スーパーロボット七つ目大戦γ
 
 
<ブルー・鳥取・ブルースルート>
 
 

 
 
 
おそらく、説明が必要なのだろう。
 
 
・・・・なんでこうなった?などというのは、状況に流された言い訳にすぎぬだろう。
あまりにもハードボイルドではないのだが。
 
 
 
「えー。今日から皆さんの仲間になる、人造寺三郎さんと、能御苑洋子さんです。探偵さんです。同じ探偵同士、九朗君、営業圏が重なることもないと思うから、よろしくしてね」
 
ドロン・ベル首領兼ロボ・クラナド代表なのだという葛城ミサトによる・・・小学校のようでもあり同時に世知辛いような、なんとも言い難い紹介に、人数からするとかなり盛大な拍手があがった。
 
全員がアップテンポというわけではなく、いい大人はそれなりに、子供勢も皆、というわけではないが、叩く者は・・・・その中でもつばさとヒカル、というこんな少女までもがいて驚かされた・・・・ものすごく歓迎の意を輝くまなざしとその紅葉のような手で表してくれたし、いい大人の中でもノリがいい若者、気がいい、と評するべきかもしれないが、「よろしくっすー!!」ダイ・ガード操縦者の赤木と、同じく探偵なのだという「わっかりました!任してください」大十字九朗、この2名が盛り上げてくれた、というか。大十字九朗の隣のフリルの少女の目つきがえらく鋭いが・・・・・これが、主力級戦力、デモンベインのアル・アジフか。
 
油断すると、口にしてしまいそうになる。
 
「えー、ただいまご紹介にあずかりました。人造寺探偵事務所の人造寺と申します。助手の能御苑ともども、よろしくお願いいたします。微力ではありますが、調査関連のことで皆さんのお役にたてるかと・・・」
 
いいかけたところで、”ドッ”とウケた。
 
なにがおかしいのか、首脳陣を含むいい大人メンバーまでウケていた。洋子君の方を見るが、彼女も分かっていない。またはそのフリをしているのか。
 
 
「さすが探偵さん!トークがお上手ですねえ。うちの硬派ナンバーワン、城田さんまでウケさせるとは・・・・」
「い、いや、これは・・・笑ったわけでは、ありません。しかし・・・・」
意表をつけば、軍人でも笑う、ということか。まあ、空気は明るく、イヤな笑われ方ではないのだが。どこらへんがおかしかったのか?
 
 
・・・・・どうしてこうなった?あまりにも状況に流された言い訳にすぎないが。
 
 
君に説明するため、話を遡ることを許して欲しい。
 
 
あれは、洋子君とともに、砂丘県鳥取に陣するドロン・ベルの根城、第二バベルの塔に向かう途中のこと。
 
 
どうやって嗅ぎつけたのか、ニセブライト、ニセアムロ氏率いるティターンズ部隊にからまれたのだ。事務所のあるSIN宿よりは確かに、ビルが少な・・・ひらけている砂丘県であるが、それにしてもぽちぽち人家があるのは間違いないし、戦闘などしたくはない。
 
 
が、降りかかる火の粉は払わねばなるまい。
 
 
いろいろとぞろぞろ連れてきていたが・・・・・・・黒く塗られたガンダムっぽいのもあったが・・・・・乗っているのがあの程度の人材ならば、私たちの敵ではない。学習するだけAIの方がまだましなのではないだろうか。
 
 
仕方がないので、固まってくれたところをマップ兵器「赤い蝶」を使用して瞬殺した。
信じられないようなものを見る目で見られたが、こんなところまで追ってくる神経こそ信じがたい。
 
 
しかし、その戦闘の様子を第二バベルの塔から見られていたらしい。
 
 
ニセブライトたちのティターンズ部隊が既に彼らの索敵に捕らえられていた、と考えるべきであろう。そこらの感度は何かと言えばふいをつかれてばかりのスーパー大所帯のロンド・ベルトは確かに違う。
 
 
こちらをしっかりと「人造寺」である、と認識してくれたのも、油断のならぬところだ。嬉しさがないわけではないが。神宮寺先生の弟子(になりたい)うんぬんも笑って流してくれていた。
 
 
それから、あっけにとられるほど、明治組もびっくりするほど簡単に、葛城ミサトに会えた。しかも当人単独で。護衛もない。こちらが刺客だったらどうするのだろうか・・・信頼というか油断しすぎではないか・・・謎の中心人物のひとりであることは間違いない・・・・というか、話を聞くに、今回の一件は100%この女性の腹一つで決まったことらしい。他の首脳陣もかなり驚かされたのだと。
 
