スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<めがみのおくりものルート>
 
 

 
 
「やっぱりミノさんじゃねえかな、たぶんそうだ、ミノすけだ」
兜甲児が断言する。末妹の命と引き替えになどできるわけはないが、愛機マジンガーZの両腕を指三本残して溶ろかしてなくしてしまった彼としては最低限、それくらいの代物であってほしかった。なかったとしても怒るわけではないが、まあ、せめて人間らしく。
 
 
「だろうな。そのくらいが妥当だろう。オレもそうおもうぜ」
剣鉄也も同じマジンガー乗りとして賛同する。もちろん、アルフィミィの身と比べられるようなことではないことは承知しているが。
 
 
「そうねえ・・・・・そのあたりかしら」
弓さやか、炎ジュンなど大戦の参戦が長く、かつ同じ女性の観点をもつ者として、珍しく兜甲児の意見と合致する。ぽーっとしているようで、アルフィミィちゃんは見立てにぬかりがない。天然ではあるが、ドジっ娘ではない。アクシズに単独で乗り込むあたり、なんといえばいいのか分からないが。それでも女の子があそこまでしたのだ。なまじっかなものじゃあないだろう。まあ、たとえなまじっかなものだったとしても、女の子の思い入れがあそこまで入っているのだから男連中に文句は言わせないつもりではあるが。
 
 
 
「あまい!!あまいのよさ!!」
 
 
それに反対するのはボスである。「いや、それピノコだろ。ブラックジャックの」
兜甲児がつっこんだ。だが、ボスはかまわずに。己のアイデンティティも一時よそにおいても云うべきことがある!、というように続けた。
 
 
「きっとアクシズで極秘裏に製造されていた超・強化パーツかなにかにちがいないだわさ!実戦投入されていればロンド・ベルを大いに苦しめることになったはずの、すごいパワーのなんかだわさ!ミステリアスなヒロインキャラクターが悪の組織に追われながらもってきた品物はたいていそうした世界を変えるほどの危険な何かに決まってるんだわさ!」
 
 
ヒロイン、というあたりで嫉妬の炎が燃えるところであるが、相手が末妹のアルフィミィであるからそれは女性陣の耳にはあえて素通りとなった。救われたボス。
 
 
一体、なんの話かというと。
 
 
アルフィミィがアクシズから”奪取”してきたらしい品物についてだった。
 
いろいろ政治的にむつかしいことになりそうだが、マジンガー一家の知ったことではない。
全て包み隠さず報告だけはブライト艦長にしてあるから向こうで判断するだろう。
基本的に昔からアクシズに背中を突かれてきたマジンガー一家は連中が嫌いなのである。
 
思い切り重力に囚われた、地に足をつけまくりの重量級の考え方であるが。
 
余談になるが、さる「攻略本より信頼できる情報筋」から「今回、ハマーンは味方にならない」との情報を得たブライト艦長は、今回のこと・・・・「なにやってんの!!」どころか「よくやった、問題ない」オールオッケーサインを出したという。
過去に煮え湯を飲まされてきたのは彼も同じであった。「モビルスーツなんか最終戦では使えないし」という問題発言まで飛び出して、アムロ・レイと大喧嘩になったという。
 
 
ちなみに、ミノさん、またはミノすけ、というのは「ミノフスキー・クラフト」のことで、これを装備すると空が飛べない機体も空が飛べるというかなり素敵なパーツである。
もちろん数は少ない。いいとこ2.3個でロンド・ベル内ではひっぱりだことなる。が、資金回収に空飛ぶ敵の旗艦を逃がさず落とすために大パワー必殺技を持つ主役機体のものになるのが通例である。
 
 
命に別状はないものの、アルフィミィがまだ目を覚まさないため、まだキャンプ地にいる。
一応、バンガロー住まいであるがアウトドアに強いのが揃っているので困らない。
マジンガーZの腕の修理があろうから兜甲児は先に帰っていてもいいのだが、本人はそれを断り末妹が目覚めるまでいるよ、と夕食の支度なども手伝っている。牧場ひろみと碇シンジがアルフィミィのそばについている。それから不思議なもので、あれだけやられたベルゼイン・リヒカイトも自動的に修復されていき、もう四肢がそろっている。マリアによると操縦者のアルフィミィとベルゼイン・リヒカイトが同調してその回復を成しているような感じがする・・・・というわけで、手っ取り早くロンド・ベルの医務室に運ぶわけにもいかなかった。アクシズ相手にもう一戦ここであるとしても・・・・・一家がそろえばなにもこわいものはなかった。ゲッターチームも見舞いにきてくれていたし。
 
