スーパーロボット七つ目大戦β
 
 
<アンリミテッドATワークスルート>
 
 

 
 
「そういえば、小樽の時もこんなこと、してませんでしたか」
「え、でもあのときはわたしは参加してませんでしたし」
「そいえば、ロジャーさんもそうでしたよね、あの時は」
「え、まあ・・・・・あっととと・・・このあたりで。木のカップとは珍しい・・・」
「でしたか・・・・いや、そうでしたな・・・・」
「いやー、城田さんは作戦の方はもちろんですが、歌の方もお上手で」
「そうそう、わたしもあのときは歌わせていただいて・・・楽しかったです」
 
 
ここは鳥取<怪奇温泉>。皆生きている皆生(かいき)温泉ではなく。
悪が豊作で、それどころではないはずの正義の味方たちが一息ついていても「なぜか大丈夫」な不思議な温泉である。名物はかに料理。それもなぜだか季節を問わない。
裏水木しげるロードをとおっていくと見つかるとか。
 
 
とにかく、その怪奇温泉に、ドロン・ベル、裏のロボ・クラナドである葛城ミサトを首領とした一軍団が逗留しており、若いパワーのままにどんちゃん騒ぎをやらかしている若い連中から少し離れていい感じに静かな離れ座敷に首脳部が集まっている。一応、一番偉いはずの葛城ミサトがなぜかこまごまと動いて一人で皆に酌をしていたりするのもまた奇怪。一番偉いからこそ、ご機嫌取りをせにゃならん日もある・・・・のかもしれない。
ちなみに、浴衣の着こなしもなんか妙なロジャー・スミスには升で飲ませたりもしているあたり葛城ミサトだ。ゴチバトルで負けたわけでもないのにこの席の代金は自腹だったりする。・・・・あんなこと言わなきゃ良かったなあ、とつくづく深く反省しつつ。
 
 
まあ、これからも大働きしてもらわないといけないんだし。いまのうち、英気を養ってもらわないとね。と、自らを納得させる。・・・・・それにしてもよく食べるなあ・・・・カニって最初の意気込みほどには入らないっていうけど・・・・やはり、正確無比な高速カニのむき身マシーンと化しているドロシーちゃんがいるせいかしら・・・こんなことなら若者組のほうへ追いやっておくべきだったか・・・・・ほんのわずか、ちょっとだけ後悔しつつ。
 
 
「さて、これからのことなんですが・・・・」
この席でしか話せない、本題に入るとする。ヒリュウ改の中でもしにくい、微妙な話題である。レフィーナ艦長、ショーン副長、城田氏、紫東遙、ロジャー・スミス、記録役としてR・ドロシー。まあ、予想はついていたので一同、カニの殻を壺に捨て、茶など一口すすって聞く態勢に入る。「あ、いや、そんなに堅くなんないでください。崩して崩して。せっかくここ、ほりごたつですから、楽のままで」葛城ミサトは逆にそれを制する。
今更、バビルの塔へ入る準備作業の確認でもない。そんなことは艦内でやればいいのだ。
 
ロボ・クラナドの看板をもう一丁掲げる話は、さきほど宴会場で皆に承認された。
 
表舞台に立ちたいからではない。何事も縁の下の力持ち、というものは必要なのだから。
一つの成功事例に有頂天になって自分たちの戦力を過大評価してそういうことを言い出したのなら、こりゃあまずいな、という草の根感覚をドロン・ベルの人間は持っている。
葛城ミサトもそういう心理を把握している。それで結構だと思っている。
だから、持ち出したのはバビルの塔のことだ。わたしたちに本拠地ができます、と。
しかも、ちょっとミステリアスな砂の嵐に隠された、神話にもでてくる秘密基地です、と。
秘密基地、なんつう単語には燃える連中ばかりがそろいもそろっているのだからそもそも反対される心配もない。つくづく、口がうまい、と交渉人、ロジャー・スミスでさえ思う。
 
 
バビルの塔入りした後の行動のプランはすでにできあがっている。
やるべきことはけっこうあるが、巨人ころばしのような大きな作戦行動は目下、とらない。
この首脳部の実務中核である城田氏、紫東遙の二名で十分、こなしていける。
実際の戦闘行動においても、経験豊富なデモンベインのコンビ、大十字九朗とアル・アジフもいれば渚カヲルもいるし、バビル2世もいる。ロジャー・スミスもいる。
パイロットたちの新人率も、つばさたちが機人を操作するのを計算に入れると、高い数理になろうが、心配はいらないだろう。首領として葛城ミサトが口出しするようなことはないはずだが・・・・声をひそめて
 
