スーパーロボット七つ目大戦α
<必要な力、力は必要ルート>
葛城ミサトや、「とある」事情により腰を痛めたロジャー・スミスなど参加しなかった首脳一部をのぞいて、昨夜の宴会は大いに盛り上がり大成功を収めた。まあ、その代償に重度二日酔い今日はもう動けましぇ〜ん、とまではいわずとも宴会参加者たちに昨夜のハジけ度に応じた、それ相応の体力精神ダメージを残しはしたが。それでも差し引きで考えれば彼らが得たものは大きい。それでも8割以上の者が「昨日はちょっと飲みすぎたなあ・・・」と頭をぽりぽりかいていた。一応、ここは戦艦なのだから。それでも一夜明けるとヒリュウ改の空気がぐっとマイルドになっていたのは確かだ。惣流アスカなどが評するには「まあ、シンクロ度が高まったてえトコロかしらね」ということらしい。
その惣流アスカは一晩明けてみると、大山さんをはじめとする広報二課の女性連といっしょに食堂内で食べる人ではなく作る人をやっている。なんでパイロットがこんなことをせにゃならんのか、とも思ったが大山さんに誘われると、なんとなく、ごく自然についていくことになりこうやって給食白衣に三角頭巾に髪をまとめて配膳の手伝いなどやっていた。もちろん、綾波レイも、それから逃げようとしたのを惣流アスカが襟首掴んで連れてきた渚カヲルもいっしょだ。これで碇シンジがいればそれなりの絵になっただろう。
ヒリュウ改のクルーはやはり女性の、しかも軍人以外の人間の食事がそうとう嬉しかったようだ。予想もしない一撃にこてんと。民間企業の処世術といえなくもなかろうが、やはり「おはようございまーす、どうぞ」女性の笑顔がついている食事にみなぎるパワーは違う。同じ軍隊からはさんざんハゲタカのように毟られ続けてきたこともある。
まあ、タネをあかせば昨日の宴会の支度で食堂の料理人が大お疲れであったのをみかねてのことなのだが。朝からクルーは米の飯食って涙ぐんでいるのがいるし。
「まあ、こんだけ感激してくれればつくりがいがあるけどね」
なんで男連中は寝てるのにあたしらだけ早起きなのよ、時代遅れの男女差別よジェンダーの幻想よと文句をたれていたガン黒課員の谷川もこうなりゃまんざらでもなさそうに。
「自分たちの食事をつくってくれ、とはちょっと言いにくいですしね・・・」
眼鏡課員の中原が気弱というか遠慮というか、まだ相手との距離感をはかりかねるようなことを言えば「ふふ・・・鍋釜、補給線をその手に握るは戦略の第一歩よ」謎の女風味の入江がクルーに聞かれてはマズかろう発言を呟く。「・・・銃後を守るは女の嗜み」分かっているのかいないのか。
「まあ、いいじゃないの。料理長さん、お疲れみたいだし」大山さんはそうにこやかにご飯をつぎながら、ヒリュウ改の厚生面のことを考えていた。人員を大幅に引き抜かれたせいで、もともと機能的人員配置、つまりは必要最低限にしか人間をおかぬ戦艦がより貧乏くさくなっている。今までは戦闘などを行わぬ暇な艦であったからそれでよかったかもしれないが、本格的に動き出せば今まで手すきでやっていた部分の仕事がなおざりになり、まあ、端的にいえば埃っぽく汚く厚生面が低下していくということだ。もちろん戦艦はホテルではなく戦闘機能が充実しとればそれでいい、という考えもあるだろう。
