スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<斬魔大聖ルート3>
 
 

 
 
「根っこのところは多分、同じなのよねえ・・・」
「確かに。仲間同士でいがみ合うのは時間と労力の無駄ですからね」
 
臨時戦闘指揮所と化した<連絡所>で戦闘の指揮もせずに、のんびり観戦モードの葛城ミサトとロジャー・スミス。そこからモニターされる夜の東京では、昼間の騒ぎを聞きつけて何事かと様子を探りにやってきた悪の恐竜帝国、アンド、さっそく仕返しにやってきたブロッケン伯爵の鉄十字軍を現在進行形でエヴァチームとダイ・ガードチームとデモベご一行が迎え撃っていた。ロジャー・スミスがここにいる、ということは今回、ビッグオーは出ていないということだが、それでも危なさを感じないくらいに、彼らの勢いは凄かった。とても初顔合わせとは思えないほどに。
 
 
「まあ、なんつーか、”うまいタイミング”で出てきてくれたもんだわ、敵さん」
 
 
 
まるで学園ものの王道のごとくに、皆で綾波レイのパーフェクトを待ち望んでいたところのボーリング場を踏みつぶしてしまうという、なんとも「最悪の出会い」を果たしてしまった彼らであり、アル・アジフと惣流アスカを筆頭として、キャラクター的にもその仲はうまくいきようがなかったのだが、いざ敵が現れてみればこうである。しかもジオン軍だのティターンズだの、立派な外面と能書きとで一目では敵だと分かりにくいガンダム系の敵ではなく、もう一目みりゃ「あ、こりゃ敵だな」とか「うわ、悪モンだ、こいつら」だと分かる恐竜帝国やミケーネ帝国が現れてきてくれたことも、幸いした。
 
「わははは。この間の借りを返しに来たぞ、ロンド・ベルよ。今回こそ貴様らを血祭りにあげて東京を火の海に変えてくれるわーー!!」
ブロッケン伯爵など自らの悪辣ぶりをラッシャー木村のようにマイクアピールまでしてくれるのだから、葛城ミサトとしては感謝さえしたくなる。
 
で、ここに「正義」と「悪」との対決の構図が明らかにされる。分かり易く、かつ、その中間などなく、敵か、味方か。どっちかを選ぶしかない。
 
「い、いろいろあったけど、ここは皆で協力して悪党を倒さないか?なあ、アルよ。あいつらどう見ても悪者だぜ?なんせ自分でそう言ってんだから間違いねえ」
これを好機と敏感に察知した大十字九郎は、まだブンむくれている己のパートナーを説得。
 
「ま、まあな・・・・」
パートナーであり、永遠の伴侶である相方の腹のうちなど読めている。
デモンベインを「ウドの大木」呼ばわりはそりゃ確かにいただけないが、あやうく踏み殺された方にしてみればまだ生やさしい罵倒であろう。ま、ウエストと一括りにされたのはちょい哀しいが。それもまたやむなしだ。なんにせよ、こっちが悪い。それできちんと謝るまえに大喧嘩に雪崩れ込んじまったのは、痛恨だった。それが分からないやつではないが、・・・・人を埒っての、おまえにウエストたち込みでもアーカムを出ようというのは
・・・・どうも「誤解」しちまってんだな、こいつ。千年を生きた魔導書にしては初というかそこが可愛いっつーか・・・いやいや、きちんと説明しなかったのがまずったな・・・・・とにかく、苛ついて精神が安定してない。それで着地失敗の大しくじりで実は内心へコンでいるところに、あの子にがーッといわれたもんだからキレちまった・・・・
 
ほんとうは、その言動からはもうどうしようもねえ常識知らずのヤツにしか見えないだろうが、本来のアルは、経験深く頼りになる、いかなる悪にも屈することなく、たとえ一人でも戦い続けようとする誇り高いやつなのだ。・・・・これほど分かり易い悪党が目の前で暴れているのに放っておけるようなヤツじゃない。気位が高いだけじゃ、ない。
 
