天よりの冷遇
 
 
 
黙して、それを見た。第三新東京市の住民全てが、その時、自分たちの時が凍ったのを。
 
 
 
黙示録などで記されていれば、さぞ難解な事柄であろうとも。目の前で起きてみれば。
 
 
どういうことか、肌で理解する。理屈など理由など必要ない。業界知識などなくとも理解できる。
 
 
霊異にして霊威にして冷意。彗星に乗って出現した七眼の巨人は、神秘のベールに包みもせずに、分かりやすく示して見せた。つまり、
 
 
 
冷や飯、食べてろ
 
 
と。
 
 
実力差がどうこういう世界ではなく、支配存在による、判断。支配される方はそれに従うほかない。確かに、大陸まるまる凍らせるような、下手をすると全球凍結も可能かもしれぬ兵器を持ちだした相手に向かって正面切って逆らうのは、お利口ではない。
 
 
なぜ、そんなものを食らわねばならぬのか?
 
 
疑問しようと、答えなどかえってくるはずもない。
 
 
黙するほかない。
 
 
時が過ぎるまで。支配存在が設定したタイマーが鳴り響く、その時まで。
 
 
一年でも、四年でも、十年でも、十四年でも。
 
 
待たねばならぬ。異議も唱えず、黙したまま。
 
 
凍り、停止せよ、と
 
 
命じられたなら。
 
 
 
 
 
フリージング・ネルフ
スリーピング・市民
冷凍系美少女・綾波レイ
冬眠寝太郎・碇シンジ
 
 
 
それらが目覚めることも約束されていない流刑の眠りを続けるトーキョースカイリム。
 
 
かつて
 
 
「業界」の中心地であったはずの、そこが、あの時を境に、忘却のシャッター街となり果てる・・・・福音は古ぼけ色褪せ冷凍焼けした伝説となり・・・・
 
 
 
あれから。
 
 
なんと
 
 
14分の年月が経過していた・・・・・・・
 
 
まさに無情、
 
 
時の流れは、無情であり・・・・・人の情けや感慨など、関係なく
 
 
しかし
 
 
「分」は年月の単位ではないのではないか・・・・・・・・・
 
 
間違い探しをやっているのではないのだが。
 
 
確かに、時間は。「分」単位。しか、流れていなかった。水より血よりねばっこく。
 
 
 
 
 
「フフフ・・・・ユイザさんが戻ってくる様子は、ありませんね」
 
 
凍らされて、14分後。
 
 
都市にいる”誰か”が、確かに、そう言ったのだ。
 
その生命力はともかく、100万年の冷凍刑に処されても仕方のない極悪宇宙人のような口調で。