スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<フィギュア17・今の自分が好きですかルート>
 
 

 
 
とりあえず、四人組と学生服の少年をヒリュウ改の応接室(広報二課の女性陣がそれらしく設えた空いた士官部屋)に通す。取りたてて彼らにケガはないので、そのまま茶菓子などを出しての接待となるが・・・・それにしても、対面する者たちは落ち着かない。
 
 
はっきりいってなんともおしりの辺りがもぞもぞするような
 
 
居心地の悪い空気である。
 
 
事前の写真とは全然違う相手がやってきたお見合いのような
なんとか危ないところで入隊希望者を助けてみれば、それは自分たちの仲間になろうというのではなく、自分たちの力を借りにきただけの「依頼者」・・・しかも「たすけてください」などと・・・・ひどく殺伐な言い方をすれば、あなたたちの用事の手を止めて、先にこちらに手を貸して下さいよ、ということだ。おまけに代償は払えそうにもない。
両手を開いて迎えようとしたら、その相手に目の前でピタッと停止されたような
 
 
外と内との関係性はともかくとしても、(どうせドロン・ベル自体寄せ集めなのだから)
片手間にはできそうもない「やっかいごとをもってきた」にちがいないこの連中(小学生ふくむ)に葛城ミサトはどう対応するか・・・・善人顔してほいほい引き受けてしまえば自分たちの目的が果たせなくなる可能性だってある。
 
 
そういう考えは顔に出る。半分意識的に出しているようなものだが、それをまた向こうも感じ取り、「ああ、ここへきたのは失敗だったのかなあ」という顔をされるとまたドロン・ベル首領葛城ミサトも軍師参謀交渉役のロジャー・スミスも切り出しを迷う。
牽制しあっている、というわけではないのだが、お互い相手に期待していたものが異なっていたものだから、自分と相手に均等に幻滅しながらほろ苦い顔をしてるのだ。
 
 
それでも学生服の少年、バビル2世と、元気よく茶菓子をつまんでいるヒカルという女の子はそんな空気にやられたふうでもなく目の光には迷いがないのだが、まだ自分たちの話す順番じゃない、とばかりに成り行きを見守る態勢。
 
3つのしもべを従えてピンでも十分にいけるバビル2世が自分の話を切り出さないのは、目的が単純ですぐ終わるからである。黙りつつ、実は渚カヲルとテレパシーでこれまでの状況を教えてもらっており、選ばれた少年同士の情報交換を行っているわけだった。
 
 
 
「と、とりあえず、お話をうかがいましょう・・・・・その前に、自己紹介というか、あの変身能力についての説明とかしていただけると、こちらもお話を理解しやすいと思うんですが・・」
しかたなく葛城ミサトが切り出した。四人組のおそらくはリーダーであろう、黒髪の若い男性に向かって。金髪の女性とは同格のような感じもするが、ここはまあ、ベーシックに。腹の中で断りの文句を製造中であることをあまり隠していない顔ではあったが。
ちろ、とさきほどの興奮がさめたのか俯き気味で顔を赤くしているもう一人の少女・・・・つばさのほうに目をやるが、すぐに戻す。シンジ君たちよりまだ小さいのよね・・・・
 
 
「ええ、そうですね。事情の説明より、まずは私たちの正体からお話しましょう・・・・」
変身したところもばっちりみられているのだから今さら隠してもしょうがない、と割合諦めのいい性格なのか、若い黒髪はあっさりと話し始めた。
 
 
「私たちは・・・・・貴方がたの言われる言葉での・・・・・・宇宙人です」
 
 
「あ!DD!つばさちゃんはちがうじゃない。それだとごかいをまねくよ?つばさちゃんはれっきとした地球人で、わたしも・・・・」
すぐにヒカルから反論されたが。
 
「そ、それは今から説明しようとしていたんだ!ヒカル、お前のことも・・・」
クールな外見に諦めも良さそうだが、ちょっとムキになるきらいあり、と。宇宙人青年DDの性格判断をする葛城ミサトとロジャー・スミス。それから、妙なことに口ごもるDD。
 
「物事には順序があるけれど、今は事実を端的に伝えた方がいいんじゃなくて?」
外見そのままにクールビューティーな声で金髪女性が云う。やはり同格の立場らしい。
それにしても、こんな同僚がいたらかなわんな、とロジャー・スミスは内心で思う。
 
「そ、それはそうだが・・・・ヒカルたちのケースは特異なものであるし、僕たちも解明しているわけじゃない、それこそ誤解を与えることになっては・・・」
クールな外見の割には、優柔不断というか真面目すぎるというか善人というか・・・・
宇宙人青年DDの属性は「いいひと」に決定・・・・葛城ミサトは内心で判を押す。
やれやれ・・・ますますやりにくくなった・・・・ついでにためいき。
 
 
DDの説明は要所要所で迷いながら、隣の金髪女性の冷静なサポートを受けながら進んでいく。聞きながら、葛城ミサトとロジャー・スミスの顔がどんどん暗く重たくなっていく。
 
