スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<ロボ・クラナドルート>
 
 

 
 
もうひとつ部隊名を作った方がいいのではないか?
 
 
と葛城ミサトが考えたほど、今回の作戦はうまくいった。とはいえ、誰からも評価されるわけではない。評価されるのは、ティターンズの、中でもいきなり正義に「寝返った」感のあるジェリド・メサ中尉であろう。生死不明の行方不明であるが。それでもなんせ「ハイパー・ジェリド」なる贈り名をされるほどの英雄化、大評価である。
いままでさんざん各個撃破は愚か者の戦術、とばかりに日和見アンド、戦力拡張充実の名のもとに好き放題やってきたのが、とうとうミケーネ軍に喧嘩を売ったのである。
世間一般市民としては大いに喝采をおくってよい話である。今の所キュウキュウに追いつめられているロンド・ベルでさえ彼の勇気ある行動に一目置いたくらいだ。
 
 
これで、いままで危険と安全、敵対と結託のグレーゾーンにいたティターンズは一気に危険と敵対のブラックゾーン寄りになった。悪党業界内の立場でいえば大いに株をさげ暴落、といったところか。まともに市民感覚で言えば、ようやく本来の位置に立ったか、というところである。下っ端同士の小競り合いならばまだしも、今回の大戦の天王山、関ヶ原と目されている、ロンド・ベルをメタクソにやった三星連合が駐屯するビッグファルコン近くでの戦闘である。どうやってもごまかしようがない。利害上の衝突ですらないのは、それが奇襲であることからもよーく分かる。わざわざ潜んでいたミケーネ軍を白日のもとに曝して戦闘をしかけたのだ。これを世界征服を堂々と広言するような悪党軍団の長たちが許すわけがない。
 
 
たとえ、それがティターンズとはまったく関係ないどころか、戦艦やロボットのスカウトを巡ってこの上なく仲が悪い、ドロン・ベルなる新興の独立部隊が計ったことであろうとも。その計略にまんまとはまったためにこうなってしまったのであろうとも。
 
 
なんだかヤクザ小説か、地域制圧型シュミレーションみたいな話になってきたが、それと少し違うのは、その事実が、全く他に知られずに、葛城ミサトが見せた芝居を、絵を、そのまま、「事実」だと、「ノン」の部分が切り捨てられたままに、世界に受け容れられたことだった。
 
 
ドロン・ベルの名が世に轟くことはなかった。轟いてしまうと、またこれでギリギリの綱渡りをしてきた苦労が一気にパーになるわけであるから仕方がない。「これはティターンズとは関係ない、あいつらの策略だったんか!」ということがばれればいくら悪党でも手を打ち直すだろう。だから、これは秘密のこと。ドロン・ベルは秘密戦隊である。
ダイ・ガードを供給してくれたドロン・ベルのことを知る21世紀警備保障の大河内社長のような玄人ならばなんとなく勘付くだろうが、あくまで影は影である。
 
 
悔しくない、といえば嘘になる。
 
 
だが、それだけでもう一つ部隊名を作ろうかと思うほど、葛城ミサトもヒマではない。
冗談みたいな話で、パイロットたちに言えば鼻で笑われるだろうが、かなりの必要性があってのことでもあった。
 
 
ティターンズに大戦をやらしていた間、ドロン・ベルも高みの見物を決め込んでいたわけではない。偽善的といわれようと、負傷兵の救出やらまだ使えそうな機体の搬出やら、側面かつ隠密に助太刀もやったし、そして何より、ここが最大の眼目だったのだが、応援部隊をよこして、警備が手薄になった三星軍団の本陣となっているビッグファルコンに、なんと潜り込んで、精神コマンド封殺の原因を調査してきたのだった。敵の裏をかいたとはいえ、さすがに機体で乗り込んではバレバレであるので、ここは人型サイズで、なおかつ当然のごとく、人型サイズではおさまらないパワーをもつ超人たち・・・・大十字九郎、アル・アジフ、ドロシー、バビル2世、つばさ、ヒカル、DDのフィギュア組、少し心配だが、ドクターウエスト、エルザ・・・要するに、さすがにロボットには敵わないが、敵の兵士たちは余裕で倒せる彼らがスパイ、ダブルオー、ソリッド・スネークとして、敵陣地内部深くに侵入して、機密を探ってくる・・・・できれば破壊も合わせて行う・・・・・という任務を帯びて・・・・・彼らは、さすがに厳重すぎる警備のもと、原因の除去、精神コマンド封殺装置、「精神コマンダーゼロ」を破壊はできなかったが、その性能情報をばっちり掴んで、怪我人ひとり、かすり傷ひとつなく、葛城ミサト、ドロン・ベルに戻ってきた。(正確には基地内でシャウトしそうになったウエストを皆でボコったらしいが、それはノーカンとしよう)。
 
 
ずいぶんな大バクチであったのだが、葛城ミサトはそれに全勝した。親の総取り、ひとり勝ちといっていい。ロジャー・スミス、城田氏などは彼らが無事に戻ってきた途端に、それまでのストレスが一気にきたのか、二人揃って、海に向かって走り出したくらいだ。
こうまでうまく事が進むと、かえって彼らのような者は反応に困るのだろう。
葛城ミサトみたいにさらりとニヤリとVサインでも出せればいいのだが・・・・・
満面の笑みを浮かべた自分たちの顔を思い浮かべるだけで逃げたくなったのかもしれぬ。
紫東遙のように自分の仕切を終えたあとは、ひたすら神名綾人の心配をしているというわけにもいかぬし。
 
 
ついでにいうと。渚カヲル率いる小隊が、新戦力を拾ってきた。ラーゼフォンに続き、さすがは渚カヲルである。こちらの味方になりやすそうな人材であることは言うまでもない。
 
機体の名はティターンズらしからぬ、百式に一本たりない「九十九式」。
 
パイロットは「アラド・バランガ」・・・・・似たような白式という機体に乗るパートナーがいたらしいが、そちらの方は発見できず・・・・。どう料理・・・いや「説得」されるかもう決まったようなものである。新人でありさほど強くはないが、一癖あるベテランを洗脳するよりはずっと楽、などと渚カヲルは口にはしない。
 
 
 
そして、ひとつのバクチが終わればまた、新たな勝負が始まる。
それにむけて、組織のトップ、ドロン・ベル首領は次の行動にむけて頭をひねっているわけだが。
 
 
 
「ロボ・クラナドがいいかなあ・・・・・・・」
 
 
ロボはロボットで、クラナドはゲール語かなんかで「家族」とかいう意味、らしい。
手に入れた新情報から、どうもいつまでも隠密部隊としてやっていては、今回の戦、埒があかない、という判断からだ。隠密部隊ドロン・ベル、ほかに、表の顔が要りようになってきた・・・・バクチの規模が拡大すれば、それだけ失敗の確率も高くなる・・・・
今回のような親の総取りのようなマネはできなくなるだろうが・・・・・
 
タイミングと連携命の無茶な作戦を完璧に遂行してのけた、パイロットたちを見てみると・・・・もちろん、ヒリュウ改という類い希な戦闘艦という「家」あってこそだが。
 
 
 
「やってみるかな・・・・」
さらなる苦楽をともにできるか、どうか・・・・・・葛城ミサトは判断を下した。