 
「すごいすごい、って結局何がすごいんだよ。ボスは何が入ってると思ってんだよ」
そりゃそのくらいの品物であれば嬉しいことは嬉しいが、アルフィミィがまだ目も覚ましていないのにそこまでノリノリにもなれないしなあ・・・・実際に開封もしていない。
とはいえ、こっちの内心を代弁してくれているのもしれないと思えば兜甲児の顔もどうもこそばゆいもんがある。
 
 
「そ、そりゃあ・・・・とにかくすごいもんだわさ!!絶対にそうだわさ!!」
ボスの剣幕にヌケもムチャも同調し「そ、そうだといいな・・・・」「そ、そうね・・・」兜甲児も女性陣もおされ気味。この珍しい光景に驚くものの、流竜馬たちゲッターチームも新人ふたりのマジンガー一家の馴染み具合に笑顔で仲裁にはいった。「まあまあ・・・」
 
 
そこに・・・・
 
 
「アルフィミィちゃんが目を覚ましたぞ・・・おや、竜馬君にハヤト君にムサシ君」
 
 
アルフィミィの様子を見に行っていたデュークフリード・宇門大介がマリアといっしょに戻ってきた。末妹の覚醒にふたりとも安堵の喜びに目がキラキラと輝いている。
 
 
「お邪魔してます。話を聞いてお見舞いにきたんですが、ちょうどよかったみたいですね」
流竜馬が挨拶する。ロンド・ベルの他のクルーに預けられた果物やらぬいぐるみやらお菓子やらゲームやら見舞い品の山が積まれたテーブルを見て宇門大介の顔がさらに輝く。
 
 
「おお!これは・・・・・・どうもありがとう。皆さんには今回のことで大変、心配をかけてしまって申し訳ない」
一家の長兄としてロンド・ベルクルーを代表してやってきたゲッターチームに頭を下げる星の王子様、デューク・フリード。だからこの人は慕われるのだろう、と流竜馬は思う。
 
 
「よ、よしてくださいよ、そんな水くさい。オイラたちはロンド・ベルの仲間じゃないですか・・・」巴ムサシが言いかけると
 
 
「出来れば、あの子の捜索にはオレたちにも声をかけてほしかったがね」神ハヤトがクールに肝心なことを言い切る。
 
 
「ハヤト・・・・・」マジンガー一家の結束を今、目の当たりにしてズバッとこういうことが言えるのは貴重というかなんというか・・・・しかし本心は同じことを思っている流竜馬である。彼らが好きであるからこそ、妙な凝り固まり方はしてほしくなかった。
だがまあ、直言すればしたで血の気の多い熱血ロボットパイロット同士である。家族の絆に飢え気味の剣鉄也など今のはちょっとムカっときている感じだ。もともと不機嫌そうな顔をしているのでめだたないが。
 
 
「いやいや、まったくだ。状況がつかめなかったとはいえ、いや、掴めない状況であるからこそ、君たちの力も頼るべきだったんだ。僕の不見識だった」
 
 
と、こういう風に場をまとめてしまえるあたり、やはり長兄は長兄だった。
 
 
「分かってくれればいいさ。・・・・あの子も無事に目覚めたんだろ。オレたちは戻らせてもらうぜ」
「おい、ハヤト・・」「待てよハヤト!」
ここはマジンガー一家水入らずに、という心遣いであるのがさっと分かるのは同じゲッターチームだけで、そうでなければ早々に事務報告、みたいに非常に紙くさい感じを受ける。
何しに来たんじゃお前ら、と次兄以下が喉まで昇らせる前に。
 
 
「出来れば、アルフィミィちゃんの無事をたくさんの人間に祝ってもらいたいね・・・・”ロンド・ベルの”末の妹のようなものだから。どうだろう、ハヤト君。夕食の準備も整っているようだし、お待たせすることはないと思うけれど・・・・ジュンくん、どうかな」
 