 
そう、意気込んでここまでやってきたが・・・・・・・・依頼はあっさり解決できた。
 
 
その謎行動の、理由とは・・・・・・
 
 
「・・・・なんと」
「でも、実際あったなら、そうなんでしょーよ。分かる気がしますねー」
 
 
やらかした当の本人が直々に語ったのだから、間違いないだろう。嘘をつくくらいならば最初から会わなければいい。自分のようなしがない探偵などに・・・。
 
 
これは日帰りできるぞ・・・・いろいろ助かった・・・・・・、と、依頼の完遂にほっと一息ついたところに。いきなり。
 
 
 
「ところで」
 
 
コロンボ警部に目をつけられた犯人、とはこんな気持ちだったのではないか。ほっと一息ついたところで、何の気ないような表情で、ハートに、ドスッと突きつけられる。
 
 
「今のところ、世界中で、うちの人間をのぞけば、このことを知っているのは、あなたたちだけ、ということになります」
 
 
まあ、そうだが。さくさくと、こちらがなんの駆け引きもプレッシャーもかけぬのに、話してくれたのはあなたなのだが・・・・・いまさら取引されてもな・・・・・・が、相手の目を見るに・・・・・
 
 
「これから、依頼者に報告をされるんですよね?」
 
 
言うまでもない。そこまでが仕事であり依頼でもある。そうでなければただの自己満足であり、それは労働ではない。が、ものすごくイヤな予感。この重圧、ただの人間から感じるにしては異常の値。さきに片付けたモビルスーツの団体など比べものにならぬ・・・!
 
 
「ええ・・・まあ・・・」
いまさら口止めもあるまい。だったら最初からぺらぺらしゃべってくれるな、と言いたい。
「あらら。先生、これはまさか・・・」
洋子君もそのアンテナで危険を感知したようだ。
 
 
 
「”その面倒を、省いて、あげましょう”」
 
 
にこやかに、女は、その謎しか秘めとらんような目で、にこやかに、そう言ったのだ。
これが、ドロン・ベル首領、葛城ミサト。
 
 
ただ、顔にはこう書いてあった・・・・・・・「うふふ。強い仲間ゲット!!」と。
 
 
一瞬、ブライト氏らと結託しとるのではないかと邪推もしたが、おそらくこれもこの女の腹一つで即決したのだろう。ごごう、と激流の音が聞こえた。人造寺イヤーではない、心で聞いたそれは、運命、というものだったのかも、しれない・・・・・
 
 
格好良く言ってみても、腹立つのは否めない・・・・・・・・・君だけに告白するが。
 
 
なんとも、ブルーだ・・・・・・・ブルースだ・・・・・・
 
 
ウィリスではない、ここは鳥取・・・・・・砂丘県・・・・
 
 
 
結局、ロンド・ベルのブライト氏には葛城ミサトが、事情の説明を行った。
 
当然、てめえの都合のいいように、だ。ブライト氏もあっさり信じたところをみると、スーパーロボットのパイロット、というのは「そういうもの」らしい。こちらの面子が潰れないように、かつ文句のつけようもない額の報酬を引き出してもくれたが・・・・・なぜか、当分事務所には戻れず、彼らと同行することになってしまった。まあ、SIN宿の事務所にムリに戻っても、ティターンズ部隊がまたやってこない保証はない。・・・・・ほとぼりを冷ます必要は、あるか・・・・・確かにマップ兵器はやりすぎたかもしれない・・・・丁度気力があがっていたせいもあるが。
 
 
 
「・・・・すまない、洋子君。こんなことになってしまった。しかし、君だけ戻ってもらっても・・・」
「いやですよ、先生。お供しますよ!。だって面白そうじゃないですか!こんな秘密部隊!わたし、子供の頃の夢は、科学忍者隊に入隊することでしたから!」
「そ、そうか・・・」
「それに、依頼だって当分、来ませんよ!たぶんヒマですよ!」
 
 
なぐさめてくれているのか・・・・・・それとも100%本気の言葉なのか・・・・・
いずれにせよ、ブルーになるほかない・・・。
 
 
「けど先生、ここ、子供さんも多いし、無闇に煙草吸っちゃ、いけませんよ!」
「も、もちろん・・・いわれるまでもない・・・・」
 
 
あの女首領はスパスパ無遠慮にいきそうなイメージなのだが、吸わないらしい・・・・。