スーパーロボット七つ目大戦β
 
 
<ウエストのアトリエ〜バビルの塔の工房術士〜ルート>
 

 
 
「・・・・・以上で”博士システム”の説明を終わるロボ。ご静聴ありがとうロボ」
壇上のエルザがぺこりと頭を下げても皆は言葉はなく、このロボ娘の話が本当かうそか、今ひとつもふたつも信じられない顔をしているだけだった。
 
 
「?すこし難しかったロボ?博士〜皆、リアクションがなにもないロボ」
壇上のわきでグルグル巻きに縛られて転がされているドクターウエスト(生みの親)に向かって不思議そうにエルザ。
 
「それもやむなし、であるな。やはり実際にその目で見てみねば信じぬというのは正しい態度では、あるっ!人の言うことを鵜呑みにしておれば敵のいいなりの標的になり、一週間もすればサクサクとこやつらはいなくなってしまうのである!相手の裏の裏をかこうとして表になり自分でもわけがわからなくなるパイロットの悲しき習性である。それゆえ我が輩に・・・・」
 
 
「ためしに、一体ロボットをつくらせてみろ・・・・・って?あー、なんつうか・・・」
葛城ミサトがその場を代表して、博士に答えた。
「とても科学じゃ、ねえような・・・・」
 
 
「科学というよりβに搭載されたシステムロボ。博士は信用できなくても、それは信用していいロボ」
あっけらかんっ、というエルザだが場はますます混乱する。
 
「そのあたりもよくわからないだけど・・・・βって、やっぱ受信する人を選ぶ・・・お告げというか閃きというか・・・いわゆる電波?やっぱ、エルザちゃん、ロボだし・・しょうがないのかな〜」お茶を濁そうとする葛城ミサトにさらに追い打ち。
 
 
「ロボというよりメタロボ」
 
 
「はあ・・・・・・・・・メタですかメタロボですか。リツコがいりゃあなあ・・・・喜んで捕捉説明させたげたのに」
 
 
第一話作戦が無事に終了してバビルの塔に帰投した彼らの中でドクターウエストがやたらに喚きだしたのが事の始まり。大声でさわぐのはいつものことだが、抑え役である大十字九朗はまだ本家バベルの塔から戻っていないので、それを聞かされることになるのだが一応、目的を果たした勝利であったし機嫌の良い皆はそれをそれなりに黙って聞いていたのだが・・・そのうち、黙って聞いておれなくなることを言い出したのだ。
 
今回の戦闘で、金田正太郎翁の特殊技能により大量のパーツ類を手にいれることができたのだが、それを用いれば新しくロボットを造ってやる、とウエストは確かにそう言ったのだ。この博士の厄介なとこは、やるといったからにはやるところである。妄想をわめくだけ叫いて実行はしない輩とは根性と迷惑さが桁違いであるのだ。せっかく手に入れた貴重なパーツ類を実験に使われてゴミにされてはたまったもんじゃない。正太翁がいてくれればこの先も手に入る、とはいえパーツ類が大事であることには変わりない。売り払って資金にもできるし。特に葛城ミサトなど裏方、首脳部には聞き逃せないような小憎たらしい妄言であった。今度こそシメてやらねば、と決意させるに十分な。そこで行われたのがほぼ有罪が確定してる裁判である。ここで暴走の根を断っておかねば悲劇は続く。資金の問題はいつだって切実なのである。いかに悪気はなかろうと、ここで甘い顔をするわけにはいかない。
 
 
そんなわけで、ウエスト本人にやらせると、好き放題にしゃべるだけで説明にもなんにもならないのでかわってエルザにやらせてみたのだった。一応、ウエストに造られた彼女の言葉ならこの点については説得力があるのではないか、と。技術力は彼女自身が見本で照明しているわけだから。天才であるか?とただそれだけを質問されたら皆、イエス、と答えるほかない。ドクター・ウエスト、とにかく天才であることは、まちがいない。
 
