スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<力は必要、必要な力ルート3>
 
 

 
 
ロンド・ベルがコテンパにやられた現時点で、後発かつ保有戦力がそれより少ない、援護的遊撃部隊としてのドロン・ベルの取り得る選択は、そうはない。
 
 
即ち、1.ロンド・ベルと合流するか、
   2,あくまで独自の道をゆくか
 
 
まともに考えるならば、これはもう1しかない。主戦力というのは主役であり、主役がちょっとやられたからといって、今まで影の脇役が、(準主役といっても、主役以外は脇役である)しゃしゃりでてきて主役を張れるほど演劇の道は、じゃない、世の中それほど甘くない。よほど主役が大ヘマ大ポカをやらかして負けたのでなければ、主役は主役を張るだけのことはあるのだ、それが支えきれなかった敵の侵攻に今度はこちらがダンプに轢かれたカエルのごとくペシャンコにされるだろう。それが道理というものだ。
というわけで、「ここぞとばかりにロンド・ベルにとってかわって自分たちが天下をとる」という選択は、0,であり、無い。
 
 
今回の敗因は「精神コマンドが効かなかった」ことにあるのだろうから、今後の、悪の軍団に対する正義のリベンジは、互いの純粋戦力がものをいう。揃えられるだけの戦力を揃えて、結果、数が多い、強大だったほうが、勝つわけであり、その来るべく一戦になんとしても負けられぬロンド・ベルとしてはなんとしても戦力が、消耗戦を覚悟しそれを乗り越えられるだけの戦力が今こそ必要であり、合流するのにこれ以上のタイミングはない。友あり遠方より来る、頼りにしてるぜおまえたち、てなものである。熱血であり友情でありこれこそ正義の底力である。愛する友のまなざしが、倒れるたびに傷つくたびにオレを強くする、である。その瞳がうるんでいるのは手にした絆のため、ひとつの傷をわかちあうもの、かなしくそして、いとしくおもい、牛丼ひとすじ八十年である。とにかく早くいかねばうまくない。こんな時に自分らの戦力を高く売ろうなどと考えるのはゲスであろう。
 
 
2,のあくまで独自路線、というのも、もともとこの路線というのがロンド・ベルあってこその戦略であり、肝心要の正義の主戦力が潰れてしまえばあまり意味をなさない。戦力に劣る自分たちが正面切って悪の大軍団を相手にすれば取り囲まれていずれはタコ殴りにされるだけのこと。体力と防御力に遙かに勝る相手にヒット・アンド・ウェイはあまり通用しない。息切れしたところをのしかかられて終わりである。
 
 
なんにせよ、ドロン・ベル首領である葛城ミサトはもともとロンド・ベル入りを望んでいたのだから、今こそ雪辱のチャンス、呼びかけさえすれば、両手をひろげて迎え入れてくれるであろうし、まさに大手を振って入隊できる。まさか独自部隊を立ち上げたばかりとはいえ、今さら人の下風に立ちたくないなどというほど器量は狭くないだろう。何よりも、そうしておけば、離ればなれになった碇シンジと再会できるわけである。
 
 
一度は悪の奸計にはまり、破れた正義の軍団、しかしてその後、友情の応援戦力が現れて、悪と再戦、これをぶち破る、というのが神世の時代からある黄金パターンであろう。
 
 
しかし、これを「さほどの得策ではない」とアル・アジフは言う。
これ以外にとれる道などないような気もするし、中には強い不満をもつ者もいたが、皆は次の言葉を待つ。
 
 
「これが最終決戦というのならば、すぐに駆けつけるべきであろう、と妾も思う。
だが、実際には宇宙人どもの軍団以外にも土着の悪党どもがわんさと控えておるし、今後の戦況を虎視眈々と見守っておるだろうよ。こちらの戦力を一極集中して巨大な損害を引き替えにして勝利したとしても、漁夫の利を狙う悪党どもにやられるのは目に見えておる・・・・妾達はその場合の牽制を行うべきであろう。ロンド・ベルの勝利を信じてな」
その隣では大十字九郎が「応」と肯く。おお〜、と赤木俊介が小さく拍手し、うーむ、それもアリか・・と惣流アスカがあごに手をやり考えるポーズ。
 
 
アル・アジフの言うことにも一理あるが、それでは納得できない者もいる。
 
 
「だが、それは仮定のひとつでしかない。ロンド・ベルがそのまま敗北した場合はどうする?」
城田氏の問いは、おそらくはそんな慎重思考系パイロットたち、つまりは普通の性格をしているあまり熱血君ではない者たち、の代弁をしたものだろう。
だから、アル・アジフも「それを考えるのが汝たちの仕事であろう」などと決まり切った返しはやらずに答える。「その前にひとつ、いっておく・・・・”それは違うのだ”、と」
 
 
翠緑の瞳が細められ、その言霊は円月刀となって作戦会議室の空気をしゅう、と切り裂いた。先のロンド・ベルの勝利を信じた者も、あまり信じなかった者も、等しく固まった。
そうせねば、自分たちがスライスされると。その軌跡が読めぬ限りは。
 