それを初対面の方々にいきなり理解してもらおう、なんておこがましいことは考えてないけれど、それでもこんないいヤツを誤解されたままにしとくのは、それこそかなしいぜ。
 
茫洋としているようでも、いざとなればこの男はとても鋭敏なのである。
その真剣な想いは目に宿り、語り、アルのエメラルドの瞳を揺らめかせる。
「妾は・・・・・」
言いかけたところで
 
「おおっ!いきなりあのような連中に出くわせるとは!なんたる幸運!今ここに壮大な東方見聞録がスタートしたのである!さっそくデータ収集に向かうのである!エルザ!」
「はいロボ!」
自分に忠実なだけに一番早く動いたのはドクター・ウエストだったりする。魔導バイク・ハンティング・ホラーに二人乗りすると、恐竜帝国とミケーネ帝国に向かってビデオカメラ片手に爆走する!!。
 
 
「・・・・・あいつらを野放しにしとくわけにも、いかねえだろ?」
「・・・・・そうじゃな」
 
「行くか」
「応よ!」
 
 
「憎しみの空より来たりて」「正しき怒り胸に」
「我らは魔を断つ剣を執る」「汝、無垢なる刃」
「「デモンベイン!!!」」
 
 
やはり、決めゼリフは重要だ。アルの機嫌も鬱も一発で吹っ飛んだ。かくいう俺もそうなんだけどな・・・。大十字九郎はひとたび苦笑すると、あとは久々の愛機を駆っての戦闘の高揚に身を任せた。
「おおおおおおおおおおおおお!!!!」
 
 
デモンベインの出撃とエヴァの出撃はほぼ同時。ダイ・ガードがちと遅いのは合体に手間がかかるためである。「この点は考慮の必要があるな・・・・」と城田氏。だが、四体もの巨大ロボットが立ち上がる光景というのはやはり壮観であり、ともすればそちらをよそ見しがちになる赤木たちを厳しく注意しながらも、にじみ出る興奮をおさえきれなかった。
 
 
「あのモヒカン魚みたいな空飛んでるやつが連中の旗艦。ここは場所が悪いから長引くと被害が拡大するわ。旗艦が退けば他の雑魚も退く。あんた達のロボット、空間移動が出来るんでしょ。あれの頭上に乗っかって叩き落として欲しいんだけど・・・・・出来る?
恐竜モドキのほうは命令系統がないみたいだから、頭数の多いこっちで各個撃破する・・・・」
エヴァ弐号機、惣流アスカから敵を蹴散らすデモンベインに通信が入った。通信といっても「ロボット探し」の仕事の連絡用携帯で、それは現在、両手が塞がらないアルがもっていた。
つまり、惣流アスカの指図をアルが受けたということだ。つい先ほど大喧嘩をやらかした同士の通話。大十字九郎は「やべえ・・・・」と思った。まだ葛城ミサトやロジャー・スミスあたりが言ったのなら大人しく聞いただろうが。この次のセリフは予想がついた。
 
「妾に指図するな!小娘が!」と苛烈に言葉を叩きつける・・・・ところだが、その怒声はなく、代わりに「分かった。空間移動はこの機体単独では出来ぬのだが、汝の要望には応えられる。モヒカン魚の旗艦は妾たちで引き受けた」と、えらく冷静な返答で。
 
「ど、どうしたんだ?」山をも砕くデモベチョップで目障りなメカザウルス・バドを叩き落として大十字九郎が問う。アルがそれに冷ややかに答える。
「・・・・我ら単機で一軍と戦えということであろう。共闘の陣など組みたくもないとな。冷静な判断だ・・・こちらも望むところ。あのようなガリガリのやせっぽちども、足でまといじゃ」
 
