スーパーロボット七つ目大戦β
 
 
 
<キングゲーマールート>
 
 

 
「バビル2世さんの”ちょっといいところ”実行確認終了!やりました、ちせちゃんに続き、彼もやってくれました!」
 
 
宴会場の司会役らしい21世紀警備保障のOL三人娘のマイクコールが会場をどよめかせる。ヒリュウ改に最低の人員を残して、ドロン・ベル、ロボ・クラナドの人員ほとんど参加とあって、かなりの盛り上がりである。まあ、こうして余裕で大騒ぎできる機会はこの先そうもないであろうから、その意気も上がろうというものだがそれにしても。
 
 
「さすがだなー・・・・・・・・まさかあの葛城さん相手にやれるとは・・・」
「他の人間なら逃げただろうなー・・・・・いやあ、彼にしかできないよ」
「肩もみくらいが、限界でしょ・・・・誰よ?あんな血も涙もないオーダーだしたの」
「目的詞と動詞がべつべつだからなー、さっきだってちせちゃんが当たると知ってたら、葛城親分は出さないだろー、そのあたりがスリリングでもあるんだけどよ」
 
 
実のところ、先ほどまで指令をうけてバビル2世が宴会場を出て行ったあと息をひそめて成り行きを見守っていたのだ。指令が果たされたかどうか、見届け役が実行確認!の報告をここにいれてくるまで。さすがにモニターをしかけて皆で見物するほどの野暮はやらない。見届け役が無線連絡してくるところが、おもしろいのだ。こういう遊びは。
 
 
いわゆる、「王様ゲーム」の大人数バージョンである。
 
一人の王様が全部決めてしまうのではなく、数人の指令役が、文節を区切って指令をつくりあげる。ゆえに、わけのわからん指令ができあがることもたまにある・・・・・というか、ねらうことができない。
 
良くも悪くも。そのため、こうやって犠牲者ができあがることもある。
 
しかし、同情はしない。次の犠牲者は自分かもしれないのだ。ちせと、バビル2世も、となるともはや聖域はない。実行役に自分が当たらぬことを祈るだけ・・・・または、当たることを願う。遊びはスリリングなほど面白い。皆、目はギラギラ、口元はニヤニヤしながらゲームを楽しんでいる。ちなみに、その回で当たった者は次は一回休みとなる。
 
 
さきほど、惣流アスカたちにはげまされて勇気をふりしぼったちせも、運が悪ければまた当たるはめになる。
 
 
「それではお次の指令作成ターンにまいりましょー!」
 
 

 
 
「そんなこったろうと思った・・・・・・・・・・あの、ごめんなさいね」
宴会場の前までやってきて扉からも漏れ出る内部の熱気と盛り上がりに、やめさせるわけにもいかず、それでも一応、バビル2世に謝っておく葛城ミサト。もちろん告白の返事ではない。若い衆のバカさをなんとかかんべんしてやってください、というニュアンスの。単純に怒ってくれればまだなだめようもあるが、こう真顔のままで、実に横山光輝的というか、変化のない表情をされると、なんかこわくなる。奇妙なことに、超能力少年であるから恐ろしい、とか言う考えは葛城ミサトにはないのだ。
 
 
この真面目人間にゴーストスイーパー美神の横島クンみたいなことをいわせやがって・・・・・・・外見こそ少年だけど、作品的にいえば一番の古株なんだから実年齢は・・・・
 
敬老精神ってもんがないのか
 
なんてことを腹の底の底の方で考えていたりする。実は口にするならそっちの方がバビル2世のカンにさわるのだが。
 
 
「いえ、気になさらずに。鋭気を養うことも長い戦いを戦い抜くには必要なことです。
・・・・・僕は、長い間、そんなことにも気づかなかった」
ふと寂しげな笑みをみせた、と思ったが、気のせいかもしれない。
 
でも、それなら、これでよかったか、とも思う葛城ミサト。実のところ、バビルの塔の主として自分たちと一緒に座敷に呼ぼうかな、とも思った。騒がしいのは好きそうではないし。外見に惑わされたわけでもない。
 
 
「そう・・・。それじゃ、わたしは戻るから。さすが三連続でネタにされないでしょ」
そう言って戻りかけた葛城イヤーが扉の隙間から漏れ出た聞き逃せない単語をとらえた。
他の客に迷惑がかからぬ防音にはなっているはずだが、それを越えるどよめきも連れて。
次の犠牲者である。自分がそれにあたったとしても、シャレであるから笑い飛ばすが。
 
 
「え・・・・・次は・・・つばさちゃん!?なんかねらってないこれ!?」
「しかも、対象者は・・・・大十字九朗・・・・彼ですね」
バビル2世もバビルイヤーで聞き取って、多少、考え込む顔をする。危惧、かもしれぬ。
 
 
つばさが、大十字九朗に、「なにか」をする・・・・・しなければならない・・・・
 
 
せいぜい、肩もみくらいですめばいいが・・・・・だいたい、こういうゲームはだんだんエスカレートしてくるもんであるが・・・