スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<ゆかいなマジンガー一家 ルート>
 
 

 
このところ、いちおう主役である碇シンジがまったく出てこないので、どうなっているのでしょうか?というご意見をいただきましたので、ちょいと時間をずらして、今回は彼の行動を追うことにします。
 
はあ?碇シンジが主役う?全然出てこないのに、主役もヘチマもないだろう、という方もいらっしゃるでしょうが、これはサブルートよりの選択を選んでいるので葛城ミサトたちドロン・ベルの物語が前面に出ているだけのことで、ほんとうは、真実は、ふつうのスパロボみたく、ロンド・ベルが主役の<熱血>ストーリーなのである!!。
 
 
さて
 
 
グレートマジンガーのパイロット、剣鉄也に拾われてロンド・ベル入りを果たした碇シンジはそのままアルフィミィとと共に、マジンガー一家に入れられることとなった。
機体の乗り換えなどは当然できないが、どういうわけか、剣鉄也が碇シンジを気に入ってしまい、弟分のように扱うので他の小隊が手出しできなかった、というのが実状。
ダメージ4000以下は全てチャラにするというATフィールドをもつエヴァはあちこちの部隊が欲しがったのだが、剣鉄也の割れた顎の前には誰にも口に出せなかった。碇シンジたちの方も、はじめて出会ったスーパーロボットが剣鉄也のグレートマジンガーであったから、さして疑問ももたず、まあ、そんなものかな、と初めて親鳥を見たヒナのごとく、偉大な勇者についていくことになる。
 
 
そして、俗に言う「マジンガー一家」、とは、
 
グレンダイザーのデューク・フリードを長兄役として、サポートメカのマリンスペイザーに搭乗するそ牧葉ひろみ、ドリルスペイザーに乗るデューク・フリードのほんとの妹、グレース・マリア・フリード、グレートマジンガーの剣鉄也が次兄役として、ビューナスAの炎ジュン、マジンガーZの兜甲児を三兄役として、ダイアナンAの弓さやか、ボロットのボス、ヌケ、ムチャ・・・・・
 
ときて、最後に末弟、末妹として、エヴァ初号機の碇シンジとベルゼイン・リヒカイトのアルフィミィ、と、こうくる。
 
 
はっきりいって、ロンド・ベル中でも最大戦力を誇る一家だった。修理役補給役を多く揃えて、この一家だけでも十分に作戦行動が行える。まさに、「動く城」である。
 
これだけの戦闘力を誇りながら、困ったことに、(困るのはブライト艦長やらアムロ・レイやらロンド・ベルの首脳部なのだが)、これだけの戦力を揃えながら、なんとこの一家の中、誰一人として軍人ではない、という。文官の統制など受け付けない種類の人間だけで構成されている。ひたすら悪を叩き潰すために、この一家はある。ロンド・ベルにおいても精神的主柱、シンボルでさえある。新人の分際でいきなりここに入れたのは、幸運といえるだろう・・・・か。にしても、”あの”剣鉄也の弟分である。同情してくれる人間は数多かった。ブライト艦長たちは「どうしても向かないと思ったら、彼らを説得するにやぶさかではないぞ・・・」などと言ってくれたが、初参戦であるところの碇シンジとアルフィミィは、その心も知らずかまわない。二人の少年少女の外見が外見であるから、甘やかすつもりはないが、みすみす鋼鉄神経のマジンガーどもに貴重な戦力、繊細なパイロットを潰されるのは見ていられなかったのだが、意外に、エヴァ初号機とベルゼインは機体の強力さもあろうが、彼らと適応してうまくやっていた。言葉はいらない、ひたすらオレたちについてこい!!式のスパルタ実戦方式のコミュニケーションであったが、スクラムを組みつつ敵の攻撃からの壁役となるのは、理屈ではないマジンガー一家の心意気を少年少女に沁み入らせた。
 
