スーパーロボット七つ目大戦α
<力は必要、必要な力ルート6>
戦力差は6倍であり、邪魔大王国将軍アマソもそう極めつきに無能な将軍というわけでもなかったし、もともと用心してかなり大目に戦力を率いてきたのだから、この戦闘の勝敗は混沌としており必ずしも「正義は必ず勝つ!」とばかりに決まってはいなかった。
だが、割合一方的に勝負が決まったのは、やはり「相手側にこれ以上の増援があるのではないか?」という考えがアマソになかったためであろう。名前どおりに、ちと甘かった。
強力な遠距離武装をもつデモンベインを主軸として、多数の敵を囲ませずにしばらく粘っている間にドロン・ベルの残る全戦力を積み込んだヒリュウ改が到着。思いもよらぬ背後から怒れる飛龍の顎より放たれる主砲を喰らって邪魔大王国軍が慌てている間に、パイロットたちが愛機で次々と出撃、すでに気力が上がりきった状態で戦場に降り立つと情け容赦なく必殺攻撃で挟み撃ち。これで趨勢は決まってしまった。
いくら大軍とはいえ、あくまでこれは将軍の率いる一軍であり、邪魔大王国全軍というわけではない。それに引き替えドロン・ベルの方は全戦力を一時に投入しているのだから負けるはずはなく勝って当たり前、これで負けた日にはどうにもならんぞ、という話ではあるが、戦いはやってみなければ分からないし、この戦闘の様子が悪事は千里を走る悪党ネットワークに与える影響は少なくなかった。邪魔なロンド・ベルがコテンパにされてざまーみろ、これでちょっと大っぴらに行動してやるか、これからの私たちはかなりダイタンにいくわよ〜ん、という状況であったのだからなおさらだ。目障り極まる目の上のたんこぶがころりととれた、ガンが治癒したと思っていたら実は転移していた・・・・あくまで悪党側のビジョンである、立場を変えればこう映るのだ・・・・そのような恐怖と衝撃を油断して春色にウキウキしていた悪党軍団に喰らわすことになる。
そのあたりのことを葛城ミサトはよく承知しているし、ここまできて入隊希望者、まだ正式に杯を渡していない者たちにケガされてもかなわないので、「一体たりとも逃がしはしないわよ・・・・殲滅はネルフのお家芸!」「ネルフが誤解される・・・けどまあ異議なし!」「・・・そうね」惣流アスカ、綾波レイの三位一体、武装要塞都市のテンションも露わに邪魔大王国軍をギタギタにしながらも、(もちろんさんざんに肝を冷やされた私怨などではない、指揮官の判断として、だ。たぶん)入門予定者たちのフォローと保護をロジャー・スミスに頼む。のだが、その必要もなく、巨大ロボットとともにある学生服の少年は十分に敵を蹴散らしているし、一番心配された人型サイズのサイボーグかなにか分からないが、その者たちは怪鳥の背に乗って安全圏にある。
と、いうわけでビッグオーもサドンインパクトで次々とハニワ幻人を貫通させている。
ロジャー・スミスはまだ腰が少し痛いので、代わりにドロシーがレバーを動かしたり。
「す、すまないな、ドロシー」「・・・作業効率的に当然のことをしているだけ」
「なんだか正義の味方みたいだな、俺たち・・・・ヘテロダイン相手じゃないし」
「青山君、正義とか何とか云うより前に、これは道義的、社会的責任よ。果たさない方が恥ずかしい・・・でしょ」
「二人ともそんなこと言ってるけど、ダイ・ガードの動きが良すぎるんだけどなあー・・・・・・というわけでサラリーマンの給料の重みを思い知れ!!本日三発目のノット・バスターああああああああああ!!」
民間企業所有のロボットの割には、パイロットたちの若き血潮のためか、けっこうガンガン前に出ていく出ていくダイ・ガード。
「経験と資金は等価値・・・・、というわけには君たちの場合はいかないね。
まずは経験を積み重ねること、修練を続けること、思うような音色を響かせるようになるまで、ぼくは君たちのそばにいるよ・・・・」
もとはといえば、募集に応じる人員など来るはずもない、ということからさいたまジュピターからわざわざ引っ張ってきたラーゼフォン神名綾人、ついでにミーゼフォン美嶋玲香である。渚カヲルには責任がある・・・・自分の介入がなければ紫東遙に南の沖縄はテラ本部・ニライカナイ島に連れられていたはず。それが幸運かどうかは分からないが・・・
というわけで、戦闘どころか操縦も未だ完全に慣れたとは言い難い二体に経験を積ませる。
いわゆる「レベル上げ」である。
まだ未熟なユニットに経験値を分け与えるには「小隊」を組むのが一番。
そして、ここに小隊名「歌は世につれ、世は音につれ」が結成された!
