スーパーロボット七つ目大戦γ
 
 
<黄雷のガクトゥーンルート3>
 
 

 
 
「話は分かった」
「えっ!?」
 
 
時代と世界が違う現地の人間に事情の全てを話してしまうのは、かなりの冒険であったが、R・ドロシーは、この思弁的探偵部部長というニコラ・テスラにぶっちゃけた。
 
その後、相手の目を見る。口だけならば、なんとでもいえる。ネオン・スカラの反応の方が正しく、正直なのだ。まあ、ニコラ・テスラも話を理解した、というだけで、こちらを信用した上で内容を受け入れた、といったわけではない。口だけならば。
 
ただ、目を見ると。その深いまなざしは、こちらの事情を全て把握した、任しておけ、と語りかけてくるようで。
 
「肝心なことは、こちらのドロシー嬢が、その装置を正しきことに用いるかどうか、ということだが・・・・心配はなさそうだ。信用できる」
「マスター!?、いや、私ももちろん、ドロシーさんを疑ったりはしませんが、は、話が、お話がちょっとむつかしすぎてっ・・・」
 
「何が難しいことがある。これは依頼だ。ドロシー嬢は確かにマルセイユの学生ではないが、これが果たされねば力のない多くの人間が苦しむというのなら、受けぬ道理はない」
「ま、ますたー・・・そ、それは、そうなんですケド・・・でも、精神こまんど、とか、意味がわからないです・・・・・異能(アート)とは違うんですよね」
 
 
「・・・・・・・・・」
 
まあ、全て話したのだ。つまりは、1908年よりも先の、”未来からやってきた”うんぬんも包み隠さず。そのあたりでもなんとかついてこようとするネオン・スカラは健気な部類であろう。そして、ニコラ・テスラがこのトンデモ話をあっさり理解するのには理由があった。
 
 
 
というわけで、作品紹介とまいりましょう。なんせ、おまけですから。
 
 
「黄雷のガクトゥーン」、ライアーソフトさん製作の18禁ゲームです。このあたり「デモンベイン」と似たような出所なのですが、デモベがああいうことになった以上、「まあ、この先も参戦はないだろう」とはいいません。世の中、何が起こるか分かりませんし。
 
18才未満はご購入してはいけない、ということから分かるようにも、スチームパンクという魅力的な世界観の中には、魅力的な女性がいろいろあんなことになる展開もあり。
当然、メインヒロインたるネオン・スカラも魅力的な姿をさらしてしまったり、ということもありますが、なんといっても特筆すべきは、主人公、ニコラ・テスラ(72才)。転校生として現れ、こう告げる。「マルセイユ洋上学園都市10万の学生諸君。運命に呪われたお前たち、全員、」
 
 
「私が、この手で、救ってやる」
 
 
と。道理の外に身を置きながら、世界の歪みと戦い続ける永遠の戦士。ヒトの姿をしていても、ひとではない。人の形をひとときとっている黄金の雷、といった方がよいか。
半世紀を越える深い人生経験ならぬ、「結社」との歴戦の人外経験。なぜ彼はこの学園都市に現れたのか?そして、明らかに学生で若いネオン・スカラ嬢との年の差すぎる関係は?スーパーロボットに乗るのか?乗ります!!機械帯からの変身もします!!
主題歌「Toritrus」がこれまたよい。い〜かづちの〜つるぎのごとく〜、ゲームをやりつつ聴いてください。ちなみに石龍は初回盤を買ったのでサウンドトラックもってます。
 
 
そんなわけで、いろいろと奇妙な体験が豊富なニコラ・テスラであるから、R・ドロシーの話も「まあ、そういうこともあろう」と鷹揚に受け取ることができたのだった。
 
 
自分たちの世界の「外」でも激しい戦いが繰り広げられていることを知る身であるから。
 
 
奇妙な依頼であっても、痛がることもなく、その助力を惜しまないニコラ・テスラであった。同じ探偵と助手の関係であっても、人造寺たちとは力関係はまったく違う。いやさ、最終的なキモは、このネオン・スカラ、黄金の瞳の娘が握っている・・・・気がする。
 
 
・・・・・・・・・・・自分と、ロジャーに、似ているのか。
 
 
片方が、ひとではない、という意味で。
 
 
ともあれ、この広大な学園都市で強力な味方を得られた、というのは収穫だ。
あの風紀警察の主任には感謝しなければ、と思う。
 
 
「眠れる上半身のみの美女・・・・・・・・美術品、という触れ込みならば、芸術関係の部活のモデルにでもなっている可能性が高い・・・(もしくは)」
 
独り言の後半は、自分に対してよりおそらく助手の娘を気にしての消音。学園とはいえ、広大な都市となれば、綺麗なまともな部分だけで成り立つわけもない。そうではない部分に持ち込まれた可能性もあるだろう。「ネオン、アナベスに連絡をとってくれ」「え?マスター、ご自分で探しにいかないんですか?いかないんですね?じゃあ、助手として私が」
 
ネオン・スカラは探偵助手、というよりは家事担当なのだろう、熱意は感じられるが実作業的にはちとずれている感じが。アナベス、というのが誰か知らないが、優秀なコネクションの一人なのだろう。情報収集の得意な、新聞記者、新聞部、なのかもしれない。
 
 
そして、腕っ節が必要な領域は、ニコラ・テスラ、この雷電魔人が赴くのだろう。
自分もそちらに同行した方がいいか・・・・・それを顔にだした覚えはないのだけど。
 
「いや、ネオン、お前はドロシー嬢についていろ。・・・・・どうも妙な気配がある。監視されているような・・・単に私を狙っているのか・・・・・・分からないが、用心しろ」
 
思考を読まれたような。アナベス、というのはやはり新聞部の記者のようで、潮騒通りで待ち合わせの調整をするとニコラ・テスラはさっと行ってしまった。もしかすると、「妙な気配」とやらを狩りたてに行ったのかもしれない・・・・彼の白い背が消えてから思い至った。それは探偵の任を外れている。護衛を頼んだわけではない。あくまで捜し物の発見を依頼したのだ。
もし、それでニコラ・テスラが負傷するようなことになったら・・・
 
 
「妙な気配」・・・・・・・・・今さらかもしれないが、見当がついた。
 
 
先ほど、全てを話したつもりであったけれど、自分でも確証のもてないことは伝えていない。もし、自分がここにくることまでが「計画通り」であったら・・・・・・
 
 
あの男は、相手の弱点をつくのがとても上手い。
 
 
「大丈夫ですよ、マスターは頼りになりますから」
 
黙り込んでいる自分に不安だと感じたのか、ネオン・スカラは笑顔を見せた。
助手が主人公に向ける信用、というよりはもっと近い。ひとりではいかせない、とすでに誓ったきらめき。世を覆う暗い灰色でも色褪せることはない永遠無尽のそれ。
 
 
その輝きが曇るようなことになってしまったら・・・・・