スーパーロボット七つ目大戦γ
 
 
<鉄人倶楽部ルート4>
 
 

 
 
私は、人造寺三郎・・・・
 
 
探偵だ。
 
 
そろそろ慣れてくれただろうから、読み仮名はつけない。
 
 
探偵であるのに、ティターンズのマラサイ(モビルスーツ。量産機ではあるが、もちろん人間サイズに持ち出してくる兵器ではない。こっちはマスターアジア・かの東洋不敗ではないのだから)と真っ向から向いあっている。どうしてこういうことになってしまったのか・・・・今日日ヤクザでもここまで派手なことはやらない。まさかこんな古いビルを取り壊して地上げでもしようというわけでもあるまいに・・・・・まあ、勝手に人の名前を間違えたあげくに、人を安っぽいニセモノ呼ばわりしたので、ぶん殴ってはしまったが。
 
 
まさか、そのくらいでモビルスーツを持ち出してくるか・・・・・?
どう考えてもやられ悪役の位置取りだということが分からないのか・・・・・・?
 
 
通りにはすでに大量の野次馬たちが。ティターンズを恐れて隠れたりしないのがこの街の住人らしいが。目立つのは探偵にとってはマイナス面が大きいのだが・・・・・・
 
 
「”大人しく出てきたのは、ほめてやる!!だが、父さんにも殴られたことのない僕を殴ったツケは払ってもらう!!連行する前に・・・・・・これで貴様をっっ!!”」
 
 
まごうことなきニセアムロ氏が・・・・ティターンズ所属だということは、これも演技で本物のイメージダウンを狙ってワザとやっているのかもしれないが・・・マラサイに乗ったままわめいている。しかも、これ、というのは己の拳ではなく、マラサイの拳でもなく、
 
 
”ハンマー”だった。
 
 
ティターンズのマラサイにハンマーが装備されていたかどうか詳しい知識は私にはないが、その辺まで凝っているのかもしれない。アムロ氏のガンダム、といえば、ハンマーというのは有名な話だ。主役機であんなものを使ったのはまさに革新的といえる。(笑い)、とかいうべきだっただろうか、こういう場合・・・・。
 
 
「うわー、先生!あんなもので叩かれたらぺしゃんこですまないですよ!。私なら大丈夫ですけど!」
「まあ、洋子君なら大丈夫だろうな・・」
すぐ後ろで自分の得物をぶんぶん振り回している洋子君にも苦笑するしかない。だが、こっちは暖かい。どれくらいの温度かは、君の想像にお任せするが・・・・・
 
 
「周囲に弾丸をばらまくよりは多少マシだろうな・・・・・・さて」
 
こんなことは、探偵の仕事では、明らかにないが、このままでは営業に支障を来す。
事務所の長として、灯火は消えぬ間に、妨害者には消えてもらうことにしよう・・・・こんな連中が神宮寺先生の事務所を訪れてしまったらそれこそ大事件だ。
 
 
「人造寺さーん、がんばってー!あんな奴ら、やっつけちゃえー」
 
野次馬の中から聞き慣れた若い女の声が。バー・すみかのオーナー、すみかの元気で明るい妹、なまみだった。そちらを見ると、隣にはすみかがいて、にっこりと微笑んで会釈してきた。思わず片手をあげて応じてしまった。・・・・こんなストリートファイトは私の仕事では、無論ないわけだが、よもや負けるわけにはいかなくなった。・・・・というか、周囲に被害を出さずに、勝たなくてはならなくなった。連中に派手に暴れられて困るのは結局、地元で仕事してる人間なのだ。負けて逃げ帰るティターンズが後片付けをしてくれるはずもない。
 
 
「・・・・・・・・・・・・・先生、なににやけてんですか・・・・・・・・・」
 
うわ、洋子君のセリフに「!」マークがないではないか!!「に、にやけてなんかないぞ!気のせいだろう、洋子君!これは武者笑いだよ!武者笑い!連中を君とともにさくっと片付ける光景を想像して、つい笑みが浮かんでしまっただけだ!フフフ・・・」
 
 
「あ!そうなんですか!よかった。てっきりわたしは、なまみさんとすみかさんが来てるからニヤけてんだと思ってしまいました!けど、ハードボイルドな先生に限ってそんなチャラいことありませんよね!あー、よかった!そーなると素敵ですよ、その笑い!」
 
「そ、そうかね?・・・フフフ」
 
直感力だけの単純な助手でよかった。ここで機嫌を崩されても困るからな・・・
 
 
「”お、女に・・しかも、あんな美人に応援されるなんて・・・・・ゆ、許さない!。僕は貴様を許さないぞ!貴様は生きていてはいけないんだ!!”」
 
どういう論理かは分からないが、単純に男としては分かる。しかしながら、すぐ後ろにいるこのアンテナ生やした女性の分も計算してほしいな・・・・とはいえ。この調子で女にもてるには巨万の富があってもむつかしいだろう。他のマラサイ連中の目・・・まあ、モノアイなわけだが・・・もなんだか似たようなものだ。こちらに対する敵意が増している。ニセアムロ氏に呆れて置き去りにしてくれればよかったのだが・・・・やはり同類か。
 
 
洋子君の力も借りて・・・早々にカタをつけた方がいいだろう・・・・・
 
 
さて。
 
 
私は、「人造寺」としてのパワーを、解放することにした・・・・・・・
 
 
TALK
PROFILE
SYSTEM・・・パワーオンッ!!
 