小隊長はもちろん渚カヲルであり、これで神名綾人と三嶋玲香はエヴァ四号機が倒した敵の経験値を頂けることになった。いってみれば”見て学ぶ”、というわけである。
おまけに美嶋玲香のミーゼフォンには「修理機能」があり、それを発動させることでまた経験値が稼げる。その分、ラーゼフォンよりレベルが上がってしまうが、これはこの業界では”よくあること”である。修理要員がエースよりレベルが高かったりするのは・・・
「あ!レベルあがっちゃった!ねえほら、綾人ちゃん!」
「あ・・・ああ・。よかったじゃないか・・・・」
神名綾人がそれを納得するにはしばらくかかるだろうが・・。
「こ、これではヒミカ様にあわせる顔がない・・・が、このままでは・・・!!
お、覚えていろよ!!」
形勢逆転どころか、殲滅一歩手前でこんなことを言っても遅いのである。哀れ、邪魔大王国将軍アマソは部下のハニワ幻人を全滅させられての敗走。これ以上ないほどの完全負け戦であった。ここでその敗走を見逃したのは、もちろん仕様ではなく策略のうちである。
せいぜいこの大勝利を吹聴してもらわねばならないのだ。恨みを買おうがかまうものか。
「ふん、覚えてもらえるようなツラかどうか、よおく鏡で確認してきなさいってのよ!!
・・・・・ふう、なんとか犠牲者無し、か・・・・」
威勢よく言い返しておきながら、葛城ミサトは小声で本音をもらす。
初の大勝利に湧くヒリュウ改のブリッジであるが、綱を渡りきったからといって作戦指揮官はそんなことを喜びはしない。出来れば、いつだって石橋を叩いて渡りたいのだ。
「やりましたね!!」と若いレフィーナ艦長からしてピンとこないらしいが。
ご苦労様です、と分かっているショーン副長が声に出さずに労ってくれる。
一方的な大勝利になったけれど、一歩間違えて、いや、わずかでもデモンベインとエヴァ四号機の到着が遅ければまた別の結果になっていたかもしれない。あの四人組・・・・いくら変身できたとしてもやはり巨大ロボの相手ではない。今日の相手が割合に小ぶりなハニワ幻人であったから蹴り飛ばせたがもっと重量級、なにより飛行系の敵であれば。ましてやそれが乱戦しているところに出張れば・・・そりゃいくら回避が出来たとしても。
悪いけど、とても戦力には・・・・危なっかしくて見ていられない。
つうより、小学生の女の子なんか連れてくんじゃないわよ!!一体何考えてんだか・・・
まあ、来てくれたのは嬉しいし、調子いいこと言って呼んだのはこっちだからあまり立派なことは言えないが、物事には限度がある。(ハンティング・ホラーを駆るエルザとドクター・ウエストのような”例外”はあるが)直接、その手に悪とか闇とかを触れさせていいような子には・・・見えなかった。
だからこそ、皆、あそこまでの速度が出せたのだ。
”つばさ”と四号機から送られたデータにはあったけど・・・・・つばさちゃんか・・・
まあ、ちょっとご縁がなかったということで・・・・・・
あたしたちみたいなやくざな集団に関わっていいような感じじゃあござんせん・・・・
てめえがロンド・ベルに参戦を断られた時はあれほど湯気を立てたくせに、今度は自分が断りをいれる立場になろうとは・・・・・現金な女と笑って
だが、葛城ミサトがまるで予想もしなかったことを四人組は言ってくるのだった。
べつだん、あそこにいたからドロン・ベルに入隊希望していると限らない。
必ずしもそうとは言えない、なんてことは考えもしてなかった。
戦闘の終結後、ヒリュウ改を着陸させて採用の原野に、ドロン・ベル首領・葛城ミサトは頭の中でうまい断りの文句を推敲しながら彼らの前に降り立ち・・・
「「たすけてください!」」
はじめて顔をあわせたとき、断りの言葉を告げる前に、すでに変身を解いている少女ふたりにそう言われたのだ。なにをたすけるの?戦闘はもうケリがついているのに。
懸命な表情で。その力を求められた、ドロン・ベルのこの力を、頼られた。
理解する。遅滞なく正確に理解せねばならない。この子たちは・・・・・
そのために、自分たちの力を借りようと、この場にやってきたのだ、と。
ふるる・・・・
葛城ミサトは震えた。綱渡りの最中にも平然として微塵も揺るがないこの鉄の女が。
デモンベインは移籍するし、戦力を、力を引き集めることに汲々として囚われてきたが、
まさかこんなことを、こちらの力になるどころか、力を貸してくれといわれるとは思ってもみなかった。社員説明会の会場に借金の申し込みがきたようなものである。(我ながらひでえ例えだとは思うが)・・・・この話はドロン・ベルの今後の行動に大きな影響を与えるだろうことが分かるだけに、大いに危惧を覚え警戒する。
第三者的な視点に立てば「どっちもどっちだろう」という話であるが、ドロン・ベルの首領たる葛城ミサトとしては大いに悩むところである。
「と、とにかく詳しい話を聞かせてもらいましょう・・・・・」
果断で鳴らす葛城ミサトがそれを云うのがやっとだったのは、少女ふたりの瞳があまりにも澄んでいたせいだろうか、それとも・・・・