スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<特訓を成功させるのに大切なことルート>
 
 

 
 
「それでは特訓を開始しよう!」長兄、デューク・フリードの号令のもと、それぞれ散っていく弟妹たち。皆、気合いが入っている。
 
 
せっかくの休日をあろうことか特訓、それも「合体マップ兵器」なる怒濤の攻撃方法の開発にいそしむマジンガー一家。休めるときに休んでおくのもパイロットの仕事、などという題目のまま、ほんとにそのまま休んでしまうか、それともこうして誰も見ていない山の奥で激しい地獄の特訓をさらっと行うか・・・・それがやはり、彼らマジンガー一家のロボット大戦の連続参戦における秘訣ではないかと。他の者が休んでいるときに歯を食いしばって鍛えるからこそ、強い、強くなれる、そりゃもう強いはずである。暑苦しいことこのうえない、というのはまあ、ほかにおいといて。
 
 
だが、こうやって激しい戦いを、生命ギリギリの修羅場をきりぬけてきた彼らでさえも、この合体マップ兵器攻撃をモノにするのには手こずった。理論はともかく、なんせ彼らは実践派にして実戦派であり、戦闘の中で使えない技など技ではない!、ということでフォーメーションの要求レベルはかなり激しく、そして高い。また、その認識は正しく、なまっちょろい適当な、かたちばかりの技を組み上げたとしても、そんなものは実戦では役に立たないだろう。その点、戦闘のプロである剣鉄也は厳しい。鬼よりも厳しい。
 
 
一番ひどい目にあっているのは、なんといっても兜甲児であろう。
 
なんせトドメである、一番いい役であるマップ兵器の雷エネルギーを全て集束した剛碗の一撃、「雷車輪ロケットパンチ」を放つのであるから。単純計算しても、基本攻撃力が12000いく。これでマジンパワー解放やら精神コマンドやらを加算したらどれだけいくか・・・・。この数字がどれだけ凶悪かは、有名どころの巨大ロボット、敵のボスクラスの必殺攻撃が、おおよそ5000〜6500のあいだであることを考えれば分かってもらえるだろう。「カイザーでもないのに、こんなにいっちまっていいのかよ・・・・」兜甲児は誇らしさを越えて空恐ろしくなってくる。逆に言えば、それだけのエネルギーが自分の機体にかかってくる、ということに他ならない。グレンダイザー、グレートマジンガー、エヴァ初号機、ベルゼイン・リヒカイト、これら四体の攻撃破壊エネルギーの終点に、自分がいるのだ。それを受け取ってZはパンチを打つわけだが・・・・・
その受け取り方をヘボまれば・・・・・・ちょいとでもタイミングやパワーバランスが崩れれば・・・・この技は特訓中にデュークらがこの場で思いついたもので、博士たちの意見やら耐久計算やらは一切無しの方向で、ひたすらロボット乗りの、パイロットの技量と根性と魂だけで行おうとしている・・・・・だが、兜甲児は男である。泣きごともいわずにひたすら、四方向からくる強力無比の雷エネルギーに打たれ続ける・・・・・それは、生身の身体で換算すれば、四方向からほぼ同時に来るピッチングマシーン(硬球)の速球を半分受け止め、半分打ち返す、ほどの反射神経が必要とされる!。
 
実際の特訓の段取りを決めるのは、戦闘のプロ・グレート剣鉄也であった。
この換算をやったのも、当然彼であり、機体に乗っていきなり試しても時間の無駄であるから、まずは甲児君はそれが出来るようになることだ!とかなんとか言って、兜甲児はマジガーZから降り、ボスたちやさやか、マリア、ジュン、ひろみたちと地獄の特訓Aパートへ。一歩間違えばリンチである。が、剣鉄也につききりでコーチされるわけではないから多少は気が楽、といえなくもない。身体を動かすのはキライではないし。
 
グレートも、自分たちの特訓があるのだ。それがマップ攻撃部分、地獄の特訓Bパート。
 
ダイザー、グレート、初号機、ベルゼ、の四機は、戦闘マップの四隅を一ターンでも早く占められるように「移動する」・・・スピードが、戦足の速さが要求される。
もともとマジンガー一家は壁役として期待されているのであり、彼らが分散するようなことはなるべく早急にカタがつけられる必要がある。それも、ただ移動すればいい、という話ではない。戦場では敵がおり、敵はこちらの邪魔をするのだ。それを強引に突破するか、いっそ、敵を引きつけて装甲の弱い味方機から離してしまうか、いろいろ選択肢はあろうが、剣鉄也が「敵など突破しろ」というので、強引に突破することになった。
この戦足特訓は、機体に乗ったまま行われる。こちらも、フットワークならば機体から降りてバスケットボール形式のトレーニングなどが有効そうだが、(山の自然を荒らさずに済むし)、彼らの機体は空が飛べるのだから、突破の方法の幅が違う。四体そろえばどのくらいの雷が呼べるのか、試してみなければならないこともある。
 
