スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<サンダーダイナミックバンプレガイナ ルート>
 
 

 
 
結局、剣鉄也の提案が押しとおり、マジンガー一家はせっかくの休暇だというのに、「特訓」をやるはめになった。やる気があるのは長兄と次兄くらいなものだ。鋼鉄の結束を誇っているので、表だって文句はいわないが。
 
 
「はあ・・・・特訓かね・・・・休暇だというのに・・・・か、感心だな」
 
特訓と言うからにはやはり秘密であるべきであり、場所は人里離れた山奥がベストであり、というか、巨大ロボットを用いての特訓ともなれば人里近くでやるわけにはいかない、というわけで、母艦を離れることにブライト艦長の許可を得るデューク・フリード。
 
 
「はい!僕たちは必ず新しい力と技を学んで戻ってくることを誓います!」
 
まるで臨海学校に出発する学級委員長のような言いぐさであるが、王子様である彼の口からでるとあまりにはまりすぎて、つっこむ隙がない。確かに、軍艦の艦長としては本職の軍人ではない彼らの態度、意識の高さには感心するしかない。
ただ、まあ、その後ろに控えている弟分、妹分たちの表情をみれば、多少の同情も禁じ得ないわけで・・・・「なあ、アムロ」パイロットの統括リーダー格のアムロ・レイにふってみる。が、「あ、ああ。まったく頼もしい限りだよ」などと言って関わろうとしない。強力な壁役がごっそりいなくなることは、留守番としては不安になるので、出来れば近場で息抜きでもしていてほしいのだが、こうまで生真面目に宣言されると返す言葉がない。
 
 
マジンガークラスのロボットが思いきり暴れて周辺に被害が出ない場所というのは国内でもわりと限られている。現在地のビッグファルコンからはかなり離れた場所となり、緊急時の呼び出しに多少不安がある。だが、かといって、近場でやられてもかなわない。マジンガーの特訓などと、万が一、周辺住民に迷惑をかけて謝りにいくのは自分たちなのだから。
 
結局、ブライト艦長とアムロ・レイは承認した。ただ、特訓の場所まで戦艦で送っていくことは当然できない。
 
飛んでいけるマジンガーZやグレート、グレンダイザー、スペイザー、ベルゼイン・リヒカイトなどはいいが、ボスボロット、エヴァ初号機などは、どうしたものかと。まさか特訓だから走らせていきます、とか同じネタを使うんではないかと危惧されたが、ボスボロットはマジンガーZとグレートが二体がかりで、エヴァ初号機は、ちょちょいとスペイザーにアストナージが手をいれて、エヴァ初号機と「合体」できるようにして、飛んでいくことになった。このあたりの表現を、綾波レイあたりが運悪く魔術の力かなにかよって知ってしまえばまた機嫌が悪くなるわけだが。また、ボスが「ボロットも合体したかっただわさ」などと己に正直なことをつい兜甲児と剣鉄也に聞こえるところで言ってしまったので、なかなか行き路は大変なことになる。
 
「で、ブライト。彼らはいったいどんな特訓をするんだ?」
「さ、さあな・・・・だが、彼らのことだ、我々では想像もつかぬ激しいものになるのは間違いないだろう・・・」
「・・・・ほんとに行かせてよかったのか?」
「・・・・・・祈ろう。彼らの無事を」
 
 
 
そして、特訓場。とうぜん、秘密の山奥にあり、詳しい地名も秘密である。
ただ、マジンガーたちが思う存分暴れても誰も困らない場所だといっていこう。
 
 
そこに直行して、日が暮れるまで地獄の、血と汗と涙と機械油の、鬼、悪魔、獄卒も泣いて逃げ出すほどの苛酷な特訓が始まるのだと・・・・目的地が近づけばそろそろ諦め・・・いやさ覚悟を決めて顔つきが引き締まってくるマジンガー一家の弟、妹たち。
というか、気を抜いていると大怪我ではすまない。
長兄と次兄が考える「特訓」であるから、常人ではとても耐えきれないような激しいものであることは当然予想される。ボス、ヌケ、ムチャ、碇シンジでさえ、無駄口を叩かず周囲の緊張を感じ取り気合いを入れ直していた。ある意味、一戦交えるよりも雰囲気が硬い。「わくわくしますの〜」例外はアルフィミィくらいなものだ。
 
 
そこに、先頭を行くグレンダイザーからの通信が入った。目的地点より15キロほど手前の地点で降下するように、と。「どういうことでしょう?」意味が分からずマリア・フリードに接触通信で尋ねてみる碇シンジ。「そうねえ・・・・ウォーミングアップとして、そこから目的地まで走って、折り返してまた戻ってくる、とか・・・・兄さんと鉄也さんならそれくらいやるかも・・・・・」ほんとの妹、軽い予知能力をもつマリアにしても意図が読めないらしいが、異議も質問もなく、長兄の指示に従う一家。マリアの言うとおりであったら・・・・いきなり30キロマラソンなわけである。しかも山道。修験者じゃあるまいし。確かに根性や魂を鍛えるには丁度いいのだろうが・・・・・う、けっこう大変そうだなあ、といまさら一家の長兄達の恐ろしさが分かってくる碇シンジであった。
 
