スーパーロボット七つ目大戦β
 
 
「想いはとどいてますかルート」
 
 

 
 
なにせ、おまけですから
 
 
決まり文句が使えなくなった最近の更新状態ですが、このあたりでKOS−MOSさんの出ている「ゼノサーガ」の作品紹介など。アニメにもなりましたが基本はPS2のゲームでして、これまたスーパーロボット大戦に参戦はまずなかろうなー、という。アンドロイドというサイズはともかく、巨大人型戦闘機械をA・G・W・S(エイグス)と呼称するあたり、メーカー的にはとにかく、むつかしいものがある、かも。それはともかく。
 
 
舞台は4000年後の超未来SF世界。科学技術の進化が行き着くとこまで行き着いてかえってお猿さんに支配されてしまったりはしていない、いい感じで広大な宇宙生活を人類は送っていた。
 
つまりは宇宙船であちこちの星を行き来できたりするわけであり、いわゆるスペースオペラにうってつけの世界構成なわけである。しかし、これで科学万能みんな幸せに暮らしていますハッピーでは話が終わってしまうので、ゾハルなる黄金の鍵にまつわる大いなる謎やグノーシスなる脅威が飛来し、騒乱を起こしたりしてその厳しい流れの中で主人公たちは悩み苦しみ成長したりするわけである。ちなみに、主人公はシオン・ウズキなる技術者系眼鏡美女であり、KOS−MOSではありません。そういうわけで、KOS−MOSと禁断の人間とアンドロイドの恋に陥ったりとかいうことはありません。二重にあれですし。
 
ちなみに、技術系とはいってもKOS−MOSを造り上げたわけではありません。メンテナンスは担当するけれど、ブラックボックスにはさわれず、機能中枢まではよくわかりませんわ、という親未満かかりつけ医者以上、のような微妙な関係。主人公のシオンさんはあくまで最初はヴェクター社という会社の一社員なので、しかも若年で主任に抜擢されるデキる女であり、たいていの問題は処理にしてしまい、トラブルメーカーにはなりえない。
 
しかし、RPGである以上、冒険はせねばならない。荒事にハマらねば物語は進まない。
そんな、駆動体として、KOS−MOSさんは存在します。綺麗にまとめるとストーリーのシンボルとして。傍目からみるとそれでいいんですが、道を連れる者たちからするとまた違う意見があるやも。身長は167センチ、体重は92キロ、容姿はおよそ18歳前後。
対グノーシス用の兵器であり、ドンパチはもちろん、通常攻撃を幽霊のごとくすりぬけるグノーシスを有効に固着させるヒルベルトエフェクトなる特殊兵装をもつ。それも目の前の一体、二体ではなく、天文単位で効果を及ぼすというなんともスケールの大きいスペースアンドロイドウーマンであり、戦国魔神ゴーショーグンの宇宙スペースナンバーワンの地位も危ういところである。天文単位というとざっと太陽から地球までの距離であり、もう小さいことはいいじゃないか、というおおらかな気分にさせてくれる。愛称は「もこす」
。作中人物が呼んだわけではないのだが、KOS−MOSの読み下しと肥後もっこすの連想であろうか。効率重視のヒューマンインターフェースぶりは確かにロボロボしており、はんなりとはしていない。危難にあたり必要とあれば商船を脅迫して強奪するあたり邪神的とさえ・・・いやさ、そんなエピソードTの重箱の隅をほじっても彼女の本質には迫れないであろう。
たぶん!!
 
 
ひとことでいえば壮大な宇宙叙事詩ということになる。1,2,3,の三部作が発売されており、なかなかの大ボリューム。途中で戦闘システムが変更になったりキャラクターの見た目が変わったりと、まあ、現実の時の流れも感じさせてくれる壮大なゲームです。
 
 
 
「・・・ルックス5%低下、シオン、洗浄してください」
 
 
というのはバトル終了後の勝ちセリフであり、幼児のごとく甘えているとも人間など見下しているともどっちとも判別のつきかねる、アンドロイド=奉仕、なイメージを一掃した、かもしれない、KOS−MOSのキャラクタイメージを決定づけた必殺のセリフ。
 
 
容姿が18歳の麗しい乙女でなければ、「おや、シオンさん。障子の桟、ここも汚れていますよ、おそうじはきちんとしてください」的小姑セリフ以外のなにものでもないのだが。
バトル後、何回もこのセリフを言わせるあたり、おそらくシオンさんはその通りに洗浄してあげているのであろう・・・・。愛情のゆえか、それとも開発者のひとりとして自業自得と諦めているのか・・・。
 
 
しかし、そんなことをシオンでもないのに言われた大十字九朗やヒカル、ロデム、ロビンソン2世たちはたまったものではない。まあ、助けてもらったのは確かであるからチリをはらうくらいのことはお安いご用ではあるが。
 