それに加えて、このヒリュウ改がただ一戦艦として機能すればいいのか?という問題も大山さんは考える。他の女子課員は呼び捨てで、大山さんにだけは「さん」づけされる理由はここらへんにある。母国語が広島弁というのもポイントが高いがそれだけではないわけで。話がそれたが、ヒリュウ改は「ドロン・ベル」・・・この名前はまあ、あれだけど、自分たちの旗艦となる。家だ、とまではいわないが、要するには仕事場だ。これから先、戦闘機能だけを求められるとは思えない。どっかの基地司令部の指示を仰ぐでもなく自分たちで自分たちの意志で動こうというのならなおさらだ。戦うだけではなく、市民を守るのなら、避難時のその受け容れ態勢やら何やら、今まで自分たちが培ってきたスキルや知識が生かされることもあるだろう・・・・・自分たちは会社の看板を背負ってきている。ヘテロダイン対応のこともある。おさんどんをしに来たわけではないのだ。
ヒリュウ改はもっと細やかに事象に対応できる多機能な艦にならねばならない・・・それはまあ、人力でどうにかするしかないかな、と。とりあえず、の大山さんのビジョンである。女性的な、親切なだけのひとではなかった。逆にいえばそれほど員数的にヒリュウ改が枯渇しとるという悲しい現実なのだが。と、こういう思考の中で大山さんもサポート精神コマンドを習得した。さすがであった。
「でも、ミサトやロジャーさんは結局、来なかったけど・・・・・どうしたんだろ」
ミサトが自分たちのこの格好をみればなんというか、少し楽しみだったのが姿を見せない。
まあ、この混成部隊の裏方ともなれば苦労も相当なもんだろうけど、顔くらい見せればいいのに。ここのお嬢さん艦長だって大いに参加してたんだし。朝食も食べに来ないし。
R・ドロシーが伝えにきてくれたところによれば、朝食後に艦長から今後の行動方針についての一発、挨拶があり、その後でパイロットが集められてブリーフィングがあるらしいが。・・・そういえば、パイロットは昨夜の宴会で爆発したものが多く、大十字九郎、アル・アジフなどは寄り添って十字架状態で大いびきかいて・・・まだ眠っておるんじゃなかろか誰も起こしにいってないなら・・・・神名綾人、美嶋玲香もまだ二十歳前であるのに飲酒をすすめられ、素直に飲んで、肩を抱かれてその気になった、かどうかはともかく浪花節だよ人生は状態でこれまたダウン。二人して念のため医務室で寝かされており少しくらいは吐いたかもしれない・・・・・・まあ、なんというか、そういうわけで、主力のデモンベイン、主力候補のラーゼフォン、ミーゼフォンが現在、緊急発進不能状態にあった。そうはいっても百戦錬磨のデモベコンビは叩き起こせばすぐに臨戦できるだろうが。
「さあ・・・・・でも、すぐにわかるわ。・・・その前に片づけを終えないと」
碇シンジにみせたいような、台所のおかあさん姿の綾波レイ。手首にはご丁寧に輪ゴム。
「まあ、一波乱は覚悟しておいたほうがいいだろうけどね」
コップを磨かせても絵になる少年、渚カヲル。実は昨夜、何があったのかその人並みはずれた知覚力で把握しているのだが、黙っている。紫東遥の涙のことも、ロジャー・スミス氏が夜空から降ってきた「例の少女」を受け止めようとして、腰を痛めてしまったことなども。だが、さすがに今朝方緊急に入ってきた報のことまでは分からなかった。情報収集活動を惣流アスカに妨害されたためだ。・・・・どうも彼女には不真面目にみられているらしい。ぼくはまじめなんだけどね・・・・
「ロンド・ベルがコテンパにやられました」
ヒリュウ改の艦長室。レフィーナ艦長、ショーン副長、腰の痛いロジャー・スミス、城田氏、早朝からドロン・ベルの首脳部面子がそろったところで葛城ミサトが告げた。昨日の宴が残っているようでは人の上に立つ資格はないが、それでも体の隅にわずかに残っていた楽しげな余韻がそれで消し飛んだ。艦長室の空気が一気に緊迫する。
コテンパというのはどんな敵ですか?というお約束のボケをとばす者もいない。
