スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<巨神の従者と獣飼いルート>
 
 

 
 
・・・・というわけで、我々ティターンズはなんとしても地球圏の全戦力の統一を成し遂げ宇宙よりの外敵をなんとしても排除せねばならないのである!」
 
 
ティターンズの総大将、ジャミトフ・ハイマンの演説放送が終わった。ティターンズの全支部で放送されるそれを、全員が直立不動して感動の涙を滂沱と流しながら戦闘意欲を大いに高めているところもあれば、戦えれば文句はないというものの、ワシ鼻の総大将のあまりの徳のない言葉にあきれているところもある。大義を信じているかどうかの問題であるが、なんにせよ、こういうことを日中堂々怖いものなしにやれるあたり、ティターンズの支配領域の拡大度がよく分かる。もはや正面切ってジャミトフ・ハイマンに文句が言える人間は世界中さがしても数えるほどしかいない。言うこと自体は軍人としてこれ以上ないほど正しいからである。建前という最強の盾をかざしながら膨れ上がっていく巨人。その姿はRPGのラスボスの変身を思わせたが、それを止める者は誰もいない。
 
 
巨人は巨神となり、その重みゆえに階梯を踏み外して、魔王となる・・・・・
 
さらに悪いことにジャミトフの周りにはイエスマンしかおらず、組織的ストッパーがおらずに、イケイケゴーゴーとなればどこまでも暴走していくことだろう。終わることのない巨神のマラソンを始めようとしている。もっと最悪なのは、地球圏の戦力の統一が終わるまでは自分たちは宇宙人とは戦わないんだもんね、とまあこう言っていることだ。やられてもやられてもじっと我慢する、耐える・・・・高倉健がやるのなら絵になるが、一応軍隊であるティターンズがそれをやってはなんのための存在なのか揺らいでくる。
最後に勝てばいいだろう、というのがティターンズ幹部の言い分であるが。
もちろん、その中間部には「自分たちが」という一句が入る。
 
 
悪党は賢いので、ティターンズがそのような体質であることを早々に見抜いて、そこだけは手をださずに他の美味しいところを先回しに食べていく・・・。当然、そのツケは他の正義軍団にまわってくるわけである。そして、戦いに疲労疲弊したところを、うしろからティターンズが”パクッ”といって自分の腹におさめてしまうわけだった。
 
 
だが、たまには、そううまくいかないこともある・・・・・
 
日本国・北海道小樽でのヒリュウ改・・・・
 
同じく日本国・千丈市での機人・ヴァヴェル、ライオール、グラングの三体・・・・
 
 
立て続けて二件、失敗してしまったティターンズのジェリド・メサ。実力エリート主義であるティターンズにおいて、この失点は大きい。戦艦相手ならばまだ言い訳ができても、たかがロボット三体の奪取に失敗するとは・・・・この話が広まれば、ティターンズの「地球圏全戦力統一計画」にも大きな影響が出てくるだろう。なんせ巨大ロボットのパイロットというのは調子に乗りやすい生き物であるから。甘く見られてはしつこく反撃してこちらのいうことを聞かなくなってくるだろう。
 
 
戦闘艦アレキサンドリア改
 
 
「・・・・・・・・」
演説が終わってもモニターを食い入るように見つめるジェリド中尉。
 
目が血走っている。凍死寸前のグンカンドリのように。
今度しくじれば、見せしめとして一平卒に落とされるのは間違いなし。そんなことは彼のプライドからすればとうてい許容できるものではなかった。なんとしても千丈の巨大ロボットを取り上げてやらねば・・・・・・・Zガンダム、カミーユ・ビダンもいないのになぜか追いつめられているジェリドであった。
 
 
「今度は・・・・・・今度こそは・・・ッ」
喉元からしぼりあげるように井上和彦氏の声で。
 
 
「ジェリド・・・・・大丈夫よ・・・・・」
その隣のマウアー・ファラオが落ち着かせるように声をかける。作戦の指揮官がこれではうまくいくものもいかなくなるわ、などという、こなれた言い方ではジェリドを刺激するので母親のように、姉のように接する。こういった賢い、金の草鞋を履いてでもさがすべき姉さん女房のマウアーがいるので、ジェリドも落ち着きを取り戻していく。
 