 
「・・・・シオン?・・・・・」
 
 
いつもの調子で言ってしまったKOS−MOSではあるが、すぐさま己が守護すべきシオン・ウズキがこの場にいないことに気がつく。いるのは、人間男性が二名、人間少女が一名、それから・・・獣の姿をした・・・データベースを検索すると「ロデム」なる単語がヒットしてそれに関連する情報が刹那に知能回路を流れゆく。ヴェクター社以外のメンテナンスによる情報項目の追加。ここがエンセフェロン、仮想空間内ではない、少なくとも論理的にありえない、ことを追加情報は教える。その作業を行ったのはこの「塔」の”メインコンピューター”なる知能体であることを自分は”認識”している。数年前、海底に沈んでいた自分をこの塔に所属する海戦用の機体が発見し、回収。装甲をはじめとして多大な破損部分があったが、この塔の科学力でなんとか補修を施したが、再起動には至らず、緊急時対応の外部からの強制覚醒コマンドを埋め込むだけで、あとはこちらの自由覚醒に任せていたというのだから算盤のあわない話だ。ヴェクター社ではありえない対応であろう。この塔は襲撃に備えている。一個の戦闘基地であり、自分を回収して修理したのならプログラムを書き換えるなりして有効活用でもすればよいものを。それを試行した形跡すらない。少なくともヴェクター製の戦術プログラムはそう判断している。それをせずに。
 
 
自分は、ほうっておかれたわけだ。眠りたいのならば眠ればいいと。
 
 
この塔の主の意向であるようだが・・・・。これを寛大というのか高位の精神活動によるものであるのは間違いなさそうだが・・・理性的な対応であるのかどうか判断は困難。
 
 
バビル2世。それがこの塔の主の名。どういう姿をしているのか画像データもきちんと転送されている。だが、この場にはいないようだ。
 
 
そして、自分がなぜこの星にいるのか、なぜシオンのそばにいないのか、記憶が存在しない。何万回も呼び出してみるが自分の中に応答がない。そもそも、エピソードのどのあたりまでいっていたのか・・・・それも分からなくなっている。筐体も現地のパーツを用いて修理が行われたせいか、ヴァージョンが明らかに異なる。機能の自己診断もXバスターまで使用可能なことを伝えるが・・・現在の自分の正式ヴァージョンも分からない。
修理された、ということはそれ以前に重大なダメージを受けた、ということになるが。
自分がそこまでやられる、ということは、周囲にいたにちがいないシオンたちにも相応の危害が加えられたのではないか・・・・・・・・・・・・・・・
 
 
「あ、あの・・・・」
 
 
人間少女、レアリエンではない、しかし、詳しく走査すると純正ではない、人間の姿をした何か”べつのもの”が声をかけてきた。後付項目にはない容姿。氏名も不明。所属も不明。敵か味方か確認も終了してない間に、この少女の姿をしたものをガードするように動いた。動いてしまった。ブーストして接近戦闘、攻撃駆逐したあの謎の生命体も、グノーシスではないようだったが、対話ができそうもない凶暴性は近似しており、対応もおそらく間違っていないだろう。自然と勝利のセリフが発声機構から滑り出していたし。あれは敵なのだ。敵でいいのだ。
が、この少女が味方、ないしはこれからも保護せねばならぬ対象であるとは限らない。
ロデム、に現在状況を確認するのが最優先事項であろう。そう判断した。
 
 
「ありがとうございました!」
 
人間がこういうことを言うのは、たまにある。兵器が兵器としての機能を発揮しただけのことに様々な感情という色彩を重ねて判断し、論理で濾過せずにそれを言語化する。
だが、この場合、純正の人間とはいいかねる、レアリエンよりもさらに遠く、離れた”べつのもの”の言語活動である。意義的に解釈すれば、それは感謝の意である。
 
 
「・・・・・・」
 
そんなものの解釈は後回しにして、ロデムに現状を問わねばならない、と判断は終了しているのだが・・・なぜか、まじまじと、少女の顔を見つめてしまった。「ほんと、危ないところをどうもこれ以上ないってほどのタイミングで!かっこよかったー。しかも強いし!マギュアには苦労させられてきたけど、ああも一方的にやられると、ちょっとだらしないかなお前、とか思わなかったりもなんですけどー、あー、でも助かってよかったよー、ロビンソンのおじさんも!ね!」そこから勢いよく放射されるなにかが、自分の顔を固定させたのだ。
 
