スーパーロボット七つ目大戦γ
 
 
<イッパツ逆転ルート>
 
 

 
 
「なかなか見つかりませんねえ・・・・・・」
 
「確かに・・・。だが、考えようでもある。簡単に発見される代物なら我々以外の勢力が容易く見つけているだろうし、な」
 
紫東遥の愚痴とも弱音ともつかぬ呟きに、城田氏はそう応じた。パイロットたちの前では決して見せぬものの、二人ともずいぶんと疲れた目をしていた。
 
 
ドロン・ベルの本拠地、第二バベルの塔、その中枢電子頭脳・ウルミルダルに手伝ってもらいながら情報収集作業に励んでいた。目標は、三本目の「精神コマンダーゼロ」・・・ミーア休息区司令が封入されている・・・・・である。それが未だ見つからない。
 
 
ただでさえ悪党が豊作の今年、頼みの綱の精神コマンドが封じられコテンパンにやられた正義のスーパーロボット軍団、ロンド・ベル。その苦境を救うためにも、精神コマンド殺しである、この謎の装置を手中にするのは、この先も調子にのりまくるであろう悪党軍団を叩き潰すため、なんとしても必要なことだった。まあ、その解放タイミングは別として。
 
 
発見一本目である、リー・カザリーン入りの精神コマンダーゼロは、とある城にほぼ放置の状態だった。それをどこよりも運良く早く、ドロン・ベルがごっつぁんゲットして保管してある。早々に解放すべき、という意見も当然あったが、そのタイミングは首領である葛城ミサトが未だ早計、という判断のもと、極秘にしてある。
 
 
二本目は、奇しくも敵であるリヒテル提督からの情報提供から判明した。正確には、たまたま所属していた私立探偵に依頼が来ていたのを「かっさらった」わけだが。これも能力や努力とはまったく関係ない、幸運であり。そのようなものが何度も続くはずもない。
おいそれと手出しできぬ空間にあり、そこにも忍び込めるスキルをもった探偵に頼んだ時点でやれることはない。
 
 
そして、三本目。
 
 
こうして数えてはいるが、それはあくまでこちらの立場からの話で、ミーア休息区司令入りのコマンダーゼロは、とっくに他の何者かに入手されている、という可能性もある。
紫東遥の弱音、というのはここから来る。焦りを抑えることはできても、これは。
発見入手の事実をバカ正直に公表する必要もないからだ。十中八九、黙っているだろう。
 
 
ロジャー・スミスの宿敵、シュバルツバルトなる怪人が隠した張本人なのだから、彼の人物を知るネゴシエイターが、推理を働かすなりプロファイリングするなりして見つけてくれればよさそうなものだが・・・・・・生きている宿敵、ということなれば、一枚も二枚も上なのだろう。怪人の方が。悪知恵は。「ロジャーをあてにしないほうがいいわ」と、R・ドロシーも言っていた。とにかく。
 
それは、自分たちの仕事だろう、と、紫東遥も城田氏も分かっている。
ロジャーさんはビッグ・オーで戦ってくれた方がいいのだと。
 
精神コマンドが使えるか使えぬかで、パイロットたちの身の安全が全く違ってくる。
 
しかも、いまさら身贔屓するわけではないが、作戦指揮者としての公平な目で見ても、ラーゼフォンの神名綾人、ミーゼフォンの美嶋玲香のふたりは機体は神クラスでもパイロット技量的に不安と心配しかないし、ダイ・ガードの赤木たちも大前提としてサラリーマンであるし、こちらは機体も通常科学の産物で、スーパー頑丈で安全安心、とは言い難い。
 
いままで激戦を何度も戦い抜いてきたロンド・ベルの猛者たちはともかく、こちらの新米たちは精神コマンドに頼った甘さや油断、などというレベルにそもそもないのだ。出来れば一刻も早く全解放したい。そのための三本目。
 
 
 
にしてもこの世界のどこにあるのか・・・・・・・・
 
 
シュバルツバルト。悪党を信用せぬ悪党。なるほど、たいてい悪は互いに足を引っ張り合い裏切りあって自滅する。先手を打って、最後まで信じ抜く、などというポーズをとらないあたり、かなり厄介だ。困った時はビッグオーのショウタイム、ロジャー・スミスの単純明快さを見習ってもらいたい。・・・無理だろうけど。
 
 
一本目はある種の罠、
 
 
二本目はあからさまな不可侵領域、
 
 
ならば、三本目は?
 
 
カウントすることにあまり意味などなかろうが、二本目よりさらに難度が上がっているのだとしたら・・・・・・二本目すら自力で届かなかった私たちに見つけられるのか・・・・・・・暗い自問自答。時間の浪費だ、と思いつつも、それをねじ伏せられない。
 
 
「なにか、一発逆転の秘策はないものか・・・・・」
 
城田氏までそんなことを言い出す辺り、やばいなと思う。夢想と思考の飛躍は違う。疲れた自分を抑えてくれる城田氏までこうなると、ふたりで堂々巡りで完全に時間のムダだ。ちょっと休憩を入れた方がいいかもしれない。だが・・・・・・
 
 
なにか、ふと、頭に、ひっかかるものがあった。
 
 
今の、城田氏の言葉に。意義的には、ただのお疲れの吐露にすぎないが・・・・・