 
かといって、激しい闘魂を即座に燃焼する兄貴分たちの性格そのままうつったわけでもなく、碇シンジは碇シンジそのままで、アルフィミィはアルフィミィらしく、「ここぞ!」という敵ボスとの戦闘では、二人合わせて一気に精神コマンド「脱力」をかけて、相手からやる気と防御力を奪って、兄貴分たちの攻撃で逃走も許さずに一気に撃沈する、というこれまでの一家にはなかった、新たな戦闘パターンを創り上げるに至った。これまでは敵の残りHPなど計算せずにひたすらガンガンやってきたので、「う、このままではやられる、にげるぞっ!おぼえてろー」的に敵の母艦に逃走を許してしまっていたのだが、そういうことがなくなり、資金やアイテムの回収率が大幅にアップした。もとより、そういう細かいことが気にならないマジンガー一家なのであるが、二人の加入によって、一家の財政は大幅に潤ったわけだった。一家の女性陣もわりあい、おおらかというか、相手の男性に影響されているのか、細かいお金にこだわらなかったから、碇シンジの意外な勘定感覚に感心していた。むろん、入手パーツなどが増えれば、ボスたちも大喜びである。
 
 
「癒し系マジンガー」「のほほん鉄壁」「まちがいガサラキ」などと、ロンド・ベル内でも一家の新人の認知が広まってきたころ・・・
 
 
 
「特訓だ。特訓をするぞ!」
 
 
と、剣鉄也が言い出した。艦内食堂でそろって夕飯を食べているときのことである。
 
勝って兜の緒を締めよ、というわけでもない。剣鉄也はいつもこんなのだ。だからマジンガー一家は強く、レギュラーを勝ち取れるわけなのだが、ついていくのは大変だ。
ボルテスVなどが新たな武装を追加するため、その間に他のパイロット達には休暇が与えられることになった。パイロットも人間であるからたまには休みがなければ倒れてしまう。
休むこともパイロットの仕事だ、というわけで、市街などに繰り出して生命のリフレッシュをする・・・・・・そんな時間に、「特訓」・・・・・剣鉄也という人物の性格が非常によく分かる話である。彼の弟分に見込まれた碇シンジが同情されたのも、ここらへんだ。
 
 
「うーん、そうだな。敵の力は増大している。これまでは調子よくきていたが、ここで僕たちも気をぬかずに、これまで以上に力を尽くし、新たな技を開発しなければならないだろう」
なおかつ、ここで長兄役のデューク・フリードも、次兄の意見に大いに賛成。こなれた言葉でいなしてくれるどころか、思い切り目を輝かせている。なんせフリード星の王子様だけあって真面目なのだ。そこらへんが人徳の源であるのだが、正直、常に敵の矢面に立つ連戦であり、兜甲児や女性陣、ボス、ヌケ、ムチャたちは「かんべんしてください」であった。だが、長兄役と次兄役のリーダーシップは非常に強力であり、言ってることも人類的に、正義的に、愛的に、非の打ち所がないくらいに正しいので、反論できない。
自分たちが強くなれば、その分、仲間の生命が守られる、というのは思い知っている。
 
 
それゆえの・・・・「休暇に特訓」
 
それゆえに・・・・「休暇で特訓」
 
 
それなのに・・・・「休暇が特訓」
 
 
うわー、いやだなあ、と。敵の悪軍団や、ロンド・ベルの仲間から敬意を込めた揶揄で、鋼鉄の神経をもったマジンガー一家、と呼ばれつつも、実際、彼らとて人間である。
休暇は休みたい、というのが人情である。人情を忘れては、人間はいけない、と思う。
 
 
「だ、だがよ。大介さん、鉄也さん」
あえて、代表して兜甲児が口をひらく。女性陣の鋭い視線に開かされた。この三兄役が、上の兄たちに比べれば多少は融通が利くのだ。
 
「ん、どうしたんだ、甲児くん」
大介、というのは、宇門大介、デューク・フリードの地球人名である。もちろん、王子だけあって、人の、ましてや弟分の意見はきちんと聞く度量をもっている。これが剣鉄也となるとまた微妙なのだが。
 
