スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<大切な機人はいますかルート>
 
 

 
 
「なんだとう!!もういっぺん言ってみろ!!」
 
 
もともと立っているトサカ頭をさらに尖らして怒髪天のジェリドである。
気の荒い闘鶏に日本酒をぶっかけてさらにドーピング注射したかのような猛り方である。
 
 
「聞き取れなかったのならば何度でも言おう。・・・・・機人は宇宙人によって”誘拐”されたのだ。よって、ここ千丈にはいない」
冷静に言い返すのは文明保全財団のヘルマン・ウィルツ博士。機人の操縦者である理事長たちをやられて頭にきているのは同様だが、やはり科学者は違う。信念が違う。資金難やら委員会の解散やらさまざまな試練を乗り越えただ一人千丈市に居残って機人の完成に心血を注いできただけのことはある。意志の強さが違う。さすがに声・小杉十郎太氏だけのことはある。
 
 
ティターンズが千丈に再び来襲した。今度は十分すぎるほどの戦力を整えて大いにやる気になったところでの進撃である。機人三体を無理に動かしてきたところでとても太刀打ちできる戦力ではなく、さらに伏兵等による邪魔もなく、あっさり千丈入りできた。
それから、結局ヴァヴェルなど機人たちの出迎えはなかった。操縦者はいまだ病院から出て来れない重傷であるのは調査済みであるし、操縦自体は簡単でも、操縦者を狙われるという単純すぎる弱点を解消せぬまま代わりを立ててくるほど愚かではなかったわけだ。
 
 
「フフン・・・・・こんなことならヤザンの手など借りる必要はなかったんだ」
敵はすっかり意気消沈して諦めきっている。ひと脅ししてやれば、降伏、白旗をあげることだろう。優越に表情を歪めるジェリド。ここらへん、大将の器ではないのだが。
隣のマウアーはその油断をたしなめようとしたが、確かに今度の千丈は静まり返っており、なおかつ文明保全財団側から通信が入っている。・・・・ジェリドの言うとおり、それが素直に機人を引き渡す、という連絡であるなら、無駄な攻撃はしなくてすむ。
正直なところ、ヤザン達をジェリドでは制しきれない。不必要な破壊行動を思うように繰り返し、それを全てジェリドがかぶることになるだろう。それが回避され、ほっとする。
 
 
 
だが、通信を開き、フタをあけてみれば、これである。
 
機人ヴァヴェルをはじめとする三体が、謎の宇宙人により誘拐、つまり、奪われた、と。
だから、千丈にはいないのだと。
 
 
「ウソだ!そんな子供だましで誤魔化されるとでも思っているのか!!」
 
確かにジェリドならずとも信じがたい話だ。だが、宇宙人が最近、ロンド・ベルをコテンパンにして勢いをあげているのは事実・・・・「面白いじゃねえか・・・」ヤザンが本当に愉快そうに言う。
 
 
「そう叫びたい気持ちはこちらも同じだ。だが、宇宙人の科学力は巧妙かつ絶大でな、こちらの監視警戒システムはすべて沈黙させられて、機人たちが朝日の中を堂々と歩いていっても誰も気づかずだ・・・・・証拠として、道路にとりつけてあるカメラからの映像をそちらに送ろう。小細工してあるかどうか、存分に検証してくれて構わない」
 
 
転送されてきた映像には、メタリックな光を放つ人型の・・・・まあ、どのような民族であろうともこんなのはいない、少なくとも地球人じゃあないだろうなあ、というのが三人、それぞれ、ヴァヴェル、ライオール、グラングに乗っかってコントロールしている姿が。
日付は今朝の話。まさか機人、ロボットを外に持ち出すなどと思ってもみなかったため、千丈にろくな監視もつけていなかったのが仇となった。
 
 
「くそ・・・・・」
ロボットが自身の意志に目覚めて逃亡を図ったロードムービーのようにも見えないこともない一連の映像を見ながら歯ぎしりするジェリド。確かにこれを見る限り、千丈に戻ってきていない。
 