もちろん、さすがにこの声は通信を通さない。だが、外部には届かない・・・・・はずのその声をとらえた者がいた。
 
「それは違うわ・・・・・」綾波レイだった。
 
魔導書の強烈な思念波動を、電波設備によらずに、人体で直接受信した。分かり易く言うと、テレパシーを読みとったわけだ。
 
これにはアルも大十字九郎もぎょっとした。それは科学よりは魔法の領域で、そして二人は最強の魔導書と魔術師なのだ。
 
「アスカは・・・真剣なだけ。あなたたちの力を評価してる・・・・とても。本物だって、信じたくて、そして、信じた」
 
そうでなければ、初号機、碇君、の居場所は探せない・・・・・。
 
「でければ、自分でやろうとしていたはず。何より、ぼくたちと同じ時に敵に立ち向かったその時から、心はつながっている・・・・そうは思わないかい」
ぎょぎょ、とさらに驚く渚カヲルの介入。なんだなんだ、この童子たちは・・・・・
 
 
「汝たちは・・・・」
「みたいだぜ、アル。あの赤い機体のお嬢ちゃんもプライド高そうだしな。こんな非常時じゃなおさら声かけてこねえって。判断も的確だしな。信用されてるっていうなら・・・」
 
 
それは、単なる願望なのかもしれない。けれど。
魔導書も、魔術師も、願いを叶える為にある。
 
 
「皆まで言うな!それくらい分かっておる。うつけめ!ティマイオス、クリティアス!連続で飛ぶぞ、九郎!」
デモンベインの両脚のシールドを全開にすると、空間を反発しながらぶっ飛ぶ。さながら夜空を駆け登る光翠獅子。すぐさまモヒカン魚こと飛行要塞グールに辿り着き、牙をたてる代わりに一撃を食らわせる。
 
「な、なんだ貴様は。ロンド・ベルめ、性懲りもなくまた仲間を増やしたのか・・・わ、我らに楯突くならば・・・おわっ」
これまで目にしたこともない巨大ロボットの機動性に思わず、自分の首を落っことしてしまうブロッケン伯爵。ちなみに声優さんはドクロベエ様の滝口順平さんである。
 
もちろん、いちいち名乗ったりもしないデモンベイン。
あえていうなら斬魔大聖、ご意見無用問答無用。
「光差す場所、汝ら暗黒棲まう場所なし!レムリア・インパクトおおおおおおお!!」
一歩間違うとオカルト雑誌のような名前だが、威力は絶大。一撃で大破となる。
 
 
「ぐわああああああああああああああっっっっ・・・・・く、くそう・・・・覚えておれ!」ヒットポイントが30%を切ると逃げ出すこらえ性のなさが最近の悪党のはやりである。完全に息の根を止めるには、やはり連携攻撃が必要になる。
 
「逃がすかよ!」だが、グールの頭上に乗っているデモンベインにはそれができる。おまけにグールは空中戦ドッグファイトなど想定してないらしく、自分の頭上を攻撃できない。「いけいけ九郎!やってやれい!!」
「よっしゃあっ!ここは地上に叩き落として皆で取り囲んでの熱き友情のポカポカ鍋料理といくか!!」
アトランティス・かかと落としをかまそうとするデモンベイン。
 
 
「おいおい」パイロットたちの様子を見るためにしたいようにさせて今まで黙っていた葛城ミサトが動こうとした。勢いがいいのはよろしいが、そんなことをして街のど真ん中にでかい飛行要塞が墜落したらどうなるか・・・・・・全ての住民の髪がアフロになるだけではすまないのだ。だが、
 
「ちょっと待ってくれ!!」ダイ・ガードの赤木俊介だった。投網で飛行するバドを捕獲しては潰し、捕獲しては潰し、という地味な攻撃をやっていた。
 
「ここで落とされたら、街は大被害だ!オレたちの仕事は街を守ることだ」
「それに、旗艦が落ちたら逃げるところがなくなって、残りの敵が自暴自棄になって暴れ続けるわよ」桃井いぶきが指摘する。
「どうしてもやるなら、海に落としてくれ。ここはマズすぎる。あんたたちの力量ならできるはずだ」クールな色男で青山圭一郎が、これまたうまい説得を。勿論、ロリではない。
 