 
「いい機会ですから、ここらでいっちょ、パイロットたちに異文化交流してもらって・・・まーひらたくいえば、”合体攻撃”を開発してもらったりすると楽しい、いやさ、頼もしいと思うわけですよ。・・・・・・・・・皆さんの意見を”ぜひ”、お聞きしたい」
微妙に本音をもらしながら、てめえの上司、碇ゲンドウのまねっこポーズで手など組み合わせて一同を見渡す葛城ミサト。”あたしもここまでぶっちゃけたんだから、あんたたちもぶっちゃけなさいよ”・・・瞳にはそういう色もある。
 
 
なるほど、パイロットの宴会場から離れるわけである。ヒリュウ改ではなく、こんなところで切り出すわけである。確かに、酒の力を借りねばならないだろう。言う方にも言われる方にもこれはちょっとクッションが必要となる。ただの酒飲み話で終わらせる気はないのなら。ほんとに実現させるつもりならば。限界を突破させる意志があるのなら。
 
 
だが。
 
いくら、奢りのかに料理がうまかったとはいえ、そうあっさりと乗ってしまうわけにもいくまい。・・・・異文化交流といえばきこえはいいが、へんな組み合わせをやったばかりにロボット同士の大喧嘩勃発!てなことになったらかなわない。戦闘になれば、敵を前にしてパイロット同士の連携が冴えることもあろうが、技の開発とはまた違う。
それぞれ顔をみあわせる一同。まあ、正常な反応といえる。
 
 
「それでまあ、ちょっと私もひとつ、考えてみたんですが・・・・・・・」
ごそごそと懐からなにやら紙切れをとりだす葛城ミサト。どこぞのコピー用紙のようなそれをのぞきながら・・・・・・・・「なになに・・・・・えーと」
 
 
 
[技名]
ATワークス/レムリアインパクト・キュボラプリズン
 
[使用ユニット]
デモンベイン/エヴァンゲリオン零号機・弐号機・四号機
 
[内容]
出力暴走モードのレムリアインパクトをATフィールド3重結界の内部に封じ込
める。脱出不能の原子炉牢獄の中に敵を封じ込めて超飽和熱量の中で灼き尽くす。
 
 
 
「・・・・・・てな感じの技です!!どうです?すごいでしょう!!」
勢いで押し切るつもりで、皆を見渡す葛城ミサト。
 
 
「・・・・・確かにすごそうですが・・・・・・ところで、その紙切れは」
「なにかをコピー印刷したような感じ・・・葛城さんの筆跡じゃないわね」
「あ、誰かの名前がかいてあった・・・・・・ような気が。ちらっと見えました」
城田氏、紫東遙、レフィーナ艦長がそれぞれ感心するより他を追求。
 
 
「・・・・・ほんとうにご自分で考えたんですか」
目がすわっているロジャー・スミス。升で飲まされたせいもあるが、ビッグオーの技でないことがあんまり面白くないのである。
 
 
「え?・・いやー、まあ、そんなことはいいじゃないですか。あ、まだあるんですよ」
続いてもう一枚、紙切れをとりだす葛城ミサト。
 
 
 
合体技名:アスカダイナマイト
ユニット:エヴァ零号機、弐号機
技説明:零号機支援のもとATフレイムをまとった弐号機が敵に体当たり。大ダメージ。
 
決めぜりふ:
アスカ「こんのぉーっ!!!!」
レイ「・・・ウルトラってなぜ言わないの・・・」
 
解説:タロウの技が元ネタです。本家は爆発再生しますが・・・。
なんか合体攻撃じゃないような。
オマケ設定:体当たり後アスカが「もう二度と負けらんないのよ、このわたしは
!」と叫んでプログナイフで敵を切り裂き、殲滅することがあります。
この場合、確率変動に入り、以後のアスカの攻撃の命中率がハネあがります。
命中率が増大する攻撃回数はランダム。
 
 
合体技名:歓喜の歌
ユニット:エヴァ四号機、ラーゼフォン、ミーゼフォン、ロプロス
技説明:渚カヲル指揮による唄と超音波による音響攻撃。ジェリコの壁も崩れま
す(笑)。
決めぜりふ:
カヲル「うたはいいねぇ・・・」
神名綾人・美嶋玲香「「・・・・・・(汗)」」
ロプロス「・・・」
 
 
 
「・・・・てな感じの技なんです。どうですか?」
今度は多少は遠慮がちにたずねる葛城ミサト。
 
 
「正直に話した方がいいんじゃないですか・・・・・・・しかも決めぜりふまで」
城田氏の真摯な目から、口笛ふきながらそっぽむいてかわすドロン・ベル首領。
「な、なんのことかしら・・・・・・・・」
じろっと皆の目が集中する。もしかして、自分たちにも秘密にできるとおもっているのであろうか。
 
 
 
こんこん。そんな空気を救うように「よ、よろしいでしょうか」女の子の声がふすまの向こうから。仲居さんではもちろんない。
 
 
「ああ、ちせちゃん?どうしたの」
助かった葛城ミサトはいそいそとふすまをあける。