 
「ええ、はい!すぐに用意できます」ご指名の炎ジュンは即答。べつに彼女が神ハヤト好みのボインだったからではない、だろう。たぶん。
 
「フッ・・・・・そこまでいわれて断るのも野暮ってもんだな」クールに素直、神ハヤト。
 
「そ、それはそうだぜ。目が覚めて顔も拝んでないのにアーガマに戻ったらあとで皆に袋叩きにされちまうよ!お前ら見舞いをちゃんと渡したのか、途中で喰ったんじゃないかってよお」場を盛り上げようとする心やさしき力持ち、巴ムサシである。
 
「それはありそうだわさ」と何気なくボス。
 
「お前にいわれたくねえ!!!」なぜか半泣きになりながらムサシが。三枚目村に生まれた彼にも苦労があるのだろう。
 
 
 
それでも夕食はおいしかった。
 
 
さすがにアルフィミィはこの席にはでてこれないが、代わりに看病の席から碇シンジがぬけてやってきた。あとは私ひとりでいいから、という牧場ひろみの母性本能か、それとも宴席に格好のネタを提供したのか、それは分からぬ。
 
 
その場で話題になったのも、やはりアルフィミィが持ち帰った品物についてである。
 
あのサイズではお約束の新型機体ではなかろうから・・・・おそらくパーツ類。
 
 
あれこれ考えるのもまた楽しいものだが、適当な頃合いで正体が明かされるべきだろう。
 
その役割はもちろん・・・・・・碇シンジしかいない。
 
 
 
「・・・・で?どうなんだ、シンジ」
 
それを尋ねるのはグレート、偉大な勇者、剣鉄也。そろそろ頃合いやよし、と。
アルフィミィがアクシズに追っかけられて、自分の機体を犠牲にしてまで守り通したものとは一体・・・・・・・?
 
 
「先に行っておくが・・・・・・・ここで引いたり、ルート変更などをしたりしてみろ・・・・・ただではおかんぞ。天に代わって貴様を討つ」
誰に向かって云っているのか、剣鉄也の目が据わっている。「ぼけるな、とはいわん・・・・それはお前の持ち味だからな・・・・・・だが・・・・」
 
「いいんです、鉄也さん、分かっています」酒は入っていないはずなのだが、碇シンジの方の目も据わっている。
 
「分かっています・・・・僕は、分かっています」
 
碇シンジも剣鉄也も見舞い品の中の”果物ジュース”をあけただけなのだが・・・・いらんことをした人間がいるのかもしれない・・・・・
 
「アルフィミィたん、さいこうーー!おかえりー」と、誰かが叫んだ。名は本人の名誉のために特に秘す。「もったいつけないで、さっさといいないさいよー、コラしんじー、わかってんのー!!」と誰かがいちゃもんをつけた。名は本人のイメージのために特に秘す。ボスとムサシが青くなって隅で抱き合ってガタガタ震えている。何か、記憶に残しては悪いものでも見たように頭を振りながら。
 
 
 
「それでは、発表します!アルフィミィが星の向こうからもちかえってくれた・・・・おくりものとは!!」
 
 
「「「「「「とはっっっ!!??」」」」」
 
 
 
「カラータイマーですっっ!!」
 
 
「「「「「「「「はああああああっっっっっっっ?????」」」」」
 
 
「それをエヴァ初号機がつけると、巨大化して戦えますっっっ!!戦闘マップ、半分は埋めちゃいますっっっ!!。必殺技はエヴァシュウム光線ですっっっ!!。攻撃力は7777!!。けど、動作時間はたった三ターンです!!それを過ぎると旗艦に強制送還されますっっっっ」
 
 
「「「「「「すげえっっっ!!!」」」」」
 
 
「・・・・・じつは、アクシズはひそかにM87星雲からやってきた宇宙人を捕獲して、その能力を研究していたのです・・・・・その事実は地球連邦には極秘にされその能力を完全に解析して我がものとした今!彼らは!!僕らの地球に脅威が迫っていたのです!!」
 
 
そこから先はもはや誰の手に負えないウルトラマンメドレーの大合唱。ちなみに、「ウルトラ」の部分を「エヴァトラ」に勝手に変えてあるあたり、神をも恐れていない。
せぶん、せぶん、せぶん、せぶん、せぶん、せぶんっ
 