 
「そういえば、そうだったな・・・・どうする、アル」
「だが、妾の経験でいうと、この手のセリフを吐く輩はまたしつこく挑んでくるぞ。
やれる時に徹底的に敗北を思い知らせて、恐怖感を刷り込ませてトドメを差した方がいい。その方が被害は最終的には少なくなるだろう・・・・」
 
 
この意見を求めるに適するは、当然、立場的に葛城ミサトである。だが、それをズパッと割り切ってしまわずに、わずかな間をおいて誘ったのは・・・・
 
「いいわ。落として。思い切りやってくれていいから。ただし、場所は・・・・今、あたしたちエヴァ三体の散っている三地点を結んだ、中心点に。そこで三体で受け止めて”プレス”しましょう。それでぺらぺらになったヤツを海に捨てればいい。どう?ミサト」
惣流アスカの言葉だった。
 
「よし、それでいきましょ」即座にゴーサインを出す葛城ミサトに隣のロジャー・スミスが目をむく。そんな無茶な・・・・いやさ、綿密な打ち合わせや高度な計算が必要な連携作業を会ったばかりの者たちに任せるとは・・・・危険すぎた。この女性は・・・・
その危険性に、交渉人の職域を越えようと人としての責任感から異議を唱えようとした、組織では出世しそうもない熱血ロジャー・スミス。「!葛城さ・・・・」
 
「海に叩き落としても、あれくらいのデカさだと、まるきり平穏無事ってわけじゃないのよ。ロジャーさん」
だが、その前に葛城ミサトの視線に射すくめられた。その意志。すぐに、和らいだが。
 
そのおとろしい声は、通信に乗ってこの戦闘に関わる全員の心に楔となって打ち込まれた。
パイロットたちはもちろん、広報二課、整備の人間たち、大河内社長や役員会まで。
威圧された。使徒、神の使いに逆らい続けた女の気迫というものを。ここにニュータイプがいなくてよかった。むろん、形ある魔導書もそれに従う。
 
 
「大丈夫、あの子たちなら。それに、デモンベインもすごく強いじゃなあい?
だから、ロジャーさんも任せて、”お仕事”に集中してください」
 
「ロジャー」
ビッグ・オーで悪と戦うことよりも最優先させねばならない仕事が、彼にはある。
R・ドロシーが彼の判断を必要とする微妙な事項をほうってくる。
この先、どう動くか・・・・・その道を造るのは、現在3名の連絡所スタッフの仕事だった。
 
「と、いう次第なので、ダイ・ガードチームはエヴァの抜けた穴を埋めてもらえます?」
葛城ミサトにダイ・ガードへの命令権も指揮権もない。あくまでそれは戦術アドバイザーの城田氏の仕事である。軒を借りている身でもあるし。
だが、嫌も応もない。エヴァチームもデモベご一行もまた、21世紀警備保障の傭兵ではないのだから。「ダイ・ガード、移動だ」城田氏は指示を下した。それは戦術的にもそうするしかないのだが、それだけではなくそれは葛城ミサトを認めたことでもある。
ゆえに、赤木たちダイ・ガードパイロットも動いた。子供たちを信じながら。
 
 
「アトランティス・かかと落としっっっ!!」
 
エヴァ三体が造り上げるATフィールドのプレート・・・・ATプレートに向かって蹴り飛ばされた飛行要塞グール。海底要塞ザルードを一機で揺らしまくったマジンガーZに勝るとも劣らない怪力である。
 