 
「”このまま”では、破れるのだ。そのまま、も何もない。知れきった結果であろ」
 
見えない刃に切りつけられて、ほとんどの者は言葉がない。
この冷徹さはこの美幼女のどこに仕舞われていたのか、だが、弱気と過信の血を吸った闘気でつくられたシャムシールは血振りをするよう室内をくるくる回りその声を聞く者たちの士気を鼓舞していく。
 
 
「己の武器を使い物にならなくされて、己の半身を失ったような状態のままで、いくら数を集めようと策を練ろうと勝てるはずもない。いわば、魔術師・・・いや、九郎のおらぬ妾のようなものよ・・・・とりあえずは、それを取り戻す手助けをしてやらねばな。
これはカンにすぎぬのだが、どうもこの一件には魔術が絡んでおるような気がする。宇宙人どもが魔術など使うのかどうかは知らぬが、精神こまんど、などという精神的なものを科学の力でそう簡単にどうにかできるとも考えにくい・・・それならば対抗策も練りやすかろうが、そうでないのなら・・・・・自画自賛するが、もし、それが魔術的な業であるのなら、この世界最高の魔導書の精たる妾とその主たる大十字九郎以上に見極めにふさわしい人材が、ロンド・ベルにおるとは思えん・・・・・従って、敵情視察を主とした奇襲の敢行をここに提案する!!」
のろけなども入れつつ、確実に皆の心をひとつの方向にまとめていくその言葉はほとんどひとつの呪術であった。要するに、やるからには最終的に勝たねば意味がない、ということであり、不調な者の手助けするよりは、今後の展開が有利になるように独自の別アプローチにとりかかり、その間に勝手に復調しておけよ、ということだ。
 
さすがにここまで言われれば、一刻も早く合流派筆頭である綾波レイも黙らざるを得ない。もともと黙っていたが。内心でもその提案を認める。精神コマンドなぞいらぬ、と言っていた当人がこうも冷静に状況を分析しているならば。ロンド・ベルとなんの関係もない、と言い放っておきながら、最もプラスになるように考えている、考えられる・・・・
普段の言動からするに、ただのワガママ金銭とは縁が無さそうな没落貴族のお姫様にしか見えないアル・アジフが・・・
皆、少し驚き、ちょっと感動し、大幅に見直していた。
 
 
 
「・・・・・で、そういうことになって、こっちも有り難いんだけど・・・・」
 
 
だが、妙なことに葛城ミサトの歯切れが悪い。おそらく、導き出されたこの結果は首脳部の望んだ結果だったのだろう。パイロット達のように驚いたり感動したりはしていない。ある程度、予想済みの筋書きどおりにいったのだが、城田氏やロジャー・スミスなども微妙に苦みのある表情をしていた。パイロット達はそろって「?」顔である。ロンド・ベルのコテンパ敗北でさえズバッといってのけた葛城ミサトが言いよどむよーな話がこの世にあるのだろうか、と。その中で、渚カヲルだけがその理由を察することができた。
 
 
「あっちも、さすがに今回の敗戦がこたえたのか、頭をよほどひねったか誰か顔の広い知恵者に聞いたのか、同じようなこと考えて、破嵐財閥から覇道財閥通してご指名してきたワケよ・・・・・・デモンベインのお二人を」
 
 
ざわわっっ。作戦会議室がどよめく。”あっち”とはそれは当然。弱小チームから大黒柱、キモである最有力選手を引き抜くとは・・・まるで読売ロンド・ベル。はじめはロボットのダウジング、とかいう怪しげな理由で呼ばれた二人であったがその戦闘キャリアがキャリアである。今までのやり取りからしてこの新生ドロン・ベルのメイン戦力であるのは明らか。デモンベイン強いし。持ち主経由のご指名とはいえ、ここでこの二人に抜けられては・・・言い淀むわけである。
 
 
「うおっ!?姫さん経由?」大十字九郎が喉仏を突かれたような苦しげな声をあげる。
もはやその命令は絶対。なんせ持ち主であり、逆らえばアーカムには帰れない。
覇道瑠璃にしてみれば、大義的にデモンベインがどこの正義部隊に所属しようがどうでもいいのだろうが、覇道財閥にしてみると、そりゃあネームバリューのある方がいいに決まっている。下々の者にはよくわからんが、財閥には財閥同士のつき合いもあるのだろう。そして、覇道瑠璃は覇道財閥の総帥である。ブラックロッジを倒したさすがの大十字九郎にも勝てない相手はいる。
 
「うっひょひょひょひょひょひょひょひょ・・・・・大十字九郎、貴様の時代は終わっ」
拘束する腕の力が緩んだスキを見計らい、そこから逃れたドクター・ウエストが歓喜の涙を流しながら指を指しながら笑い高らかに己の時代の到来を告げようとしたが、
 
