スーパーロボット七つ目大戦β
 
 
「その声は届きますかルート」
 
 

 
 
バリバリバリバリッッ
 
 
これで何回目のエネルギー衝撃波になるのか、バビル二世は数えていない。生命力が強く急所らしい急所もすぐには分からぬ宇宙生物マギュア相手にうまくそこを突く、力をセーブしながらの戦い方ではとても間に合うものではなかった。自らの領地、塔内での戦闘でポセイドンやロプロスといった本来戦闘担当のしもべの力が使えないのがもどかしい。
寿命そのものを削っていくような疲労とかわしきれぬ攻撃から受けたダメージと痛み。
 
 
しかし速度を落とさない。目指すは塔中枢のメインコンピュータールーム。
 
 
そのような力の使い方は自滅あるのみ・・・・塔を統べるコンピューターなら止めるだろう。ヤメテクダサイ、バビル二世、と。だがその声はなく。主の救難をひたすら待っている。
 
 
咆哮もなく怒号もなく、それこそ機械のように立ちはだかる敵を排除していく・・・
 
 
こちらの速度に合わせてくれているDDとオルディナの宇宙人ふたりがこの戦速に何を思っているのかテレパシーを使わずとも分かってはいる。確かに無謀かつ無茶だ。確実性を求める彼らのやり方とかけ離れたものであることは。それでこの二人が苦闘するのは・・・・常にたった一人で(足手まといをガードしながら戦ったことはけっこうあるが)戦い続けてきたバビル2世にとっては、同等の力をもて共闘できる者たちとの協力の呼吸を乱すことは・・・己の身を裂かれるような辛さがあった。意気を調え共に戦えたらどれほどいいか・・・どれほどの強敵と対そうと、それは喜びの内にあるものに違いない。それが
無念に胸中で哭くバビル2世。
 
 
長い長い孤闘
 
 
いつも戦隊で戦っている連中にはけっして理解することのない孤独。しもべたちにも分けることのできぬ孤独。それを理解できるのは皮肉なことに宿敵であるヨミだけだった。
しかも、三つのしもべたちもヨミにたぶらかされて何回も裏切ったことがある。
その点で、完全無欠にバビル2世の味方であるのは、バベルの塔のメインコンピューターだけだった。たまに創造者の言いつけを守って秘密だんまりしてたこともあったが、コンピューターだけは自分を裏切ることはなかった。軍師役のみならず、毒を受けた時は治療もしてくれる、何があっても自分を守り通そうとしてくれた・・・・存在。
 
 
長い長い孤闘の中で
 
 
それが何を意味するのか、どれほどの修羅場を渡った者にも分からない。
唯一人、バビル2世にしか分からない。もちろん、たまに裏切る、いや後半戦になるともうほとんど油断も隙もあったものではない状態になっていたしもべたちを信用しなくなったというわけではない。あれはある意味、しかたがない。どちらかといえば初代、バビル1世のツメが甘かったわけだ。後継者が決定した時点でしもべたちの使用権限は抹消しておくべきなのに。共有させるとは何事ですか。困りますよご先祖様というか、悪に渡すな大事なリモコン、の伝統というか、ヨミのアイデア勝ちというか。まあ、それはいい。
 
 
とにかく、バビル2世にとって、コンピューターの存在は別格なのだ。
ただの電子計算機などではない。劉備玄徳に対する諸葛孔明といえるほどの。
中身のデータを転送すればいいじゃん、ですむ問題ではないのだ。
 
 
己の所有するほとんどものとでも引き替えてもいいくらいの。
 
 
「どけ」
短い声は意思疎通の道具ではなく、殺気の塊でしかない。
 
 
バリバリバリバリっ!!
 
 
限界をとっくに超えたエネルギー衝撃波をもう一発。足を止めない。攻撃を避けることもせず真正面からマギュアを黒こげにする。中枢に近くなり襲い来るマギュアもこれまでよりさらに強い奴が出てきているが「・・・さらにボルテージが上がってる・・・」「だが、これはもう・・止められない」追走するDDとオルディナはもはやマギュアより目の前の少年にこそ怪物性を感じ始めている。ボロボロのあの体のどこからそれほどの力が湧いてくるのか・・・それが彼が引いているという地球外の血のせいなのか・・・それともこれこそが地球人の底力なのか・・・・そのどちらも、違った。
 
 
義務感や己の運命に対する理解、その他もろもろ、長い長い孤闘を支えていたもの
仲間も家族もなく、名誉も賞賛もおそらく自己満足すらなく戦い続けた彼の鎧
普段まとっていたその殻を剥ぎ取っただけ。そこにいるのは、もうバビル2世ではなかったのかもしれない。その声を、誰が聞き届けるわけでもない・・・・・
 
 
大事な存在をなんとしても奪われたくないと心の中で泣き叫ぶ、一人の少年がいた。
 
 

 
 
「・・・・・・でしょや?」
 
 
同時刻、ヒリュウ改。
 
さすがにキナ臭くなってきた現状に艦橋から非戦闘員用の個室でふとんにくるまるようにして大人しく待機するよう命じられていた少女、”ちせ”が呟いた。
地球最後の通信(ホットライン)を受信したような声で。
 
あいにく非戦闘員は彼女一人だけで、そのつぶやきを間近で聞く者はいなかった。
 
戦闘という戦闘、戦争という戦争に幕を下ろさずにはいられない、他の誰でもなく自らの創造主をこそ哀れむ、最終兵器の憫笑を浮かべながら。
 
 
<最終兵器彼女〜地球消滅ちせラストラブソングルート>へのフラグが立ちました。あと三ターンでクリア不能な場合はルート強制変更します