スーパーロボット七つ目大戦β
 
 
<続・それは安寧、それは切望ルート>
 
 

 
「待てー!!その新兵器だけは奪われるわけにはいかない!なんとしても・・・賊を逃がすな!逃がすんじゃない・・ぐわあー!!」
 
極秘運搬中であった「新兵器」をなんとしても面子にかけて奪い返さねばならなかった警護部隊の隊長機が、逃げながらひょいと振り向いた機械獣・トロスD7に腹を貫かれた。
 
 
「た、隊長ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
届け先の研究所まであと少しというところで部下たちの悲痛な叫びが夕日にこだまする。
 
 
マジンガーに使われる超合金Zでも貫くという角である。頭だけガンダムで体はジムという中途半端な機体ではひとたまりもない。それでも隊長機は一番強いのであるから、この警護部隊は完全に歯牙にもかけられず蹴散らされた、といってよい。これ以上追撃しても返り討ちにあうのが関の山である。泣いて返せとわめいても相手は悪党、せせら笑うだけであった。
 
 
「(男)待てと言われて待つ者はおらんが・・・・・・」
「(女)貴様たち程度に逃げた、などといわれるのも腹の立つこと・・・・ほほほ」
 
 
移動飛行要塞グールの中で高笑いするのは雌雄同体のあしゅら男爵である。
 
引き連れている機械獣部隊に損傷らしい損傷もなく、目的のモノは手に入れたし、奇襲強奪作戦は大成功といえた。連邦軍のモビルスーツ部隊など、ロンド・ベルのようにニュータイプが乗っていたり最新鋭の専用機体でもなければこんなもんである。おまけにいくら極秘運搬したつもりでも、いくら軍とはいえしょせんは公共機関のやることである。耳目をふさげるのはせいぜい、一般庶民まで。悪の軍団の情報収集からは逃れられない。ことに今年は悪が豊作であり、その情報ネットワークも近年まれにみる性能であり要するに機密情報などダダ漏れであり、秘密にしようと目立たぬように最低限の警護部隊しかつけていなかった今回のこれなど、まさに「襲ってください」、といわんばかりであり、その通りに襲われてしまったわけだ。おまけに、いつもはこういう事件に鼻を効かしてすぐに寄ってくるロンド・ベルはこてんぱんにやられて傷を癒し中であり、こんなところまで出張ってこれない、ときている。市街を襲うのはいつでもやれるが、こういう戦力アップの貴重な機会は今しかない。地球の事情に基本的に疎い宇宙人勢力をさしおいて、いわゆる世界征服をめざす地域情報に詳しい現地の悪軍団としてはまさに稼ぎ時であった。邪魔者はいないし、まさに我が世の春。いやー、悪党やっててよかったなあ、とつくづく思う瞬間である。少ない労力で大きな成果、我ながら目のつけどころがよい、この成果にはDrヘルもさぞお喜びになることだろう。この作戦立案実行力、要するに邪魔者さえ出てこなければいつも任務はうまくいっていたのだ。外的要因さえなければ、このあしゅら様に間違いはない。
 
いやー、もうけたもうけた。さて、この新兵器にはどんな名前をつけたものか・・・・
 
増援が来る前にさっさとこの場から離れることにするあしゅら男爵。この情報を嗅ぎつけた他の悪党軍団が横取りにこないとも限らない。ふふふふ、一番乗りは気分がよいのう。
目的も達して意気揚々とバードス島に引き上げようとした、その時。
 
 
一番先行していたダブラスM2が突如、爆発した!
 
 
「(男)なっ!?なんだ?まさか、ロンド・ベル、あやつらか・・・・っ!」
「(女)機械獣を一撃・・・・・・そんな攻撃力をもつのは・・・・」
おののくあしゅら男爵。「(男女)どこのどいつだ!なにものだ!!」
 
悪党軍団にもそれなりの仁義があり、ここまで露骨に問答無用でこっちの機械獣を破壊するなど・・・・怒りに震えながらヤカンに穴を開けたようなへんなヘルメットをかぶっている兵士に大急ぎで敵の特定を行わせる。が、「このタイミング・・・BGMに太鼓なんぞをもってきたらほとんど戦隊ものですよ!!」などとどふざけたことを言い出すので「(女)いくらなんでもそんなことがあってたまるか!!」ビビビビと水木式ビンタをかますあしゅら男爵。「(男)まじめにやれ、このたわけが!!」ジェネレーションギャップのためにいろいろと会話に齟齬が生じたりするのでグール内の人員配置をこないだ換えてみたりしたのだが、今回のはまたネタが古すぎる。なかなかうまくいかないものだ。
しかし、そんなことに悩む前に
 
 
ずどーん!!
 
