
 
 
 
<いきなりの補足>
本文は、七つ目玉の十四話「第三新東京市立地球防衛オーケストラバンド」のおまけ「鋼鉄のガールフレンド事件」のそのまたおまけである「鋼鉄のガールフレンド事件コーラス」のおまけ・・・というともはやなにがなんだか分からないので「ふろく」ということにしておく。とにかく、いきなりこれを読んでもおそらくワケが分からないので、まずは先の三つを読んでおくことをおすすめする。
 
 

 
 
商売っけのまるでない薄暗さ。足下はここまでよくやったものだの土間であり年代ものの黴の香りがにんともかんともであり。手作りしたわりには木目の色合いが渋すぎる商品ケース。雰囲気だけで言えばよそのクラスのお化け屋敷など問題にならぬくらいに決まっているくらいの不気味さ。このリトル・アングラな感じ。天井がやけに低く感じるのはぶら下げてある多様で多量の販売品というか展示品というか、それらの品物が眼を塞ぐせい。
ただ、文化系部活や発表系のクラスのそれと違って模造紙やらに駄菓子屋の歴史だの発展年表だのを調べて書いたようなものは見あたらない。もしくは写真・・・。あるはずだが。
ない。そのことに、違和感を感じる。なぜだろうか、と考える。それは、もしこの世に鏡がなかったら、という問いにも似て心を波立たせる。贋者の肖像画を注文する幽閉された鉄仮面のように。
 
 
ブロマイド当て、パチンコ当て、ライト当て、数字合わせ、注射器水鉄砲、コンバットパラシュート、野球引きくじ、日本刀、おしゃれびん、紙風船、パンダ財布、リリアン、ノコノコ象さん、ノコノコ、ビニールビーズ、花おはじき、ビー玉、紙せっけん、New Fashion Accenssary、紋合わせ、魚釣りセット、日本記念切手、SPECIALTOY、ぱらぴんねんど、クラウンの飛行機トバシ、ミニライトキーホルダー、ミニミニトランプ、電車かばん、マジック定規の当てもの、パンチガム、ヘリコプター玩具、マジックリング、ピョンピョンクリップ、方針、ミニ金券、にんじん、ジャムせんべい、ソースせんべい、シャンペンサイダー、あんずぼー、15ゲーム、ソフトラスク、ふ菓子、花串カステラ、ココアカステラ、ミックス餅、日光カメラ、巻き玉、雷印優秀巻き玉、鬼印の平玉、昆虫採集セット、発泡スチロールのグライダー、スモーキングモンキー、特製はるみドル入れ、スーパーカー消しゴム、サンダーエレキ、火薬ピストル、うまい棒、ちんすこうボーイ、すっぱいまん、おしゃぶり昆布、タンナファクルー、くものす、つっぱりシール、ようかいけむり、ハレハレシール、ビュンビュンごま、ラブ・ユーラー、点取り占い、梅ジャム、血菓子、
 
 
懐かしい、というのはおそらく、自分好みの古臭さのことなのだろう。
単に歴史がある、時間が経過しているというだけで感情のトリガーは引かれない。
 
 
というわけで、品揃えは2015年という年代を考えるとおそらく大したものなのだろうが、いまいちピンとこない綾波レイであった。それに、気にするべきは他にあった。
 
 
この2年X組・・・の「昭和年代の駄菓子屋的文化模擬店」であるが、人がいない。
人気がないどころではなく、誰もいない。誰一人として。客も、この模擬店で活動するはずの生徒も。いくら不人気極まっても、留守番の一人も残しておくのが常識と思う。
自分のように、なにか間違って、訪れる客が誰か、いないとも限らないのだから。
 
 
しーん・・・・・・・・
 
 
それにしても静かだ。というか、完全に空気が死に絶えている。教室の外ではお祭り騒ぎが続いているというのにこれでは。さすがにこのクラスの生徒も誰一人残らずこの模擬店を見捨てて逃げてしまっても不思議はないか・・・・けれど、そこまで悪い企画でもないと思うが・・・・内装といい品揃えといい、ひとかたならぬ努力が感じられるのに。
いや、まあ、静かだからという理由で訪れた自分にそういう資格はないかもしれないが。
 
 
2年X組の彼ら彼女らは今頃、揃ってよその演目でも見ているのだろうか・・・・・
あまりのヒッチコック閑古鳥ぶりにぶるぶる震えて泣きながら家に帰ったのかも。
しかし、誰も残っていないとなると、これでは万引きとかし放題ではないのか。まあ、中学校の文化祭のことではあるし、そこまで心配せずともよいかもしれないが、中にはやってきた物好きがついムラムラと物欲が刺激されて・・・という可能性もないではなかろう。それに、もしかすると留守番は一人いることはいるが、今はたまたま手洗いなどに行っている、とか。観客数というパイは限られており、自分たちがそれだけ引き寄せればどこかよそが寂しくなる、分け前が減り消失、ということも数学的に立証できる。それが罪になるといわれても困るだけだが、もしそうだとすると。この手の地味め堅実めの出し物は司令・碇君を中心とした怪獣のごとくセンセーショナルさの犠牲者といえなくもない。
 
 
 
いずれにせよ片付けに来るのは間違いないだろうから、このクラスの者が誰か戻ってくるまで留守番をしても、罰はあたるまい。罪をおそれる気もないが。自分の時間が許す限り。
 
 
綾波レイのこの考えを、”いいひと”属性とみるか、”真実から眼をそむけている”とするかは・・・・・ちょうどそこにある点取り占いで占ってみましょう。お代は十円。
さて、きつい糊をはがしてむきむき・・・・・・
 
 
<なぐりあいをして勝ってもえらくない・・・・・・7点>
 
 
うーむ、さすが占いのくせに<お酒に酔っぱらったことがありますか>などと質問してくることさえある点取り占い。深すぎる答えである。この場合、<いいかげん きづけ>などというのは0点である。
 
 
しかし、しばらく経っても誰も戻ってこないし、自分以外の客も入ってこない。
適当に座って適当に代金払って甘みと水分を補給して体力と精神力を回復した綾波レイはここを離れることにした。情に溺れて己のなすべきことは見誤らない綾波レイである。
 
 
ところが