シン・カルナ・チャル・ステーシア



第二十四章「 男一匹 若大将」




修羅場と化したアマルダの道具屋前・・・・・・・・・



シン・リュウが石街路にぶっさしたタブラトゥーラに凭れながら、叩きのめした敗者たちに今までのからくりの説明を行っていた。さすがの数に面子だったが、シンは言葉通りにかかってきた全員・・・人間以外を含め・・・・・非友好的にして非論理的な手段で・・のコミュニケーションを・・・・わかりやすくいうと・・・・・・
シメた。

「つまり、だ。商人としてはこのまま街道が占拠されていては困るわけだ。そこで、悪党どもを追い払うための戦力を求め、やる気を高めるための賞品としようとしていたんだろうが・・・・いくら高値で売れたところで、それでおしまいだ。試し切りに出向くようなお人好しは商人の算盤にはないからな。だが、困ったことに、あー、そこの猫の妖精やら天人やら魔族やらまでが現れてしまった。広がる情報網を軽く見ていたわけだな。
そこらへんは人間は愚かだ。・・・・・おい、ちゃんと聞け」

自分で手加減なしにぎたぎたに痛めつけておいて、マグロのよーに転がっている一団に注意するシン。

「あのフーリンという魔導師がなにを考えているのか、今一つ分からないが・・・・・。このままでは市民の生活にも支障を来す。俺も困る。騎士と悪党組織が何処でなにをしようが知ったことではないが、とりあえず街道だけは通りをよくしておかんとな。
飛行竜を使って物資を運搬するとなるとそれだけものが高くなる。やはり輸送の基本は陸路だからな。そうなれば騎士団のバカ共も恩知らずな買い占めをやめるだろう」

てめーの方が何考えてるかわからねえよ!!、とつっこみたかっただろうが、いかんせんなんとか生きているのが精一杯なやられようで、彼らにそんな元気はない。
だが、そんな彼らのいまにも絶え絶えな心臓にトドメをさされるようなことを言い出す。

「そこで、だ。約束通り、俺に負けたお前達には俺の子分になってもらう」

「心配するな。あくまで一時的なものだ。俺も長いこと養ってやるほどのつもりも甲斐性もないからな。街道を占拠している連中を蹴散らしたらその場で解散してやる。
それでチャラにしてやろう。ところで、一応聞いておくが・・・

・・・・・・文句はないだろうな」

とくに凄んだ気はないのだが、ここでイヤなどと言おうものなら今にもあの巨大刀で首を跳ねられそうで否を唱えるものはいなかった。

こうして、本日シン・リュウは「セルフィア街道占拠群蹴散らし部隊」の初代隊長を襲名したのであった。

構成メンバーはここに屍のよーに転がっているバラエティ豊かな者たちだが、その実力の程は・・・・・・シンが強すぎたのか、彼らが外見だけだったのか、それもこの先分かることだろう。なにせ、この鬱憤はすでにシンではなく、占拠している一群に向けられることになったのだから・・・・・・。不条理なことだが。

「そうなると・・・怪我を治してやらないとな。死なないで待ってろよ」

そう言ってシンはシャッターを下ろしたアマルダの道具屋の中に消えていった。

一切の反論、質問を許さない鬼のような若大将に引き連れられることになった彼らの運命はいかに・・・・・・・・。



それは、赤い夕日だけが知っている・・・・・・