 
さて、そんなこんなで特訓、第一日目が終わる。
 
 
一足先にキャンプ場に戻っていた牧場ひろみ、炎ジュン、弓さやか、マリア・フリード、女衆が夕飯の用意をしていたところに、顔に痣をつくりながらも明るい顔の兜甲児がボスたちと談笑しながら戻ってきた。「ん〜〜、いい匂いだなあ・・・・あれ?大介さんたちはまだかよ・・・・」「あー、お腹へっただわさ・・・・・これもついでに焼いてほしいんだわさ」特訓の成果があったのか、そのわりには牧場ひろみに渡している川魚の束はなんなのだろうか・・・・「甲児君、あたしたちが戻ったあとも、ちゃんとやってたんでしょうね?」弓さやかがギロリとにらむ。「も、もちろんだぜ、さやかさん。見てくれよ、この特訓の勲章をさ」「そうよ、甲児が特訓さぼって遊ぶわけないじゃないの、信用してあげなさいよ」マリアにそうつっこまれると「・・・つきあいが長いから、そういうわけにもいかないのよ。そのうち、マリアちゃんにも分かるから」恋敵に言い返してみたくもなる。「フフ・・」鍋の仕上がりを見ながら横顔で微笑む炎ジュン。
 
「まあ、いいじゃない。さやかさん、マリアちゃん、手伝って。甲児君たち、お疲れさま」
まあ、大ざっぱなところはあるけれど、特訓に手を抜くような甲児君ではない。どうせあとで自分の身に返ってくるのだから。適当に目鼻がついて、感覚を掴んだから、息抜きに男の子同士で遊んで帰ってきたのだろう、と。牧場ひろみ、一家のおねえさんはそう目星をつけていた。
 
「あ、はい!。あー、えーと、なんかオレたちにも手伝うことありますか」
体力が余っているというよりは、やはり若いのだろう。元気だ。
「いいわ。もうすぐ出来るから、座って待ってて。大介さんたちもそろそろ戻ってくるでしょうし」
「そ、そうだわさ!キャンプの定番、ドラム缶で風呂でも沸かすだわさ!ヌケ!ムチャ!いくだわさ」
基本的に特訓の手伝い、兜甲児に硬球を投げつける役、球拾いだったりする彼らはさらに元気だ。ボロットにはいらんものが山と積んであり、あきれた牧場ひろみが呼び止めるよりも早く彼らはほいさっさとそっちの方へ駆けていった。「えー、ドラム缶のお風呂〜?やだー」「そうよねー」そう言いつつも表情は楽しげなさやかとマリア。これで花火でもやれば完璧に休日キャンプである。
 
 
魚も焼けたころに、山向こうからがションがションとグレンダイザーたちが戻ってきた。
 
 
だが、機体を降りた彼らの姿は、兜甲児のように晴れ晴れとしたものではない。
どちらかというと、雲行きがあやしい。雷を発生させすぎたせいでもあるまい。
 
 
原因は碇シンジ・・・・・特訓で相当に絞られたのか、うつむいてヘロヘロというか足下もよろついている。元気のげの字もない。兜甲児たちとは対照的である。
その隣の、いつもふわふわしているアルフィミィも気遣わしげに、碇シンジを見ている。
 
 
泣く子もだまるあの二人直々にしぼられたんじゃなあ・・・・・・・・
無理もないか・・・・・・・
 
 
迎える者たちはみなおなじことを考える。なんせ、長兄デューク・フリード、次兄剣鉄也、この二人の辞書には「撤退」「手加減」の文字はない。あるのは「徹底」の二文字だけ。
 
 
山の向こうに響いていた雷鳴は、碇シンジの悲鳴だったのかもしれない・・・・・
 
 
「僕、食事いりませんから・・・・・」
よほど疲れ切っているのか、それともなにかあったのか、碇シンジは長兄たちと離れて、テントに引きこもってしまう。一人だけ参加しないというのもせっかくの野外の食事を不味くさせる。「心配だから、ついていますの・・・・」そう言ってアルフィミィも行ってしまったので、差し引き二人。一家に二人も抜けてしまえば、食事の席もなんとなく味気ない。新しく入ったばかりだというのに、やはりあの二人はマジンガー一家なのだ。
 
 
「・・・どうしたんだよ、シンジの奴は」
あえて、食事の席で、皆の前で長兄に問う兜甲児。心配なんて女々しいマネは三男坊の役目ではない。単に特訓に弱音を吐いているなら、あとでカツをいれてやるだけの話だが、どうも戻ってきた長兄次兄の顔を見るに、それともまた”違う”ような気もするのだ。ただ根性無しの末弟に失望した、というわけでもなさそうだが・・・・それに、二人とも戻ってきてたら一言も発しないのだ。両方ともハッキリとものを言うタイプなのだが。
 