変身能力と宇宙の技術を持ちながら助けを求めにくるだけのことはある・・・・・
 
とてもじゃないが、片手間にできるようなことではなかった・・・・・
 
悩む葛城ミサト。うう、こんなはずじゃなかったのに・・・・厄介なことになった・・・
聞いてしまえば、しらんぷりはできない・・・・バビル2世の超然とした目もなんか怖い。
 
 
葛城ミサトが結論を出す前に、作品紹介を。唐突ですけど、なんせおまけですから。
 
 
バビル2世は水木一郎兄貴の主題歌を聴けばほとんど全てが分かるので、「兄尊」でも借りて聴くこと!。いやー、我ながら完璧な説明だなあ・・・・・昔のアニメソングの歌詞ってのはすごいですなあ。ちなみに、大昔に地球に不時着したバビルという宇宙人の、最も血が濃く出た子孫である。2世というのはそこから。
 
 
さて。
 
 
「フィギュア17(セブンティーン)」ですが・・・・主人公がつばさとヒカルという小学生の女の子とそのコピーだけあって、レンタルする場合、なかなか気恥ずかしいものがありますが、主題歌はアルフィーですし、絵は手抜きが見つからないほど綺麗ですし、北海道ですし、ウルトラマンとミクロマンを足して二で割ったようなものだと思えば手にする勇気も湧いてくる・・・・かな。ところで、これがなんで「スーパーロボット」なんじゃい!という人もいらっしゃるでしょう。これをタネに読者クイズを仕掛けてやろうと思ったこともありました。正解者には参戦ロボット指名権などを賞品にして。やればおそらくまた石龍が勝ったでしょう。わはは。話がそれましたが、タイトルのフィギュアというのは円筒に入った知能のある液体金属リベルスをバトルスーツとして身体に纏った姿のこと。早い話が変身である。金属である。だから、ロボットっぽいのである。ゆえに。まあ、エヴァも人造人間ですし。サイズで云えば、スーパーとはとてもいえませんけれど。
 
さて。
 
主人公である小学生のつばさは、ある日、極悪宇宙生物兵器マギュアを宇宙船で護送していたが事故に遭い地球に不時着、その衝撃でマギュアを北海道各地に逃がしてしまった宇宙人警官DDの捜査に巻き込まれる形でリベルスを使いフィギュアとなり、逃亡マギュアを圧倒的パワーで撃破、自分と飼い犬とDDの命を守った・・・・ところで、リベルスが元の液体金属に戻らず、つばさと同じ姿をとり、自ら「ヒカル」と名乗った・・・・DDのリベルスは破壊され、マギュアの脅威に対抗できるのはフィギュアとなれるつばさとヒカルだけ・・・・
 
一夜明けると世界でいちばんダイ・ハードな小学生になっていたつばさである。
 
巻き込まれたあげくに追いつめられて、マギュアの狩人となる・・・・
 
おまけに、マギュアと地球の土があったらしく、より凶暴強力になっていく地球外生物に対し、妻の死を契機に脱サラしてパン屋を目指して修行中という父親に相談も出来ずに、液体金属娘を親友に、宇宙警官を相棒に孤独に戦う少女。
話が進めば、DDの同僚、金髪女性オルディナがやってきたり、作戦を立てたり新兵器が出来たりするが、基本的にはマギュア退治は肉弾戦である。内気で、転校したての小学校のクラスでもいまひとつなじめないくらいに内気な少女が、ミニサイズの使徒みたいなのとゲンコツやキックで戦うのである・・・ベルセルクのガッツならばともかく・・・よく考えたら、監督が同じとはいえなんとも理不尽な話である。じゃりんこチエちゃんも一目おくだろう。とはいえ、逆にマギュアが知能犯であったら、あっさり純真さにつけ込まれて返り討ちにあっていただろう。腕ずくでどうにかできる相手であるから、なんとかしてこれたともいえる。
 
骨格としては、かなり殺伐としてかわいそうな感じなのだが、これが雪のように生活描写にほっこりつつまれると、観ていて気持ちが淀むということがなく、ああ、フィギュア17だなあ、ということになる。
ほとんどの人がご存じないかもしれないが、石龍には「星の子チョビン」とダブって見える。髪がなびくところといい、自然の中で同化しながら戦うところといい。
それから、各話のタイトルがまたいいのです。
 
 
ちなみに、第一話のタイトルは「今の自分が好きですか
 
 
なるべくなら、ケースにかかれているものは見ずに、画面上でじわっと緑ででてくるのを見るのがよろしいかと。タイトルが見事な先導役というか誘導役というか、いいたいことをきちんとつたえてもらった、という満足感が味わえます。この感覚が、石龍はこの作品で一番好きです。
 
 
DDたちは苦戦しながらも、なんとか各地に散らばったマギュアを倒していたのだが、悪党が豊作である今年のある日・・・・こちらも半死半生になりがらもボコボコにしてようやく弱らせたマギュアをさあ倒そう、というところでなんと横から地球製のロボットにかっさらわれてしまったというのだ!。かっさらったのは・・・・・、
 
 
「ヨミという男の組織です」バビル2世が口を開いた。