スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<世界にひとつだけしかないロボ ルート>
 
 

 
 
たとえ自分がじり貧であろうとも、頼ってきたものをてぶらで帰すことはない・・・・
 
 
葛城ミサトの器は、指導者というよりはどちらかというと大侠客というか親分というか、個性豊かな部下に恵まれていないととてもやっていけない凸凹のあるものである。
 
 
巨大ロボのレンタル・・・・・
 
 
ああはいったものの、そう簡単に手配できるこっちゃない。いくら有名なレンタル会社でも巨大ロボまでは取り扱っていないだろう。
その相手に今、何が一番必要なのか見抜く眼力はいいとして、そこから先のハードルを越えるのは強い脚力と常日頃から蓄えられてきた体力。思いつくのもそれなりにセンスが必要になるが、口でいうだけならば誰でもできるのである。
だが、幸運といえるか、彼らには前例があった。こういう無理を押し通すノウハウが。
いやさ、そんなノウハウを持つ人間が幸運なことに乗艦していた、というべきか。
もつべきものは人材である。やはりパイロットだけで戦いはできない。
彼らが現在母艦にしているこのヒリュウ改にしても、もともとまるで関係ないところを強引に出向いていって関係を造り上げたのだから。
不可能を可能にしてこそ、プロの仕事、とどこかのビジネスコマンドーも仰っている。
 
 
その無茶な仕事を頼まれたのが、ダイ・ガードの戦術アドバイザーであるはずの城田氏とテラの紫東遥である。一人は根っからの軍人であり艱難辛苦を越えるのは得意であるし、もう一人は特務大尉として無茶な命令には慣れている身ではある・・・・が、
 
 
巨大ロボのレンタル・・・・・・
 
 
そりゃあいくらなんでも無理がすぎるのではないか、と。しかも、追加注文として「訓練時間もあんまないから、操縦はなるべく簡単なやつ。宇宙人でも小学生でもできそうな」
ときている。天下一品の格闘戦能力と爆撃機についていける航続力を両立させろと厳命された零戦なみの厳しさである。云うてみればこういうことだ。「でかくて頑丈でなおかつ操縦の簡単なやつ」・・・・・ドラえもんからビッグライトでも借りてラジコンロボットを巨大化させればいいのだろうか・・・だが、それがかなり高位にある必須条件なのだ。確かに使えないものをひっぱってこられても仕方がない。
だが、巨大ロボットには専属のパイロットがつきものであり、それらは対になっていて、簡単に引き離せるものではない。軍隊式の誰でも使える的設計思想によっていない、むしろナンバーワンよりもっともっと特別なオンリーワンである。世界にひとつだけしかないロボであり、それを扱える人間、パイロットもまた。だがまあ、同じ人間が使うものであるからカンどころのある者ならばさして時間をおかずに扱えるようにはなるだろうし、どうしても無理なら、操縦席をまるごと取り替えてしまうこともできる。Gガンダム系のモビルトレースシステムならば非常に都合がよろしい。もし、手に入れる手段を選ばずに強奪したとかいうならば、オンリー性を剥ぎ取っててめえらの個性に調教するだけの話。ごくごく話をシンプルにするならば、葛城ミサトの話も無理でもないのだ、が・・・・
 
 
そう簡単にいかないのは、そんな特別な代物を余所者にホイホイ貸してくれるはずがない、ということだった。そりゃあそうだろう。パイロット込みで「あなたたちの力を貸してください」というならまだしも「必要なのはロボだけ、パイロットいりません」とかいえばそれはケンカを売っている以外のなにものでもない。
もちろん、葛城ミサトもそれでいけ、それでオーケーと云っているわけではない。
広い世の中、探せばどこかにそんな都合のよい条件を待っているロボもいるだろう、と。
そんなロボをレンタルしてきてください、と。こう二人に頼んだのだ。
 
 
おそらく、いるとしても、そんな都合のよいロボは「世界にひとつだけ」であろう。
 
 
いちいち明言はしないが、当然その機能は”そこそこ”のものを要求しているわけで。
ドロン・ベルにおける”そこそこ”とは、「必ず一軍級」。ベンチを温めさせている余裕はない。旧型のモビルスーツを拾ってきて「はい」というわけにはいかない。
 
 
世界は広いが・・・・そんなド無茶な要求を拾えるほど広大だろうか・・・・
 
 
かといって真っ向から「無理ですよそりゃ」と言い返せないのは、実例があるからだ。
このヒリュウ改。本来なら元来ならどう考えてもドロン・ベルなどの母艦になっているはずがない。葛城ミサトとロジャー・スミスがそれを実現させている以上、「不可能」などというのは二人の沽券にかかわる。実戦に出ない裏方としてパイロットたちを支えようというならば、この無理も実現させるほかない。
 
 
「綾人くん・・・・・」紫東遥はさいたまジュピターの時間の壁に遮られて十年以上の年齢差がついた同級生を思いながら、必死で情報を検索する。世界にひとつだけしかない。
 
 
「パイロットが負傷して機体が空いているというケースはあるのだが・・・・
操縦系の問題がな・・・」
パワーアップして、いらなくなった機体もこのご時世だとすぐにロンド・ベルや軍隊にもらわれていく。そんなルートをもたない新興勢力のドロン・ベルとしては隙間隙間を探していくほかない。また、よさそうな機体が見つかったとしても、やはり操縦系の問題があった。宇宙人や子供でも動かせるとなると・・・・これはかなりの難題であった。
頭の痛い城田氏だが、なんとか探し求める。そのあとで契約交渉もせねばならんのだ。
あまり時間はない・・・・・・おそらくは、世界にひとつ。世界にひとつだけしかないほどに都合のよいロボを・・・・
 
「うーむ、いっそ操縦言語を考えなくてもいい分、国内に特定して考えない方がいいのかもしれないな・・・紫東大尉」
巨大ロボといえばやはり日本であるが、こうまでアレな条件付きとなると隙間探しでつついていくより超広大範囲を地引き網で捉えていく方が正解かもしれない・・・・城田氏は戦術を切り替えることを相棒に提案した。休憩無しのぶっ通しでやっているが、配慮の必要もないほどにテラの特務大尉はタフであった。そして、それを支える意志が強い。
 
 
「・・・・・・」
紫東遥からの返答はない。じっと高速で情報が流れるモニターを見つめている。
「何か」を見つけたらしい。目の光が違う。城田氏はそちらのモニターに目をやった。
 
 
三千年委員会
文明保全財団
千丈市・・・
 
 
なにか怪しげな言葉が並んでいる画面に・・・・・
 
 
その「巨人」は映っていた。市街を移動する鋼鉄の神・・・・圧倒的な重量感。
対ヴォルガーラ・セラフィム級格闘決戦型兵器・・・・「ヴァヴェル」
 
 
疲れ目のせいでなければ、ゲーム機のコントローラーに”非常によく似た”コントローラー「だけ」で動かされているように見えた。
 
 
「・・・・・・・・これだ・・・」