「博士、うるさいロボ」
エルザの一撃で沈んだ。早すぎる緑の落日。
 
「今は、ここで次回に引くかオチをつけるか微妙なところロボ・・・・・・ダーリン、どうするロボ(どきどき)」
 
「う、うおお・・・・・そ、そうはいっても姫さんには逆らえねえしなあ・・・・・
もともと黙ってデモンベインを持ってきたのを事後承諾してもらった借りがあるわけだしな・・・・あ」
苦悩する大十字九郎。その苦悩は結論は既に出ているがゆえの情によるもの。断ち切るしかないもの。それを見かねて葛城ミサトが話を進める。
 
 
「ま、まー、なんつーか妙な流れで告げることになったけど、ここはお互い二度手間を省くってことで、了承して。そういうわけで、精神コマンドの封殺原因は、ロンド・ベルの方でも解析してくれるから、こっちは・・・」
 
 
「待て」
デモベぬきこれからのドロン・ベル行動計画を語ろうとする葛城ミサトを凛とした声が制止する。
 
むろん、アル・アジフである。
 
「妾たちはまだ、そのご指名とやらに何も答えていないぞ、それを聞かずして進めるのは無礼であろう、なあ、九郎」
「・・・あ、ああ・・・・とはいえ、なあ、アルよ」大十字九郎も弱り切っている。
アルは姫さんの言うことをとにかく聞きたくないだけだろう。それはもう感情であるから仕方がないが、こっちはそうはいかない。ここで逆らい、覇道財閥総帥の面子をぶっ潰すことになれば・・・・・・・どうなるか・・・・・・うわ、考えたくねえし、執事さんとかライカさんのこともある・・・・今度はこっちが要求を呑む番であろうし、姫さんのこれはわがままという部類のことではない。かなり正当な、大局正義的な判断だろうと思う。
葛城さんもそれを分かっているからこんなカタチの話の進め方をしたのだろうし。
会議室に集まったパイロットの皆も、「それならしかたがない」と納得してくれている顔だ。ただ、ドロン・ベルはやはり独自の路線を往くつもりではあるらしいが・・・。
 
 
ここは・・・・・マスターとして、びしっと言うてやらねばなるまいか。
大十字九郎は腹を決めた。会うは別れのはじめなり、だ。表情を引き締めた。
それは古の魔導書を傍らに従える歴戦の大魔術師の相貌。どこか人形のように美しい
「アル・・・・・」
 
 
言いかけて
 
 
びーっ、びーっ、びーっ、びーっ
 
 
作戦会議室に緊急サイレンが鳴り響く。突然のことあるのでこういうことに慣れていない神名綾人と美嶋玲香は不安のままに棒立ちになるが、他の者はすぐさま動けるように構える。気の早い赤木俊介などは格納庫へ向けてすでにダッシュ。「待たんか赤木!」「まだ何が起きてるか聞いてないでしょーが!」城田氏や桃井いぶきに制止されたり。
「ここに敵襲・・・って感じでもないみたいだけど」惣流アスカが天上をにらみ。
「戦うことになる・・・・・」綾波レイが続けた。「戦わないと、いけない・・・」
未だその往く道が決定されていないドロン・ベルが大急ぎで呼び出されて戦わねばならぬ理由など、今のところひとつしかない。
 
 
「・・・・ええ、・・・・・・ええ・・・ふーむ・・・・・」葛城ミサトがブリッジから詳細連絡を聞いている。
 
 
「まさか、本当にくるなんて・・・・・・世界は広いねえ・・・・・」
珍しく渚カヲルが嘆息した。わずか先の未来、葛城ミサトが何を言い出すのか正確に予見したせいだ。そして、白銀の矢のような疾走で赤木俊介を追い抜いてエヴァ四号機へ。
 
 
葛城ミサトが出した広告にひっかか・・・いや、それを信じてノコノコ指定場所にやって来た在野の正義戦力(新しい仲間の予定)が、様子を見ていたらしい悪党軍団に今現在、”襲撃されている”、というのだ。しかも、何を間違えたか、というかさすがに警戒したのか、ロボットに”乗ってきてない”者までいるのだと・・・。
 
 
・・・・・緊急出撃するしかない。これでもし、自分たちが駆けつける前に全滅させられたら、悔やんでも悔やみきれぬし、やられた方も浮かばれまい・・・・ドロン・ベルの名は北の地に墜ち落ちて、大詐欺師集団と呼ばれるのをまぬがれまい。しかし間に合うか?
 
 
「九郎、そういうわけで話はあとだ!・・・・なんというかいろいろ頭が痛いが」
「そうだな、ちょっといろいろと心配になってくるが・・・・・・応よ!」
 
 
飛行能力のない機体はヒリュウ改で運ぶほかないが、軍艦とは言えその巨躯が空を欠けるにはやはりどうしてもタイムロスがある。
高速で飛行できる機体が先行して現場に駆けつけなければやられる可能性大・・・・
 
 
頼りになるのは秘匿していた飛行能力を解放したエヴァ四号機と、
やはりデモンベイン。能力未知数、奏者も未熟なラーゼフォンはこのような突発事態にはつらい。
 
 
はたして、間に合うかどうか・・・・・?