 
へその辺りにパワーが渦を巻いて増幅発揮されるあたりは初期の仮面ライダーを想像してほしい。へんなポーズをとったりしない。そのパワーでもって点いた火でタバコを・・・一服・・・・携帯灰皿は外でタバコを吸っていい許可証ではない・・・・とJTも言っていた・・・それから私はおもむろに・・・・語りかける
 
 
 
「ところで、あなたは自分をアムロ・レイ、だと名乗ったが・・・・」
 
マラサイはものすごく分かりやすくギクっとした。
どういう操縦形態なのか私は詳しく知らないが、えらく自然な。それはとにかく。
 
 
「”そ、それがどうした!?ティターンズにアムロ・レイがいておかしいのか!単なる同姓同名だってあるだろう!!”」
 
チンピラレベルの誤魔化しだが、いかんせん自分の発言を覚えてもいないところが悲しい。
 
 
「あなたたちは私の事務所を訪問された時に、ロンド・ベル所属だと名乗っていたが?」
 
 
しゃきーん!!
 
どこからか乱れる麻を心地よく断ち切る刃鳴りの音がする。私にしかこの音は聞こえないが、それで十分。システムは完全に機能している。
 
 
「”そ、そうだった・・・・・僕はアムロだ。とにかくアムロだ・・・・いや、このマラサイは途中で拾ってきたんだ。だから、僕はティターンズではない、かもしれない・・”」
 
「どっちなんだ!!」
 
 
私はおどしてやった。というか、おどすしかないあほな反応だ。アタマの編み笠が一瞬ハネ上がり、二、三歩後退するマラサイ。再び、シャキーンと心地よい刃鳴りの音が。モビルスーツ程度なら、これくらいで十分だろう。しかし周囲への影響を考えるともう一押ししおこうか・・・・・・「そもそも己の身分証明も出来ない人間が、こんなところへモビルスーツを乗り付けてどうしようというかね?」私は鋭い眼光でグイグイ圧していく・・・・・もちろん精神的に、ではあるが、さて、どう反応を返してくるか・・・
 
 
 
「僕は・・・僕は、ニュータイプだ!!
君は、生き延びることができるかっ!?」
「あほ!!」
 
口では百年経っても私に勝てないとパイロットらしくもしくはニュータイプらしく判断したのか、言葉に頼らない手段で、つまりはハンマーで、やり返してこようとした彼に私はおもわず探偵らしくない一喝をしてしまった。これは反省点だ。シャキーン!しかしながら、それでも刃鳴りの音はあった。おどす、のと同じ効果があった、とシステムは判断したようだ。これで三回目、十分だろう!私は、システムを解放させる・・・・・!!
 
 
TALK
PROFILE
SLASH!!
 
 
ここまでくれば、洋子君の手を借りることもない・・・自分のパンチで十分倒せる!
私はマラサイに右ストレートをくらわした・・・・・サイズ的に、相手の足にしか当たらないわけだが、それでかまわない!
 
 
ぐら・・・・・・
 
 
量産機でも人が乗って動かすサイズはあるマラサイが、私のパンチ一発で大きくグラついて・・・
しーん
 
 
倒れた。そのまま起きあがって来れない。爆発しないのは私の攻撃にそれだけの力がないだけのことだが、まあ、それで十分だ。爆発なんぞされては周囲の住民が困る。
 
 
「やったー!人造寺さん、さすがー!!」
なまみの声を皮切りに野次馬たちから歓喜の声があがる。意外の声があまりないのは住人達は私の能力を知っているからだ。それに引き替え、おののいているのは同じマラサイに乗っているティターンズ諸君だろう。まあ、初見でやられた理由も推理できなければ、こちらをマスターアジアかなにかと間違えて恐れるのも無理はない。
 
 
トーク・プロファイル・スラッシュ
 
 
私のシステムが完璧に作動した結果、発動される私の必殺技のひとつだ・・・。
探偵なのに必殺技、などと少々照れてしまうが、分かりやすくはあるだろう?
 
 
相手の心の鎧をとりのぞくと同時に、纏う現物の装甲も意味を成さなくする・・・・
 
 
実際に装甲を剥ぎ取るわけではなく、攻撃した威力をそのまま透過させる、といったところだ。もちろん心の鎧を剥がすのにしくじりれば、装甲はそのまま。私のパンチが効くはずもない。モビルスーツ程度なら三回もいけば装甲は障子紙かもしくはマイナスになっている。拳法で言うなんとか通背拳とかいう類のものではない。私は拳法使いではないし。あくまでシステムの作動の結果だ。効果はあのとおり。機体のついでにパイロットもKOさせてもらった。
 
 
さて、これで逃げ帰ってくれればいいのだが・・・・・出来れば、洋子君の見せ場などない方がいいし・・・・い、いや、助手を危険な目にあわせるのは何であるから・・・・
 
 
「”なかなか素晴らしい能力だが・・・単にそちらの話を聞かなければいい、という弱点もありそうだ”」
 
 
ニセブライト氏はさっそくこっちの弱みを見抜いてきた。いや、コミュニケーションは大事ですよ?話し合いは基本だし?と言うても聞いてくれそうもない・・・・悲しいが、これも現実だ。
 
 
「見破られちゃいましたね!先生。じゃ!あとは任してください!なまみさんたちの声援も必要ないようにしときますから!兜の緒でも締めといてください!」
 
 
洋子君に絶好の見せ場を与えてしまうことも、また・・・・・・・