葛城ミサトの表現はあれだが、純粋軍人の城田氏もそれが一番事実を端的に表現していることをその報告から認めざるを得ない。
ロンド・ベルが負けたのだ。
しかも、一方的に。苦しい戦いを強いられても、最後には必ず勝ってきたロンド・ベルが。
ボルテスVの基地であるビッグファルコンで、しかもとりわけ人質をとられたとか基地に爆弾を仕掛けられたとか言う絡め手もなしで、まったくの真っ正面からのガチンコ対決で。
これで負ければ、作戦らしい作戦もなくひたすら戦闘力のみで無策・無謀・無茶の三無し主義で世の中渡ってきたロンド・ベルの立つ瀬がない。これはもう戦略レベルでそういう戦い方しかできないなにかと後手にまわるしかない正義の軍団であるから仕方がないが、唯一の、お得意の正攻法で悪の軍団に負けたとあっては、ロンド・ベルの存在意義は・・・
戦力は「いつもどおりに」向こうの方が圧倒的に上回っていた。
なんせ、ボアザン、バーム、キャンベルの三星連合軍であるうえに、どれい獣、獣士、戦闘ロボも決まり切ったやつではなく、バリエーション豊かに揃えてきていた。ざっと列挙してみると。どれい獣、ガルムル、ゾンビ、ゼンダ、デモラ、ラセツ、ゴルダー、ギャルド、イカゲラ、夜叉、キール、ゲルドン、コングリラ、ダイバ、スペクトルダー、バララ、ガニガマラ、アルファ、ゴルゴ、アイラス、ピラニヤンガ、イソギラン、デモン、トドメにビッグガルーダ。獣士、ドクガガ、バイザンガ、ボンザルス、カラカラス、ゴンダム、ボレボス、ナマズンゴ、強力ナマズンゴ、ガメンザー、カニガン、ゴンブル、クラゲニャラ、シャガード、スネイザー、ザイザルス、ゴキール、トビウラゴ、サザラス、ゼミンゴ、オコゼニア、カガミキリ、カマゲリラ、スコルピオ、なおかつトドメに守護神ゴードル、で、戦闘ロボが、ズバンサー、ダリ、ガイオス、ムーンソルト、グルモング、メテオロ、デスフォーク、シャイフルド、ベムスター、カハボッド、クライン、ハザンガー、ゴンザルド、ガガドス、メドルス、ゼロンNS、ゾンネカイザー・・・・・・
はあ、これで得意技まであげていたら大変である。葛城ミサトたちはこういう連中の得意技まで暗記しとかんといけないのである。要するに、質量ともに、向こうが上回っていた。
「いつものとおりに」
こういう戦いはロンド・ベルは慣れていたし、毎回それを制し切り抜けてきたのだ。
単純に計算すればありえない勝利を掴んできた。正義の力、友情の力、または愛の力で。
ビッグファルコンには旗艦アーガマが降下していたものの、ロンド・ベルの全戦力がいたわけではない。参戦する機体、仲間が増えてくるとアーガマに入りきれない分は宇宙だの地球の裏側だの他戦線にまわすのがロンド・ベルの常套手段であり、その間に機体改造や新型兵器の装備で増強するなどパワーアップしたりもする。時間があまりないので悠長にパイロットの特訓などはあまりない。実戦が即訓練となる。ボルテスVのパワーアップに寄っていたらしいロンド・ベルだが、そんな言い訳が通用しないほどには面子はそろっていた。その場にいなかったのは、「こうして大介さんのグレンダイザーといい、雷系がそろったわけだし、特訓して合体攻撃でも編み出そう!!というわけで合宿だ!いいなシンジ君!!」「はい」マジンガー一家(碇シンジ・アルフィミィふくむ)と、謎の機体「ZZZ」トリプルゼータを月のアナハイムまで受領に行ったクワトロ大尉の印鑑チーム。
ボルテスV、コンバトラーV、ゲッターチーム、ダイターン3、アムロ・レイ率いるガンダム部隊、ビルバインのゲット済みの聖戦士ショウ・ザマ、獣戦機隊のダンクーガなどなど、錚々たるロンド・ベルの顔がそろっていたのだから。それでも壁役のマジンガー一家がいないのはやはり痛かっただろうが、それでも。負けるはずはなかった。なぜなら。