 
「フン・・・・・」
その様子をバカにしきった目でみて、なおかつ鼻で笑うのはヤザン・ゲーブル。
今回は、ロボットの奪取に失敗したジェリドの補佐役であり、実験機や新人などを組み入れた補充戦力、「ヤザン組」の組長役であった。ジェリドが今度も失敗しようがどうしようが知ったことではないが、相手と自分の連れてきた戦力差を考えれば、失敗のしようがないので余裕を通り越して退屈であった。退屈なのでジェリドの足でも引っ張ってやろうかとも思ったが、一応、自分の組員も見ておかねばならないので今回はかんべんしてやる。
 
 
ジェリドとマウアー、二人の世界をぼーっと見ている新人パイロット・・・・
 
「スクール」出のゼオラ・シュバイツァーである。ヤザン組に新しく入れられた人員だが、実戦経験もなく、まだ卵としかいいようがない。訓練成績はなかなかのものだが・・・
百式オルタ、「白式」に乗せてある。
 
 
その隣でゼオラの様子に首を傾げているのが同じく「スクール」出のアラド・バランガ。
ゼオラもまだ少女としかいいようがないが、アラドはそれ以上の子供だった。
大義や使命感や持ち前のプライドなどで背に芯をいれたようなゼオラに比べると、どうも腹がすわっていない。それとも器がでかいのか。百式オルタ「九十九式」に乗せてある。
 
 
「おい、指揮官殿をそうまじまじと見るもんじゃないぞ、なにか企んでるんじゃないかと勘ぐられるぞ」
人の悪いニタリとした笑顔でゼオラとアラドに声をかけるヤザン。さすが気にくわない上官であるジャマイカン・ダニンガンを謀殺した”経験”をもつ男である。
 
 
「はっ!ヤザン隊長、す、すいません・・・」
おそらくは少女らしい空想に耽っていたらしいゼオラは、ヤザンにあわてて敬礼をする。
 
「企むったって、そういうのは上の、偉い人たちの仕事なんじゃないっすか。ゼオラやオレにはできっこないですよ」
別に含むところはないらしいが、現状のティターンズを正確に射抜いている。
 
サウルが小石を投げたように。敬礼もせず、邪気のない顔で笑うアラド。
 
「なっ!?アラド!な、なんてことを・・・・・!!す、すいません、ヤザン隊長」
しかしゼオラが大慌てでアラドの頭を押さえにかかる。
 
「いいじゃねえか、確かにアラドの言うとおりだ。まさかジェリド指揮官殿もお前たちみたいな熱心で優秀な若い奴らを疑うほど器量は狭くねえだろうよ」
 
「ほーらな、ゼオラ。隊長もそう言ってる。いったい何怒ってんだ・・・・・?」
「ええ・・・・・でも・・・」視線を迷わせ、顔を赤くしていくゼオラ。
 
 
「だがなあ、アラド。そんなうちから女の尻にしかれるのもどうかと思うぞ。女を乗りこなすくらいでなきゃあ、な」
 
 
「のああっ!?いやオレはそんなコイツとじゃなくて!」
「隊長そんな!アラドとはただスクールが心配が世話で!」
 
真っ赤になりながら高速でよくわからないことを互いに言い合うアラドとゼオラ。
 
 
適当にからかって、退屈を撃墜して出ていく、ヤザン・ゲーブル。
「さぁて、と・・・あいつらはいいとして、だ・・・」
 
サイコガンダムMk2のパイロット、強化人間の調子を見に行く。新人は新人以上の何者でもないが、こちらのほうは人間以上ときている。しかもその強化のされ方が・・・・
信頼できるラムサス・ダンケルの二人に監視させているが・・・