「「「エヴァトラア〜イで、しょわっっ♪!!」」」
 
 

 
 
 
「で、むこうでは元気よくあんなこといってるけど、ほんとうはどうなの?」
 
 
牧場ひろみがベッドのそばでアルフィミィにたずねた。嬉しいのはわかるけど調子にのりすぎ。そろそろ注意しないとね・・・こうやってこの子が無事でいてくれれば中身なんてなんでもいいけど・・・・ちょっと聞いてみたのだ。
 
 
答えはかんたんに。
 
「・・・・メガブースターですの。最初は空が飛べるミノフスキークラフトにしようと思いましたけど・・・・宇宙や異空間が戦場であれば、そのほうがお得ですの・・・」
 
 
メガブースター・移動力をプラス2,する強化パーツ。
普通のブースター(移動力プラス1)の倍の機能をもっている。
メガ、というだけあってそこらにあるもんではないが、その気になれば中堅機体にもつけてもらえるくらいにはポピュラーなパーツである。モノはアクシズ製が良質である。
 
 
兜甲児や碇シンジたちのいう、珍しげなパーツや特殊な力を持つパーツなんかではなかったわけだ。そんなレアのために守ってきたわけじゃない。アルフィミィが大事に抱え込んでいたのは
 
 
「そんな特別なことをしなくてもシンジさんたちならできるのはわかっていましたの・・・・でも、すこしだけ手伝ってあげたかったんですの・・・・」
 
 
他の兄弟たちが考えるより、末妹はしっかりしているのだ。多少、無茶なトコはあるが。
 
すこしだけ、すこしだけ。じぶんにできる、ちょっとだけのこと。
 
 
「そう。よくがんばったのね。アルフィミィ。でも、今回みたいな危ないことは・・・もうしちゃだめよ?」
額に手をやって髪をなでる牧場ひろみ。やらかした規模を考えればあまりに小さいお叱り。まさにお小言。けれど
 
 
「はい。わかりましたの・・・・・もう、だまってどこかへいったりしませんの・・・・」
アクシズの熾烈な追跡にも平然としていたアルフィミィがさすがに、しんなりとした。
結局はそれがいちばん、効くのだ。瞳もうるうるしている。
「・・・ごめんなさいですの・・・・・」
 
 
「いい子ね・・・・・もう少し眠る?それとも、すこしなにか食べる?」
こうやって身体を近くで診てきたからはっきりと分かる。この子は普通の人間ではない・・・・宇宙人というのもまた少し違う・・・・体の中にルビーでできた板のようなものや茨のようなものがある・・・動物らしくない、生物としての基本機能をごっそり抜け落としているような・・・・育つことも変わることもなく宇宙にたった1人でこの形のまま産み出されたような完全な寂しさをそのか細い体からかんじるのだ。牧場で生き物の世話をしてきた牧場ひろみだからこそ、それを強く感じる。この子は十年先も百年先も、このままじゃないのか。・・・ふと、そんなことを思った。
 
 
そんなアルフィミィの希望は
 
 
「皆といっしょに・・・歌いたいですの・・・・・・・でも、まだ・・・・」
ベルゼイン・リヒカイトの再生が完全ではない。起きあがれる体力はまだない。
それは目覚めた瞬間にしれきっている。体内では高速で霊的回線の再起動が行われて、表面などにまわせる余力など無い。・・・それに歌などと・・・・自分でも口にして驚く。
できないことをのぞむのは・・・・・・あえてそれを云ってみたり口にだしたりすることは
 
 
「じゃあ、一緒にいてあげる。それでいい?」
 
牧場ひろみの希望と同じだった。その笑顔はまさに女神だった。
最高のプレゼントをもらった聖夜の子供のように、
アルフィミィはうなづいた。
 
 
「はいっ、ですの!」
 
 
 

 
 
ちなみに、ほんとは、碇シンジは・・「メガブースターだっていいじゃない?」・・・・知っている。
 
 
この先、 ロンド・ベルに降りかかる地獄の苦難のことまでは知らないが。
なにはともあれ・・・・・・これにて
 
 
スーパーロボット七つ目大戦α
 
第一部・完。