 
 
だが・・・・・指定されたポイントに降下してみれば・・・・・・
 
そこは・・・・・
 
 
「キャンプ場・・・・・?」
ロボットがこれだけいきなり降りてきて反応がないところを見ると、他に利用客は誰もいないらしいが、ぽつぽつとログハウスやらがあるそこは確かに。
泊まりがけの特訓だとは聞いていたから、それなりの準備はしてきている。ボスボロットに必要なものから必要でないものまでしこたま積み込んできている。どこでも野営はできるのだから、時間の節約に現地で泊まればよさそうなものだが・・・皆、首をかしげる。
 
 
「これから皆で食事をつくろう。そのあとで、相談することがあるんだ」
デューク・フリードは機体から降りてきた皆にそう告げた。
 
 
「はあ・・・」
 
必死の気合いを入れていただけに、皆、思い切り、拍子抜けする。その中には剣鉄也も含まれて、怪訝な顔で長兄を見ている。これではふつうのキャンプ、バカンスではないか。
 
かといって、デューク・フリード、宇門大介の性格をよく知る弟分、妹分たちはここで油断しない。ひそかに自分たちの意志をくみ取って楽ちん路線に転向するような我らが長兄ではないのを”よおく”知っているからだ。碇シンジにもへたに喜んであとで地獄に突き落とされるショックを味わわぬように目で教える弟分妹分、そのタイミングや感覚、コンタクトぶりはまさにほんとの兄弟のそれ。末の妹はほわほわ笑ってるばかりだが。
 
 
キャンプ場はここしばらく使用されていなかったようだが、牧場暮らしでアウトドアには強いの宇門大介、牧葉ひろみがいるので、大した苦労もなく、キャンプ場の王道メニュー、バーベキューカレーなどをこさえて、ひとつテーブルで長兄の相談にのることになる。
 
 
「相談とは・・・・ほかでもない」
 
口を開いた長兄に全員の視線がそそがれる。これから数日の自分たちの運命に関わることであるから皆が緊張の面もちでその言葉を待つ・・・・。
 
 
そして、デューク・フリードは
 
 
「特訓のメニューについてなんだ。どんな特訓をしたいか、みんな、希望があるかい」
 
 
肝心なことを考えていなかった!
 
 
「あ」
 
剣鉄也の納得したような声が。「それをすっかり忘れていたぜ・・・・」
とても戦闘のプロとは思えぬ発言が。「さすがは大介さん・・・そつがないぜ」
 
 
しーん・・・・・・・・
 
 
ダブルハーケン、マジンガーブレードのダブルマジンガーブレードに匹敵する合体口撃に静まり返るテーブル。兜甲児でさえフォローのしようがなく、二人の兄貴の顔を見つめている。なんか腹案があるから、ここまで連れてきたんじゃねえのかよ・・・・・喉まででかかっているのだが、大介さんの純粋な瞳を見ると、ツッこめねえ・・・・!!ホントに真実、オレたちの意見を欲している大介さんには、そんなこと・・・・いえねえよ!!
考えることは、兜甲児と同じである。牧葉ひろみとマリア・フリードは申し訳ないのか真っ赤になってうつむいているし、炎ジュンも同様。弓さやかも兜甲児がジッと耐えているのを見るとあえていう言葉がない。ボス、ヌケ、ムチャ、もここぞとばかりに「このままここでキャンプだけして鋭気を養おうだわさ」と革命をおこしてやりたかったが、星の王子・デュークの威厳の前にしては何も言えない。それに、すっかり長兄に敬服している様子の隣の次兄、剣鉄也がおそろしすぎる。
 
 
しーん・・・・・・
 
 
沈黙の続くテーブル。「どうしたんだ?いろいろやりたい特訓があるだろうが、時間の都合もあるから、どんどんアイデアを出してくれ」
そういうことでは全くないのだが、長兄が弟たちに笑顔で語りかける。全く気づいてない。
 
 
「あ、はーい」
 
碇シンジが手をあげた。さすがに、偉大な勇者・グレートマジンガー、剣鉄也に気に入られただけのことはある勇者ぶりであった。全員の視線が集まる。その発言にまたここ数日の運命が決まるかも知れないとなれば・・・・!
 
 
「合体マップ兵器の特訓はどうでしょうか?
その名も・・・”サンダーダイナミックバンプレガイナ”です」
 
 
 
運命は、それで決定された。