 
「なにかあったのかしら、大介さん・・・・」と、牧場ひろみが
「鉄也・・・・・」と炎ジュンが
 
 
「初日からうまくできたら、特訓の意味がないだわさ。ここは兄貴分らしく、長い目でみるべきだわさ」ボスでさえまともなことを。ヌケ、ムチャもうなづく。
 
 
「う、うーむ・・・・・そうだな、鉄也君」
やはり、なんかあったらしい。元はというと、特訓の中身さえ決めずに一家をここまで連れてきた素敵な王子様である長兄が重たい口をひらく。
 
「あれは・・・・・・盲点だった・・・・かも知れない」
戦闘のプロであり、偉大な勇者でもある次兄が応じて語り始めた・・・・・
 
 
雷の発生実験を終えてから、休憩時間をレクチャーに使い、さっそく戦足の特訓に入る。
広大な戦闘エリアを想定して、スタートとともにダッシュ。四方を支配すべく高速でそこへ向かう。元来、壁役である自分たちが散らばるのだ。合体マップ兵器を発動する時間は短くなければならない。さもなくば味方の陣が崩壊する。それゆえ、剣鉄也の求めた設定時間は情け容赦ない。だが、それをクリアできなければ、四機同時に到達できなければ、実戦で使用不可能、全く意味がない。それを実現するため、特訓は激しく厳しいものとなった。妹弟たちが予想した通りに、まさしく手加減無しで。
それに対して、エヴァ初号機、ベルゼイン・リヒカイトはよく食らいついてきた。
 
 
だが、その中で、どうしても碇シンジのエヴァ初号機だけが、遅れてしまう。
いつもふわふわして、 つかみどころのないアルフィミィが見事に長兄たちに合わせるにも、碇シンジがそれに間に合わない。三機のタイミングが合い、速度を増していけばいくほどに、エヴァ初号機との差は広がっていく。もとより碇シンジに合わせて三機の速度を落とす気など剣鉄也にはない。
 
 
そこから先はまさしく碇シンジにとってみれば、魔神の檻、地獄以外のなにものでもなかった。グレートが、ダイザーが、ベルゼが、さんざん追いかけ回して死力を尽くさせて速度を上げようと企む。ロボット乗りの特訓、というのはこういったもので、これでトラウマを負うようなやつはそもそもロボットなどに乗ってはいけないのだ。
 
よく「暴走」しなかったものだが、そこらへん、碇シンジも経験のあるパイロットである、ということか。
 
 
だが、そこまでしても、エヴァ初号機は、碇シンジは目標の速度を達成できなかった。
 
言い出した当人が、このザマでは・・・・・・碇シンジもさすがに傷ついたかもしれない。
 
「僕は・・・ダメなパイロットだ・・・・ドジでのろまなカメだ・・・・」
そんなことまで言い出したらしい。
 
「なんだと・・・」もちろん、そんな女々しい弱音は剣鉄也の逆鱗に触れることになるわけだが・・・・・額のあたりに青太い血管がビキビキと浮かび上がる。アゴが割れている。
 
「いや、スッポンだ!それも雷が鳴ろうとも食いついて離れない特製スッポンになるんだ!!シンジ君、がんばれ!」
その前に、デューク・フリードが応援しとるのか微妙にけなしとるのかよく分からないことを言う。励ましてはいるのだろうが・・・・・剣鉄也爆発10秒前・・・・・
 
 
「玄武ですの〜、がんばれ、がんばれ、玄さんですの〜」アルフィミィも口調があれだが、懸命に応援している。
 
 
剣鉄也爆発五秒前・・・・・・・・ロンド・ベルの戦士たちでさえ2,3日は出撃不能に追い込んだほどの迫力がある剣鉄也のブチ切れ咆吼、鋼鉄の獅子吼が・・・・今
 
 
 
「スッポンも空、飛べませんしね・・・・」
 
 
碇シンジが長兄の宇宙センスの励ましについ反応して言い返した時である。
 
 
「うっ」
 
 
四人の時間が止まった。グレート、ダイザー、ベルゼ、初号機の動きが止まった。
 
 
そして、食卓の時間も止まった。話を聞いていた兜甲児、牧場ひろみ、炎ジュン、弓さやか、マリア・フリード、ボス、ヌケ、ムチャたちの動きも止まった・・・・・・
 
 
そこで、マジンガー一家全員が重大なことに気づいたのである。
 
 
よく考えてみれば、空が飛べる他の三機に比べて、空飛べないエヴァ初号機がどう頑張っても同じ戦速になれるはずがないのだ。エヴァ初号機はここまでマリアのダブルスペイザーと合体してここまでやってきたが、そのマリアがずっと兜甲児の特訓に参加して、そのあと夕食の支度を手伝っていたのだから・・・・・なんというか・・・・・
本日の碇シンジの特訓は・・・・・・あれだけさんざん気合いをいれて追いかけ回されたのは・・・・・
 
 
いっさいムダ
 
 
・・・・・と、そういうことにならないだろうか。これだけいて、誰もそのことに気づかなかった・・・・・つっこみ役が不在であるのは、神様が不在であることよりも、悪役が不在であることよりも、魔神が不在であることよりも、千倍も万倍も悲しかった。