スーパーロボット七つ目大戦γ
 
 
<俺の妹がこんなに泣いていいわけがないルート2>
 
 

 
 
「そ、それでどうなったんですか!?」
レフィーナ艦長が葛城ミサトに先をうながした。信じられないような話ではあるが、どうにもリアリティがあるというか、納得してしまえるというか・・・・単に葛城ミサトの口上がうまい、というよりは・・・・・
 
 
「マジンガー一家の機体同士であわや・・・・ってトコまではいかなかったみたいです。そこまでいったら後味悪いどころじゃない、ほんとに一家離散だったでしょうからね」
 
そうなってもかまわない立ち位置ではあるのだろうが、その目は確実にそんなバカなことを憂い、怒ってもいた。怒りの方が強いだろうか。・・・・・・彼を想って。
彼の視点が、そこにあるからですね、とレフィーナ艦長は理解する。
 
碇シンジ君の話をしているわけではない。のだけれど・・・
 
精神コマンド封殺装置を手に入れたはいいものの、解除方法も掴んできているにもかかわらず、その実行を遅らせる、というドロン・ベル首領としての判断。それについての説明だった。城田氏や紫東遥、ショーン副長、ロジャー・スミス(もちろんドロシー有)首脳陣が真剣な表情で聞き入っていた。
 
 
「そういうことは・・・・・あるかも、しれないな・・・・」
「もしかしたら・・・・これが、敵の狙いだったのかも・・・・・」
「我々が首尾良く奪った、のではなく、敵に奪わされた、と・・・うーむ・・・」
「いや、シュバルツ・・・・奴ならば、そんな陰険暗い手を狙ってもおかしくない!」
「なら、指摘すれば」
 
 
精神コマンドが全解放され、元通りになるのならば、なんの問題もない。
 
が、それがあくまで一部分であり、どれを順番に解放、使用可能にするか、という話なら。
 
 
マジンガー一家のように意見の相違から「大荒れ」になる可能性は・・・というか、実際に起きたことだ。いくら当時、家長が不在だったとはいえ、鉄の結束を誇っていたかのようにみえた、あのマジンガー一家でさえこれだ。思い切り同系統のロボットに乗る彼らでさえこれなのだから、他のグループはいうまでもない。それを、笑うことも非難することも、できない。それは、彼らの戦闘方法に、ひいては生命に直結することだから。
 
市街が襲われる前に、雲霞のごとく押し寄せる敵の小型メカを遠距離から確実に叩き潰し続けることも。魂が押し潰されるような巨大な強敵に、まさに肉迫せねばならないことも。
 
恐怖と、責任。パイロットたちは、それを身に刻むようにして、感じているのだから。
 
 
 
「むっつかしい、ですよ・・・・・・」
 
葛城ミサトが呟いた。聞くだけで、胃の奥が苦くなってくるような・・・・
 
 
「九朗君たちの働きも、ムダにはしたくないんだけど・・・・・・・」
 
残りの二つ、ミーア司令とライザ将軍の入ったメモリー試験管は所在もつかめていない。
 
どこぞへ移送したらしいが・・・・・自分の女をさらしものにするのがイヤになって美形二人が裏切り回収したとか・・・それも浪漫すぎるわな、と葛城ミサト独身は考える。
ロンド・ベルと連携して捜索したいところだが、こちらが見つけられないものが立て直し中のあちらで見つけられるわけもない・・・。
 
 
「・・・しかし、あわや、というところでよく止められましたな。なにせ彼らは百戦錬磨の鋼の勇者、なまなかの正論意見などまるで歯が立ちますまい」
 
重い空気を換気するように、ショーン副長が話題展開。苦渋も分かるが、この面子が停滞するのは許されない・・・許されますまいよ。
 
応じるように、葛城ミサトが微苦笑する。「あー、それはですね・・・・」頭をボリボリかいたりするのが、どこぞの警部のよう。それからまた、人の悪そうな、いや悪い笑顔を浮かべて。
 
 
「何だったと思います?」
 
いつぞやのようなクイズを出してきた。
 
まあ、気分転換なのは分かるが・・・・・
 
 
消去法ですぐに分かるではないかこんなの。
 
 
「いちばん下の、末妹・・・・・・・アルフィミィ、でしたか」
「彼女が、泣いて、止めたんでしょう」
「そう、それしかないでしょうね・・・」
 
城田氏、紫東遥、レフィーナ艦長、三人とも即答で正解であった。
 
ちなみに、ロジャー・ドロシーのビッグオーチームは時間切れ。「え?そ、そうだろうか?」
ドロシーはしかたがないが、ロジャー・スミスは・・・・まあ、それはいいとして。
 
 
いやしくも一家を名乗るのであれば。たとえケンカをしようと大ゲンカをしようと・・・
 
 
一番下が泣いているのに、それでいいわけがなかった。
 
 
「正解です」
 
 
 
その後の顛末も、渚カヲルからの報告で葛城ミサトは知っている。
 
泣きやまないアルフィミィをなんとかなだめようと全員で右往左往しているところに、家長と末弟が帰ってきた。この異常光景に驚きつつ、世にも珍しい剣鉄也と兜甲児のしどろもどろの説明を受けたあと・・・・
 
 
「妹が、こんなに泣いて、いいわけがない!!」
 
 
家長と末弟の、怒ったの怒らないの・・・・・・・それはそれは凄まじかったらしい。
 
恐怖のベガ大王に慣れているマジンガーたちも完全ブルった、七倍大目玉。
 
ダイナミック渓谷も震えるそのパワーに気づいた渚カヲルがこっそり様子を見たのだ。
 
女性陣だろうが容赦しない、全員正座で、えんえん説教を朝までかまされていたという。
剣鉄也をのぞいて全員最後までもたずに気絶した、というのだからすごい。ほんとに特訓はしていたのだろうから、二人の怒りぐあいがよく分かる。怒りすぎ、いや怒るわな。
 
もとはといえば、火種はシンジ君な気もするけど・・・・怒るよね!怒りなさい。
あなた自身の妹キャラのために!・・・・とかいってると、私も怒られそうだ。
葛城ミサトは反省する。
 
 
しかし、まあ、これはほんとの話。
 
 
レフィーナ艦長以下、事情を知る関係者全員が納得せざるを得なかった。