 
「・・・・・・・うわー・・・・ホントに似てる・・・・けど、きれー・・・うわー、レイおねえさん、未来は明るいよ、これー」
少女は何か理解不能で不思議なことを呟いている。
「た、確かにさっきはちょっとあの活躍っぷりにビビりもしたが・・・このルックスの極まりぶり・・・パーセントで言うだけのことはあるぜえ・・・」
人間男性の若い方もしきりに頷いて何か言っている。視線が胸部装甲のあたりに高い頻度で収束を繰り返しているしているような気もするが。
 
 
 
「・・・ロデム、彼らは味方なのですか?」
 
 
こちらに警戒心をもたず、接近し意義的な解釈は可能であるが、どこの記憶にも結びつかない事柄を話し続ける彼女たち。それは、感謝の意の表現なのであろう。この星の。
それは理解している。そのことをロデムに問うたのも、確認以上に話題転換のため。だったのだが
 
 
ずざっっ
 
いきなりロデムをのぞいた彼らが人間の限界速度で後ずさった。それも不可思議。
 
 
「うわっ!なんかこっちの気持ちが通じてない感じだよ!九朗さん!」
「ちょっ、ちょっといきなりフレンドリーすぎちゃったかな?もうちょっとこう、素直に下僕な感じのハートで勝利をあがめてビクトリーKOS−MOS様!!とかやって間をおくべきだったのか!?」
「おいお前ら!こっちに寄ってくんな!距離とれよ!馴れ馴れしくしてあの機械女怒らしたのはお前らなんだからな・・・・あの目は、殺る気だぜ・・・」
「いや、アンタにいわれたくねーよロビンソン。見た目カテゴリーでいうとアンタどう見ても悪者だし!KOS−MOSさんが疑うのも無理はねえっ・・ってわけで一緒にいよう」
「どうせ悪者だよ!!とにかく離れろよ!矛盾してるだろ!最近の芸風なのか!?とにかく説得の通じそうな相手じゃねえ、見た目はいいが、なんせ腹からビームだぞ!」
「うわー!言ってもうたー!言ってはならんことを!ヒカルちゃん、離れろ。これでターゲットはロビンソンに決定した。巻き添えを食らわないように離れるんだ!」
「なんだとてめえ!ハメやがったな!!待てコラ!!」
 
 
 
ロデムの説明に了解するまで、理解しがたい激しいやりとりが繰り広げられたが・・・・・・この星は、一体、どこなのだろう・・・・なんという星か・・・・
 
 
シオン・・・・
 
 
声に出さずに呼びかけてみるが、感応するものは己の体内のどこにもない。
 
 
 

 
 
「・・?今、呼ばれましたか」
通路を駆けるバビル2世がオルディナにたずねた。テレパシーのようなものが聞こえた気がしたのだ。
 
 
「いえ、呼んでいないけれど」
問うた相手がこの少年でなければ内心に意識を向けすぎていることを注意するところであるが、オルディナは簡潔にすませた。塔に入るなりメンバーが分断されたことに深い責任を感じているのか、DDと自分の前面に常に立ち、ここまで凄まじい戦闘能力を見せているこの少年に半ば、呑まれていたこともある。電撃にも似たエネルギー衝撃波なる接触の一撃でマギュアを即死させていく姿は鬼気せまっていた。DDもフォローに回らざるを得ないほど。だが、もっと巧い戦い方はある。バビル2世の消耗は激しく、駆ける足をとめることはないが、流れる汗は尋常のものではなく血の滲む服もあちこちが裂けて。時間の経過を嫌ってか、相手の攻撃をあえて受け止めるような戦い方をしていく。焦る気持ちは分かる。事実、急ぐ必要がある。一刻も早く、中枢を制圧しなければ。分断されたメンバー、特に戦闘能力がない者たちが、バラけていた場合・・・生命が危ない。メンバーの捜索より中枢制圧を強く推したのは自分だが、それでも少年の、この塔の主の責任感が急がせるのは無理もないか。作戦遂行には何より冷静さが必要となるが・・・・自分たちはこの少年を抑え切れていない。この速度を殺すべきではない、その予感もある。
 
塔はほぼマギュアの制圧下にある。塔の機能は、主を主として認識しない。
 
足を緩めては、その苦痛にこの少年は耐えきれるか、どうか。ポキリ、と。
耐久限界を越えて、折れてしまうのではないか。そんな気がするのだ。その前に。
つばさ、ヒカル、第十字九朗、アル・アジフ・・・塔の外にいるあの少年、渚カヲル
彼らの安否も気にかかる。「無事でいてくれ・・・つばさ、ヒカル・・せめて、共にいてくれ・・」DDはそちらに気をとられているようだが、バビル2世、前を駆けるこの少年もやはり、目を離せない。この問いかけも彼の心の支柱にヒビが走る音ではなかったか。
 
 
「・・・そうですか」
バビル2世もそれで終わらせた。