「いつも勝ってきたから」
このくらいの苦境は苦況のうちにはいらない、はずであった。
揃えた敵のコマといい、どこか悲壮感を漂わせて鬼気迫るハイネルら敵司令官らといい、雰囲気の違いを感じ取ってはいたが、自分たちの勝利を疑う気には微塵もならなかったロンド・ベル。
だが、破れた。コテンパンにのされて、ビッグファルコンを放棄して、ボルテスVの強化改造も途中で諦めて、アーガマに乗ってほうほうの体で逃げ出した。その判断をブライト艦長はどうも見誤ったらしい。アーガマごと撃墜されるようなタイミングで完全に機を逸していたらしいが、プリンス・ハイネルら悪の御三家率いる三星軍は余裕をかましたのかどうかあえて可能な追撃追い打ちもせずに逃げるにまかせて、・・・・・なんとビッグファルコンを占領してしまった。それによってロンド・ベルを社会的に叩き潰そうという狙いなのか・・・・現在も三星軍は主力をまんま留めおき、ビッグファルコン内部でなにやら企んでいる・・・・どうせ悪いことに決まっているが、恨み重なるロンド・ベルに一気にトドメをささなかったのは連中らしくない、まだ他になにかあるのではないか。
悪の本拠地、城を攻略するのはよくあることだったが、こういうパターンは珍しい。
中で単純に祝杯でもあげているのか・・・・・・
「とりあえず、ロンド・ベルは光子力研究所か、早乙女研究所か、科学要塞研究所か・・・・・この中のどれかに逃げ込んで、戦力の再編成を行うでしょう。敗北の原因究明とともにね」
逃げ込み先を不明にしてあるのは負けてもさすがはロンド・ベルだ。居所が知れれば、傷を舐め終えて立て直す前に他の戦力にここぞとばかりに狙われる。勝ち続けてきただけに、今回の敗戦は計り知れないダメージを、物理的にも、精神的にも負うたことだろう・・。悪事は千里を走るのだから。悪の勝利もまた同様の速度を誇るだろう・・・・・葛城ミサトの表情は苦い。これは、碇シンジが幸いやられなかったから、よかったわレベルの話ではない。正義が悪にコテンパに負けた、というあってはならぬ・・・・・というか人類世界の危機だ。世界を守ってきた彼らが負けたのだから。現時点で正義側の世界最強戦力である彼らが負けたっということは、自分たちもやれば負ける、ということだ。自分たちが彼らをしのぐ力を身につけるならともかく・・・・・。それを考えるなら戦略レベルで再考せねばならない。はじめから。このドロン・ベルの成立から。格好をつけている場合ではなく、いきなり解体だってありえる。ロンド・ベルの敗北は、作戦のまずさうんぬんではないような気がする。一体、何が起こったのか。現在、ネルフに全力で詳細情報の収集にあたってもらっているが、それくらいの深度で考えなければ、なるまい・・・・・
武装要塞都市・第三新東京市に閉じこもった方が有利だという結論が出ればそうする。
ロンド・ベル敗北のこのニュースでさえ、軍部では最重要機密となっている。そりゃあそうだろう、これが知られれば一大パニックになる。連中がビッグファルコンに居座っている以上、一般にも知られるのは時間の問題だが・・・・他の悪党どもも勢いづくだろう。
特に今年は悪党が豊作だったのだから。
「しかし・・・・著しい戦力差はいつものことです!彼らはなぜ・・・・・あっ!」
レフィーナ艦長は敗北原因を自分で問いかけ、すぐに気づいた。
導き出される結論は唯一つ。
他の者もあえて言葉にせぬものの、同様の答を思い浮かべていた。
精神コマンドが封殺された・・・・・
これしかあるまい。