 
「我々もむろん、手を尽くして創作したのだが、未だ発見できていない・・・・・
おそらくは宇宙人の宇宙船にでも収容されたのだろう・・・・・」
 
 
「そんなバカな話があるか・・・・・・」
ジェリドの語調は弱くなっていく。バカな話だとは思いつつも、自分たちがやるようなことを宇宙人どもがやってもおかしくはない。ティターンズは過去に”ゲスト”やら”エアロゲイター”やら宇宙人と戦ってきた経験もあり、宇宙人が地球の技術を欲する可能性を理解できた。そして、なおかつそこに、ヘルマン・ウィルツ博士のダメ押しが。
 
 
「そのような事情であるのでな、先日の不幸な邂逅はこちらも水に流そう。宇宙人に地球侵略のために使用されるよりは、同じ地球人に使用してもらった方が機人も喜ぶだろう・・・・そういった事を踏まえて、だ。ティターンズのジェリド中尉殿」
 
 
「な、なんだ」
 
 
「理事長が入院中のため、私が代理として条件を出そう。もし、ヴァヴェルたち機人を宇宙人の手から取り戻してくれれば、君たちに機人の使用許可を出そうではないか。先日の要求通り、宇宙人との戦いのために役立ててくれ」
 
 
「な・・・・なに?」
 
 
「ティターンズ、連邦軍の存在意義はそこにあるのだろう?。状況が変われば、先日のような強引極まる徴発に応じざるを得ない・・・・・・これも、地球のためだ」
 
 
「くっ・・・・・くくく・・・・」
ジェリドの顔が真っ赤になっていく。まるで茹でジェリドだ。ふざけるな!と怒鳴りつけてやりたいところではあるが、それで潰れるのはこちらのメンツだ。部下の目もある。
だが、これだけの戦力をもってきて手ぶらではすまされない・・・・・
腹いせにこの千丈の市街を焼け野原にしてやりたいところだが・・・・・
 
 
「ガマンは身体に悪いぜ、ジェリド〜」
ヤザンの一言がさらに腹の煮え具合を加圧する。
 
 
振り上げた拳をどこにおろせばいいのか・・・・・そこらへんにカミーユのゼータが飛んでいればすぐそちらに叩き落としてやるものの・・・冷静とはとてもいえない炎のような病的な想念の中で悶えるジェリド。
 
 
「報告します!」
そこに、狙いすましたかのように・・・・・三体の機人が、現在はキャンベル・ボアザン・バームの三星連合軍に乗っ取られているはボルテスV基地、ビッグファルコンに向かって進んでいる、と発見の報告がきた。そこらへん、やはりティターンズはきっちりとエリート部隊なのだ。少々指揮官が短気でもやることはやる。民間とは比べものにならぬ索敵速度である。
 
 
「ほほお・・・・それはすばらしい。では、がんばって宇宙人の手から機人を取り戻して地球のために使ってくれたまえ」
ヘルマン・ウィルツ博士はモニターごしに激励を送って早々に通信を切った。
言いたいことは全て言い、結局降伏も白旗もないのだから、ジェリドはいいようになぶられたようなものだが、言い返す間もない。この怒りをどこで晴らすべきか・・・・・
 
 
迷っているヒマはない。
 
 
なんせ手ぶらで戻るわけにはいかんから、ロボットは欲しいが、かといって、現在時点で三星連合軍が占領しているビッグファルコンは、ハッキリ言ってティターンズが立ち入り出来る場所ではない。あんな物騒で厄介なのはロンド・ベルにやらしておけばいいのだ。
ジェリド自身はそう考えていないが、上層部はそんなセコいことを考えているので、その領域に立ち入り戦闘ともなれば、判断ミスの無能指揮官との烙印を押される。小樽の戦艦の件、そして千丈のロボットの件でしくじっている自分が許される類のミスではない。
だから、大急ぎで、機人が危険領域内に入る前に・・・・・回収せねばならない。
まあ、連中の方から使ってくれ、と言ってきたのは少し気分が良かったが。
 
同じ地球人と戦うより宇宙人と戦う方が厄介だからな・・・・・凄まじいジェリドの本音である。大急ぎで部隊を転進させる。
 
 
まさか、この時点で何者かの掌の上に乗ったなどと、思いもよらない。