 
グールに上空からの直撃が来た。眼下の敵をあざ笑いながら去っていたのだからこれは思ってもいない方向。先行の機械獣がやられたことで地上の進行方向にすっかり神経がいっていたこともある。これしきで墜ちるグールではないが、激しく揺れた。
「おっとっと」
ヤカン頭の兵士がよろけて、あしゅら男爵に思い切り頭突きをかましてしまい、鼻血がでてしまう。「うわっ!す、すいません、あしゅら様!!」「(男女)お、おのれ・・・・・」
この怒りを目の前の部下にそのまんまぶつけてやるべきか、それともここは有効に転化してふいに襲ってきた敵にぶつけてやるべきか・・・・・・・・・・迷うあしゅら男爵。
 
 
ずきゅーん、ずきゅーん
 
 
迷っている隙にさらに攻撃。情け容赦遠慮なし。口上もなにもなく野伏せりのような実質本意の奇襲ぶり。なにかとええ格好しいの多いロンド・ベルならば何か言わずばおさまらない状況であるのに無言のままで攻撃を続けるとは。「(男)確かに、やつらではない・・・・・解析、まだ終わらんのか!」赤光を背負って頭上にある頭から翼が生えた機体はこれまで見たことがない。「いやー、あいにく最近のものはあまり詳しくないんですよ・・・なんというか、ついていけないといいますか・・・・あしゅら様なら分かっていただけると思いますが」しかも、ヤカン兵士(旧人類系)は即答どころかこっちに同意すら求めてくる。配置転換が失敗であったことを思わざるを得ない。基地に戻ってまた組み直さねば・・・・・そこらへん自分も悪かったのでビンタは勘弁してやるあしゅら。
 
「(男)そうだな・・・ライディーンに似ているような気もするのだが・・・・弓をもっておるしな」ここらへんの部下への思いやりがあしゅら男爵の見た目の割に男女問わずに慕われている理由であろう。
 
 
そして、そんなやりとりをしている間にも奇襲は続いており、なんとせっかく奪った新兵器が入った巨大コンテナを運ばせている機械獣たちが攻撃されていた。
 
「(女)こやつらの目的はこいつか・・・・・!ええい、なんとしても守りきるのだ!」
さきほど腹を貫かれた隊長機と同じようなことを命令するあしゅら男爵。即座に奇襲の真意を見抜くあたりはさすがにマジンガー相手の百戦錬磨のだけのことはあった。
 
「(男)足も止めるな!ここで増援を相手にするのは厄介だ」
意気揚々と引き上げるところを襲われてもおたつくどころか的確な指示を出す。
奇襲してきた敵相手に各自ばらけて戦おうとした機械獣たちの足並みがすぐに揃う。
グールも上空の翼頭ロボ相手に激しい対空迎撃を開始する。
 
 
こうなると、なかなか歯ごたえのある相手である。悪の真価は攻めの腕より逃げのしぶとさにある。
 
 
 
「もうちょいとオタついてくれるとよかったんだけど・・・・さあ、こっからが実力勝負、今のあたしたちの力がどれくらいのもんなのか・・・・・試させてもらうわよ」
 
バビルの塔では、ドロン・ベル首領・葛城ミサトが正義の味方には足らねども、まさしくこれは悪の敵、といったツラ構えで指揮モニターを見上げていた。
 
そこにある光点の数は今作戦に従事しているのが”フルメンバーではない”ことを教えている。葛城ミサトがヒリュウ改に乗らずに塔から全体指揮を執るのも実を言うと予定とは違っていた。その一言がどのくらいの重みを持っているのか、理解するには葛城ミサトの記憶から作戦開始前のブリーフィングの様子を展開する必要があるであろう・・・・。
 
 
と、いうところで続く。