 
エルザがやった説明は、えらく実務的な、どれだけのパーツをどれだけ揃えれば、どんなロボットが出来上がるか、それから、同じパーツの組み合わせ、数でも使用する博士が違えば別のロボットができることもある、と、分かるような分からないようなことを言う。
まるで、錬金術である。
 
 
 
試しに、一例をあげると
 
 
プロペラトタンク×3、リペアキット×5、超合金Z×2、バイオセンサー×2
 
 
で、モビルスーツ「ゾック」が出来上がる、という。
 
 
ドクターウエストがこの材料を使えばゾック、ということで他の博士が使えばまた別のものが出来るあたりが奥の深いところである。それぞれ得意分野があるせいだろうが、どうせ博士をとっかえひっかえして選べるわけでもない。
 
 
数少ない共通パターンで、プロペラトタンク×2、リペアキット×1,チョバムアーマー×2、で「ガンタンク」がつくられる。それじゃ外見だけで中身がないじゃん!と言われてもつくれるのだそうだからしょうがない。ハナから誰もガンタンクなどわざわざつくらない、という点を見越しているのかも知れない。
 
 
だが、ここらへんまでならばまだいい。うさんくさいというかあやしげではあるが、博士が手間をかけるという点を考慮すれば、そう悪い話でもない。聞き流せる程度には。
 
 
だが、だんだんとそれはエスカレートしてくると、聞く者たちの顔もひきつる。
ばかばかしい、と席を立ってしまえればいいのだが、それができない。
 
 
プロペラトタンク×12、リペアキット×13,ブースター×3,メガブースター×2,アポジモーター×6,マグネットコーティング×7,バイオセンサー×4,チョバムアーマー×6,宇宙金属グレン×3、スラスターモジュール×2、ソーラーセイル×1
 
 
で、宇宙の騎士「テッカマン」を。
 
 
(その時、ブレードは?と綾波レイの赤い瞳がキラリと光った)
 
 
プロペラトタンク×20,ハロ×1、超合金Z×5,超合金ニューZ×18,高性能レーダー×3,イメージセンサー×1,スクリューモジュール×5,メガジェネレーター×5,大型ジェネレーター×10,ラムネ×5,ミンメイ人形×5,テム・レイの回路×2,
Iフィールド発生装置×2
 
 
で、ゴワッパー5の「ゴーダム」を。
 
 
(五人乗りかよ・・・・・・まさか葛城さんたちが乗るんじゃないだろうな、と赤木)
 
 
プロペラトタンク×30,超合金Z×30,超合金ニューZ×30,宇宙金属グレン×25、サイコフレーム×16
 
 
で、「ゴールドライタン」を。
 
 
(なんか例が偏ってないか・・・とかココで突っ込むわけにもいかないか・・・あのロボ嬢ちゃんには罪はないわけだし・・・偏向はあの博士のせいだろうな・・・、と青山)
 
 
ちなみに、ドクターウエストにしか出来ない機体というものもあり、それが「デモンペイン」・・・誤植ではない、デモンベインのぱちもんである。が、パワーはほぼ互角。
 
 
いずれにせよ、誰が乗るのか、とかそういう点をあまり考えてなさそーなラインナップがエルザによって読み上げられていった。しかし、いくら正太翁がひかえているとはいえ、はんぱでない強化パーツが入り用になってくる。夢物語にしても一部、現実よりも不経済な箇所もある。これではドロン・ベルとしての活動は全てパーツ収集に費やすしかない。
 
 
必要パーツの数、種類はますます増えて、最後になるとどれほど強力なバケモノ機体の名が読み上げられるのかと呆れ半分、諦め四分、興味好奇が残りの四分で聞いてみると。
 
 
この博士システムの限界でつくられるのが、アトリエロボ、というシリーズであり、どうせ必要パーツは揃えられないだろうから、と数字を読み上げることもせずに、ただ
 
 
「マリー」
「エリー」
「リリー」
「ユーディー」
「ヴィオラート」
「イリス」
 
 
の六体の名だけ告げた。そして、説明はこれにて終了だと、質問を受けることもなく罵声を浴びることもなく壇上からエルザはおりたのだった。
 
 
無視するのはたやすいが、真面目に対するにこれほどの難問はない。