「も、もちろん、特訓も大事なんだけどよ。・・・・あー、今回は、あの、それだ、シンジたちもいるじゃないか。これまでずいぶん、頑張ってきてたけどよ、勝手が分からないままロンド・ベル入りして、自分の基地から遠く離れて戦闘三昧で、ずいぶん疲労してんじゃないかと、思うんだ。」
なかなかに智恵がまわる三兄である。頑固な兄役が二人もいれば口もうまくなるものだ。
だから特訓はやめろ、とまでは口にしないのがコツである。
 
 
「ふむ・・・・・」
碇シンジとアルフィミィの名を出されれば、すこし考えざるをえまい、という兜甲児の読みは当たった。少し考えて、二人の顔を見るデューク・フリード。
 
「そ、そうよ!甲児の言うとおり!」
ここぞとばかりに援護攻撃を行うマリア・フリード。
 
「ふーん、そうねえ・・・・機密っていうのかしら、このふたりの基地からの通信もほとんどないし・・・・」
ネルフ所属の碇シンジはともかく、正体不明のアルフィミィはそもそも通信相手すらいないのだが、確かにネルフからの様子をうかがう連絡などはない。その点をちょっと心配する牧葉ひろみである。牧場の娘さんに国連直属の特務機関のことなど分かるはずもないが、自分たちに比べて、子供の彼らにだんまりなのが気になるのだ。憤りが少しある。
 
「そう、そうだわさ!!」
特にこれといった意見はない、あえていうなら休暇の時は休みたいだわさ、というのが意見なのだが、正直にそんなこと言おうものなら剣鉄也にぶっとばされるので同調オンリーのボス。
 
 
「ふーむ・・・・」
長兄、デューク・フリードの天秤が、特訓から碇シンジ達の里帰りを含めた休暇、に傾きはじめる・・・・もちろん、それはこれからの激戦に備えて、通常の機械とは異なる特別な彼らの機体の総点検なども兼ねているわけだが・・・・・
 
 
 
「そうなのか、シンジ、アルフィミィ」
 
大声を出したわけではない、剣鉄也の声は響くのだ。そして、腹にズシン、とくる。
 
 
「お前達は、自らの基地を遠く離れ、戦を重ねて、その中で、寂しさを感じていたのか」
ど真ん中直球で聞いてくる。今日び、マシンであっても、もうちょっと気の利いた遠回しの言い方を選ぶだろう。
 
 
「え?・・・・い、いや・・・・・そんなことは・・・・・ありません」
「ありませんの〜」
おそろいで火星丼を食べながら事の成り行きを眺めていたのに、いきなりグレートな剛速球を投げつけられて面食らう碇シンジだが、いちおう、主人公なので、はっきりと答える。
アルフィミィのそれは完全に追随だが。本人はそれで納得している。
 
 
「そうだろうな・・・・・」
フッと、男臭い笑みを浮かべてみせる剣鉄也。他の面々はいきなりのやり取りにあっけにとられている。
 
 
 
「オレたちはすでにお前の家族だからな・・・・」
 
 
 
「そして、お前達はその家族の一員なんだ・・・・・」
 
 
「鉄也、それ・・・・意味が・・・・・かぶってるから・・・・」
剣鉄也の言葉に、その成長に、感涙しながらもパートナーとして律儀に指摘しておく炎ジュン。
 
 
「おお!!」
そんなことを言われて、長兄デュークの天秤は一気に「特訓」側にクリティカルに押し切られた。兜甲児たちにしてみれば、まさに「つうこんのいちげき!!」である。
 
「ひ、ひえ〜ん」
弓さやかが泣いた。もちろん、炎ジュンのそれとは全く異なる水分である。
 
 
そんなわけで、マジンガー一家の特訓キャンプが始まる・・・・