スーパーロボット七つ目大戦β
 
 
<かなえたいことはありますかルート>
 
 

 
 
行動方針が決まったところで、各自動き始めているロボ・クラナド。
まずはヒリュウ改にわかりやすい手柄をあげさせる、である。要するにヒリュウ改をこのまま自分たちの足に使わせてもらえればいいのであるから、そのわかりやすさにはざっと2パターンある。”世間様認知型”と”軍に恩着せ型”である。
やりやすいのは当然、世間様認知型である。幸い、というか今年は悪党が豊作で、ぶっ飛ばして喜ばれる悪党はさがすまでもない。正義のスーパーロボットとしてこれに勝る仕事はない。ロボ・クラナド内の人員のほとんどが、自分たちの成すべきことはこれのことだろうと思いながら動いている。まったくもって正しい。が。
 
 
「もうひと味、ほしいわね・・・・・・」
ロボ・クラナド代表、ドロン・ベル首領、葛城ミサトはそう思うのである。
そのための軍に恩着せ型。そのための状況が起こらないとやりようがないのが難点だが。保証の面、効果の面からみても、ついでにいうなら経済的観点からいっても、たとえ世間的にはおおっぴらに出来なくとも、出来れば恩は売っておきたい。そして、・・・・これは葛城ミサトの胸ひとつにおさめて口には出さないことだが、レフィーナ艦長をはじめとするヒリュウ改クルーの”念願”を叶える。
 
 
それは、もともとヒリュウ改に配備されていた強力ロボットたちの”出戻り”である。
 
 
戦闘が激化するごとに引き抜かれていったロボットとパイロットたち・・・それらをもといたヒリュウ改の手に取り返す!
 
 
僭越も甚だしい考えではあるが、腹の底でそんなことを沸々考えているのである。
 
 
できれば、斬艦刀をふるって戦艦を叩っ斬るという豪快極まる戦艦殺しのグルンガスト参式、座長クラスの機体とそのパイロット、元教導部隊、という経歴をもつゼンガー・ゾンボルト、これが欲しい。言うてみれば新人をびしびし鍛えてくれる教官役である。
人材的にぜひとも欲しい。戦艦を斬るところもこの目で見てみたいし。
あとは地球圏最後の番人、の異名を持つジガンスクード。刀と盾であるから矛盾しない。
さらに欲を言えばアルトアイゼン、ヴァイスリッター、あたり。
 
 
もちろん、パイロットたちにはそんなことは言わないのである。世間智というものだ。
取り上げていった軍の方から転属書類つけて送り返してもらえば、まるくおさまるわけで。
そのために、自分たちの実力を認めさせる必要がある。それには、まあ、軍の作戦行動でどこかの地域がピンチになってもらわないといけない。機を見る、というのはそういうことで。バビルの塔にて、ドロン・ベル首脳部はそんな機会を眈々と伺っていた。
 
 
パイロットたちはあいかわらず、レベル上げと合体攻撃の特訓に余念がない。
 
「テレビアニメで言えば3〜4話めってところかしら」
「いや、合体技の特訓はやはり2クール目にはいってますよ」
その様子をみながら葛城ミサトたちが内心の腹黒をかくしてこんなバカなことをほざいていた。
 
そんな中、フィギュア組、宇宙人たちが、正確にはいろいろと工作が得意なオルディナが、試しにとやってみたアイデアが、皆が目をみはるほどの大成功をおさめていた。
もちろん、合体攻撃の応募がなかったことへの腹いせなどではけっしてない。
なにくそ、見てなさいよと思う心こそ地球人なのみならず、宇宙人もやはり成長させるらしい。基本的に肉弾戦派のDDと違ってこの手の小細工が好きなのだった。
 
 
それは、ヒリュウ改に申し訳程度に配備された「ボール部隊」のチューンナップである。
七体のボールを宇宙技術で改造した結果、おどろくほどの戦闘力を発揮しだしたのだ。
 
 
・・・・・・・スペック的には、よくわからない。しょせん、元がボールであるから。
 
ところが、七体集まって部隊をつくって動かしたら、とにかく強い!なんせ模擬戦とはいえデモンベインが苦戦したくらいである。最初は苦笑していた大十字九朗とアル・アジフも最後はかなりマジになってしまい、あやうく禁断の光り輝く武装を召還するところであった。とにかく強い。ATフィールドもないくせに半端な攻撃はハネ返してしまう。
いくら宇宙改造でもそんなまねは不可能。「まさか、そんな・・・」改造した本人も驚いているくらいだ。あくまで偵察用としか考えていなかったのだから。
 
 
どれどれ・・・・・・と試した、他の者たちもえらい目にあわされた。
最近の特訓とレベルあげのおかげでちょっくら天狗になりかけていた神名綾人など、こてんぱんにやられた。あとで美嶋怜香になぐさめられるのだからいいとしても。
 
 
・・・・・・・まったくもって理由は不明。ただ、ボールの数が六体でも八体でもダメなのだ。とたんにただの鬼太郎なしの目玉オヤジロボとなる。七体でなければ。
 
 
「うーん、裏技かしら・・・・・」首脳部でこの現象について議論したがよく分からない。
バビルの塔のウルミルダルも回答不能を提示した。この事実を広く公開するかどうか、悩んだが、「まあ、もう少し様子をみてからにしましょう」ということで落ち着いた。
 
 
・・・ついでに付け加えると、そのボール小隊にかきまわされた時から、また大十字九朗とアル・アジフのコンビネーションが元にもどってきた。両人とも強敵を前にすればするほど燃えあがる性、つまらぬ確執もそのときにあっさり灰になってしまったのだろう。
それに、いかにもケンカしそうな惣流アスカとアル・アジフがかえってそのワンステップを踏んだことで、鈍い大十字九朗へのぼやく少女同盟、といった関係を結ぶことになり、話がスムーズになった。そうなればもともと技も力のある者同士、合体技という四重奏、キュボラプリズン生成もうまくいきはじめた。これでもし、惣流アスカ=エルザ、綾波レイ=アル・アジフなどという図式ができたらとんでもないことになっていただろう。
 
「博士、エルザも合体技がやりたいロボ!破壊ロボでどうにかならないロボ?」
「いまは機人の調整で忙しいのであるが・・・もう少し待つのであーる!」
「博士はエルザとヒカルのどっちが大事ロボ!」
「はへっ?!この大天才ドクター・ウエストがそんな、なーるほど・ザ・小市民な選択肢を迫られる日がこようとはっっ!!思わずアゴがはずれるほどの高笑い決定っっ!!しかし今こうしてトンファーをもって目の前に突きつけられると・・・・・・博士、困るロボ」
うまくいきゃあいったで、また違う方面に騒ぎを引き起こしながら・・・・・
 
 
ともあれ、戦力が増えるのは喜ばしいことであった。まだあまりきつくない戦場を選んで戦っているため、どっか油断があった戦闘慣れしている者たちにはいい刺激にもなった。
 
 
そして、鳥取の砂丘はバビルの塔より鵜の目鷹の目ヒリュウ改に手柄たてさせる作戦のターゲットが決まる、その一日前のこと。
 
 
 
「たのもう」
 
 
と、バビルの塔前にロボットが一体やってきた。そして砂嵐と陽炎の門を叩く。
まさか今頃入隊希望がくるとは思わなかった一同は、かなり驚いた。