 
ぺたんこ
 
 
そのパワーと、グール自体の重量と、重力、それらをそれぞれ分け合うかのようにしてエヴァ三体のフィールドは完全に受け止めて衝撃度を零にしてしまった。機体の足下にもわずかな地響きすらも起こらない。その代償としてペシャンコになったグール。まさしくモヒカン魚の干物である。その中のブロッケン伯爵や兵士たちがどのような姿になってしまったのか、想像するとちょっと怖い。まあ、SD化・・・2D化・・・は免れまい。
戦意は完全に0。とにかく、当分、戦闘どころか人前に出ることさええできまい。
殺虫剤にやられて死にかけのゴキブリのようにヨタヨタと逃げていく。親分がこの有様で子分が戦えるはずもない。引き連れてきた機械獣たちも慌てて逃げていく。戦線が一挙に崩壊。惣流アスカの見立ては正しかった。
 
 
「三体がかりとはいえ・・・・デモンベインのパワーを受け止めるとはやる、ではないか」
「ああ!大したもんだぜ。ありゃ、結界の一種なのか・・・見たこともない術式だな」
デモンベインからは感心の声が届くが、惣流アスカの声に自慢めいたものはない。
 
「でもね、これでエヴァの電力が打ち止めなのよ。コードがないからバッテリーと内蔵電源だけでやらなきゃいけないんだけど。だから、早めに決めたかった・・・・あと、お願い」
それがエヴァの最大の欠点だった。電力供給システムが整っている地元ならばまだしも。
遠征に向いていないのである。弱り目の泣き所。どんなに強がっても肝心のエネルギーがなければどうしようもない。ケンカ相手に後を託すなど、惣流アスカのプライドが許さなかっただろうが、ここは曲がるしかない。頼むしかない。なるべく、街に被害がでないやり方で敵を倒してくれ、と。口にはしないが、そういうことを。激しいことをいうが、出来れば戦闘中に車ひとつ、建物のガラス一枚、壊したく砕きたくないようなところがあるのである。その点に一切頓着しない碇シンジに何遍怒ってやったか分からない。
 
とにかく、気位の高い、しかもそれにあわせた実力をもってる人間が、他の者に後を頼むということが、どういうことか、アル・アジフは理解している。ゆえに、答えた。大十字九郎よりも早く。
 
 
「任せておくがいい!!汝の望みは果たされる。かならず」、と。
 
 
「そ、そうだ。任せてくれよ。オレたちに、うん」アルのその剣幕におされていまいち決められなかった大十字九郎。だが、デモンベインは操縦者たちの想いを呑み込み残る敵を爆砕すべく駆けだした。「のおおおおおおおおっっっ!!」あやうく進行方向にいたドクターウエストたちのハンティング・ホラーを踏みつぶしそうになったが、気にもとめない。「ダーリン、つれないロボー!」エルザが泣くが、止まらない。熱き友情パワーを全身に充填した斬魔大聖は、「イタクァ!!クトゥグア!!」氷雪と炎熱の二丁拳銃を召喚するとそれをドコドコ発砲しながら突進する!!。ものすげえ迫力で、すぐにエルザも泣きやんだ。
 
 
「うわ、こわっ!。あんなの敵にまわしたくないわね〜」葛城ミサトが言うのだから。
「ロジャーさんはほんとにいい仕事をしてくれるわ〜、惚れちゃいそう」などと。
 
 
二人のためにコーヒーをいれていたR・ドロシーの手が止まる。ピシ。凍る砂のように。
 
 
(実は四号機は動けるんだけど・・・・・その必要もないみたいだね・・・
この状況ででしゃばるのも野暮だしね・・・・)渚カヲルは白銀の機体の中で観戦モードに移行した。・・・・・彼らなら、シンジ君を探し出してくれるかもしれない・・・・
 
 
これで、あとは恐竜帝国のみ。だが、こちらは指揮をとる幹部もおらず、いかにも三下が様子見に親分に走らされた、という感じで、デモンベインとダイ・ガードの敵ではない。敵が弱いなら居丈高になり強気にもなるが、敵が自分たちの手に負えないほどに強いとなると、・・・・・・・・”用心棒”を呼んできた。しかも、なんと・・・・・
 
