スーパーロボット七つ目大戦γ
 
 
<逆転イッパツルート>
 
 

 
 
それは、正義のメロディにも似た閃きの笛の音
 
 
「もしかして・・・・!!」
 
閃きというのは、それでも苦悩の末に訪れるのだと紫東遥は信じた。
 
 
「きたぞー、きたぞー、きましたよ!城田さん!!」
 
 
「な、なにがきたんだね、いや・・・!」
 
一瞬、キョトンとするものの、さすがにこれだけ同じ時間をともにして同じ苦労を重ねていれば、即座に察するところがある城田氏である。紫東遙の目の中に事態解決のアイデアの閃きを、見たのだ。
 
 
「そうです、大巨人でもなく、ジュジャクでもなく、きました!!閃いたんです!おそらく、これしかありません!!」
 
疲労の反動か、ハイ気味になっている紫東遥。潜入捜査などもこなすが、ここドロン・ベルではバックアップの頭脳労働が主であり、神名綾人たちに直接的なサポートが出来ぬ事もストレスといえばストレスになっていたのだろう。そんな彼女の閃きだ。おそらくは事態の解決に必ず繋がる強力なものだろう。「うむ」城田氏は期待してその言葉を待つ。
大巨人とかジュジャクとか、ちょっとわけわからんところもあるが。そこも勢いだ。
 
 
第三の精神コマンダーゼロは、はたしてどこに隠されてあるのか。
 
 
先に入手した者がいた場合も、その足取りくらいは確実に辿れそうだ、とその顔に。
実作業における人材配分やスケジュールもその頭の中に作成されているのだろう。
 
 
「それはですね・・・・・・!」
 
紫東遥が勢いこんで話そうとした、その時。
 
 
「ごめん!!城田さん、紫東さん!超特急でお仕事頼まれて!激やばいの!!」
 
誰あろう、ドロン・ベル首領、葛城ミサトが珍しく、大慌てで入ってきた。
たいていのことには不気味な薄ら笑いを浮かべて驚きもしないこの女がこうも慌てる事態とは・・・・・さすがに二人の顔色も変わった。
 
「なにがあったんです?」
 
こうなると精神コマンダーゼロの件は後回しにするしかない。いまさら戦況の貧しさ苦しさに動揺しても仕方なく、おそらく出先のパイロット達に何かあったか。
 
 
「ロジャーさんがやらかしちゃって!!ふたりのコネでちょっと仲裁にはいってもらいたいのよ」
 
「「はあ?」」
意外と言えば意外の話というか、説明になっていない。やらかした、といわれても、ロジャー・スミスが何か特別に動く、とかいう話は聞いていない。仲裁うんぬん、ということは、戦闘力よりは言葉や政治力を必要とする局面であるらしいが・・・。パイロットの生命の危険うんぬん、ということではなさそうだが・・・・やばいことはやばいのだろう。
 
「とりあえず、説明を」
「そう、5W1Hな感じで」
 
超特急でやれ、といわれても異論はないが、何をするのか分からぬのでは仕事にならぬ。
まあ、ロジャー・スミスの尻ぬぐい、というのはかなり意外で予想もつかぬし。
元来、ネゴシエイターこそがそういった仕事をするべきだろう。ビッグオーもいいけど。
 
 
「あ、そうね・・・・ごめんなさい。取り乱して・・・・・ぐびぐび」
 
手近にあった缶コーヒーの山から一本取りだして、飲む葛城ミサト。それで落ち着くあたりはさすがだった。けろっと説明を始めた。
 
 
「タイムリース社にロジャーさんに何人かつけて交渉に行ってもらってたんだけど」
 
「はあ!?タイムリース社?どうして!!」
 
が、途端に紫東遥に大声で遮られる。城田氏も疑問の顔でそちらを見る。
 
 
「どうしてって言われても・・・・・・・・三本目があるのは、おそらく違う時間軸。過去にでも送ったんでしょう。ただでさえ悪党軍団は過去にいい思い出はないわけだし。これだけ探して無いんだとしたら、考えを変えた方がいい。重箱の隅をつついでも出てこないなら別の段のお重を確認ってね。で、そこでタイムリース社。タイム高速道路で物品を送り込める。会社組織なら記録も残ってるだろうから、空振りかもしれないけど、イッパツ狙いで打席に入っても悪くない、と思って。で、ロジャーさんに行ってもらって、あちらさんと相談の上、協力して頂こうって筋書きだったんだけど・・・・・どうしたの遥」
 
 
「あわわわ・・・・・・・」
 
いいたいことを”イッパツ”含めて、全て言われてしまった。自分の見せ場が、見せ場が!、この女に!!この女に!!
 
 
「真偽を含めて、確かに難しい”交渉”ではあるが・・・・・彼が失敗するとは」
 
紫東遥はしばらく使い物になりそうもないため、代わりに城田氏が。タイムリース社とやらの存在は初めて知ったが・・・・まあ、世界は広いということなのだろう・・・・ともあれ、会社組織となれば、そう簡単に顧客の秘密を明かしたりもせぬだろうし、協力と言っても、自分たちの立場からするとそれを奪う・・・盗難以外のなにものでもない。
 
具体的にどういうオーダーを出したのかは知らぬが、困難というより究極無茶ぶりといえよう。まあ、実際はそこに有る無しの真偽確認がメインの、”調査”といったところだろうが・・・・・引き際をしくじるロジャー・ザ。ネゴシエイターとも思えないのだが。
 
この件を自分たちに伝えなかったのは、確かに言ったとおりの、空振りの可能性が高かったから、なのだろうが・・・・・慌てぶりからするに、どうやら。
 
「シュバルツバルトらしき三角アタマの人物が、確かに”積み荷”をある時代に送ったらしいんだけど・・・・・そこからの、肝心な積み荷の確認を拒否されちゃってね・・・・・というか、完全にあちらさんを怒らせて、三冠王とか逆転王とかいうロボットまで出されて叩き出されて・・・謎のヒーロー・イッパツマンとイッパツウーマンまで現れて説教されて、アスカなんかすっかり心へし折られちゃってるし・・・・はぁ・・」
 
 
タイム高速道路などという危険な代物を扱うだけあって、きちんとした正義の心をもった会社らしい。そこらへんが読めぬロジャー・スミスでもないだろうに。
だが、どうしたものやら。
 
 
とりあえず、相手を怒らせたなら、謝るほかないが・・・・・・・・
 
この後始末が自分たちの担当になるのだろうな・・・・・・という見当はついた。
これもまた、頭脳労働のひとつ、か。シュバルツバルトの罠にはまった・・・・のだろうか。
 
 
ロジャー・スミスの話をきかねばなるまい。