 
「ヘテロダイン先生、お願いします!!」
 
 
弱点であるフラクタルノット以外を攻撃すると分裂増殖してしまうという豪快かつ大ざっぱなスーパーロボット泣かせの面倒な怪獣であるヘテロダインが、一体どういうつながりであったのか、恐竜帝国の後ろからのたのたと出現した。ヘテロダインには個体名はなく、何体出てこようとヘテロダインはヘテロダインなのである。一号とか二号とかいう区別さえつけられない。ここらへんも、ヘテロダインの意識のない天災性がうかがえる。
人間には理解の及ばない超自然的な連絡方法でも恐竜帝国は保有しているのだろう。
毎回毎回、ゲッターロボやロンド・ベルにやられているため、「いささか頼りない偵察部隊ですが、今回は”不死身の”用心棒をつけておりますので大丈夫です・・ククク」とかなんとか知恵者が考え出して恐竜帝王に献策したのかもしれない。確かに、ヘテロダイン相手では、それと初めて戦うデモンベインでは苦戦必死であっただろう。電力がゼロになったエヴァのことを考えれば、それは戦況逆転の秘策でさえあった。
 
 
だが、ところがどっこい。
 
 
今までの経験から、研究所だの基地だのにはマークして警戒する恐竜帝国であったが、「民間企業」などにはウロコ一個分の注意もしていなかった。ましてや、それが対ヘテロダインの専用兵器をもっているなどと。
 
 
「・・・あたしたちは別に、見せ場なんか・・・・欲しくないけど!青山君!」
ナビゲーターの桃井いぶきがフラクタルノットの位置を算出する!。
「・・・かといって、こんな時は決めるしかないよなあっ・・・・!赤木!!」
機関士の青山圭一郎が腕への供給パワーを最大限に高める!。
 
 
「おおおお!!ノットバスター!!いけえっっ!!」
ヘテロダインに駆け寄ったダイ・ガードが腕部に装着したノットバスターでフラクタルノットを一気に貫く!!なんだかんだとサラリーマンでも「!」マークが一番多い!!
ぷしゅー、それでヒトデ型ヘテロダインは消滅した。
 
 
ヘテロダイン先生までが一撃でやられては勝ち目はない。一目散に地底に逃げ帰る恐竜帝国軍団。だが、正確無比のデモンベインの射撃から逃れ得たものはいなかった。
 
完勝である。
 
 
10倍以上の敵の数を考えると、その勝利は奇跡の価値があった。
 
が、それだけに完膚無きまでに敗北させられた悪党は、ますますここを目の敵にするだろう・・・・スーパーロボット軍団の重要拠点の一つだと判断されてもおかしくない。
それを考えれば、パイロットたちに負傷もなく機体も大破しなかったこの大勝利を、「絶大な宣伝効果ですな!」「いやはやまったく、二度も東京を守ったのですから」驚喜乱舞する役員会のようには手放しで喜べない大河内社長であった。
 
「いつまでも彼らがここにいるわけではない・・・・」
 
 
 
彼らはあくまでの彼ら独自の判断で動くだろう。それを妨げることはできないが、ダイ・ガード一機で軍団となって押し寄せる悪を阻むことなどできはしない・・・・・
そうなれば赤木たちは・・・・・・・・
城田氏も同じことを考えていた。軍人である彼には、葛城ミサトの考えることが分かる。
いや、目的のためには他のことを情け容赦なく切り捨てられる精神の強さが、理解できる。
 
 
それゆえに、葛城ミサトの計画は予想だにできなかった。ロジャー・スミスがビッグオーで出陣しなかったというヒントはあったものの。
 
 
だけれど、そのために、彼女の真価を理解することが、できた・・・・・
 
 
そんな葛城ミサトの今後の行動計画とは・・・・・・