スーパーロボット七つ目大戦β
 
 
<会長は首領よりえらい?!えらきゃ黒でも白くなる?ルート>
 
 

 
「皆さんの活躍には前々から注目しておったところでしてな・・・・いやいや、謙遜なされるな・・先だってのティターンズのことやらも皆さんが影で糸をひいていたことも承知しておりますでな、ロンド・ベルがこてんぱんにやられて亡き後、我が世の春を謳歌する悪党どもに少戦力にても敢然と立ち向かう正義の心意気をしかと感じましたぞ!いや実に!」
 
 
「はあ・・・・・ありがとうございます」
葛城ミサトは辟易しながら金田正太翁の話を聞いている。年寄りの話は得てしてリピートがちではあるが、伝説のロボット操縦者もそれに漏れずに、同じような話を繰り返してくる。
ほめてくれるのはありがたいが、そろそろ本題にはいってもらいたい・・・・いや、はいるのはこっちか・・・・・・はあ、どうやって「お断りする」べきか・・・・。
鉄人を伴ってきたのだ。ただこっちをほめるためにきたわけじゃなかろう。参戦の意思は明確。
 
少々、胸が痛む。
 
 
熱意はあるし経験も豊富、歴戦の勇士中の勇士といっていいくらいのキャリアの持ち主で、一気にパイロットの平均年齢があがることになる。・・・・・・確かに望ましいことであるが、ものごとには限度がある・・・・・限度ってものがあるでしょう・・・・
こんなご老人の力を借りたとあっては、いい物笑いだ。
 
 
鉄人28号・・・・しかも、ビッグオーとかぶってるし。ロボ的に。
 
 
「ジャイアントロボの草間大作君にはたびたびお呼びがかかっているようですが、小生には残念ながら今までロンド・ベル隊よりお声がかかることはなかったのです。ですが、老いたりとはいえ、ロンド・ベルが倒れ、こうも悪党が跳梁跋扈している現状ではのんきに隠居などしておれませんでな!。こうしてドロン・ベル殿が最近、名称を変えられバビル2世君のところに陣取りをしたなどと聞いたもので、こうして鉄人とともにまかりこした次第」
 
 
ロンド・ベルではなくこちらにやってきたのは、昔の人らしく「義によりて」ということらしい。小戦力の君たちががんばっているのに感じ入ったから味方しよう、ということでありその志は高いし有り難いし、小学生が戦っているくらいであるから教育的効果も非常に高いといえる・・・・・だが、まあ・・・・確かにびしびし新人を鍛えてくれる役を期待はしたが、口だけ達者で実際に戦わない、という人材は、はっきりいっていらないのだ。
 
 
その姿・・・・戦士であるかどうか見れば分かる。少年探偵として鉄人とともに悪党と戦っていた金田正太郎は歳をとり、金田正太翁となった。その間「ずーっと」戦ってきたわけではない。強い意志を秘めた大きな目玉と大地を串刺しにするような立派な時計髭はともかく、その明らかに新調したらしい、コートとスーツと帽子、昭和初期の探偵ルック。その間はおそらく別の服、着物かもっと高級な背広か、その貫禄を包むにふさわしい装いをしていたのだろう。半ズボンということはさすがにないが、老いた身から発散される金持ちオーラはいかんせん、古式ゆかしい探偵ルックとは相性がわるく、似合わぬと云うのではないが・・どうしても浮いている。体をはって悪党から街を守る仕事も尊いが、この人物は年を経てもっと責任のある巨大な仕事を成し使命を果たしててきたことは、葛城ミサトには分かる。その両肩、背には言うに言われぬ苦労がのっていたのだと。引退した大企業の会長のごとく。経営判断は下せても実地に営業などはもうできない。
 
 
それを理解することと、部隊に引き入れることは、異なる。といいますか、「あとはおまかせください」としかいいようがない。この歳じゃもう経験値も意味ねーだろうしなあ。育て甲斐がないというか。ブランクを経て衰えたもんは、経験で再び育つというわけにもいかない。まさに、年寄りのヒァウィゴー!じゃなくて冷や水。やめといたほうがいい。
 
 
ちなみに、熱意あるお年寄りに向かってむごいお断りをいれる役など誰しもごめんであり、応対するのは葛城ミサト一人。つばさたちの場合と違って、扉の外でパイロットたちも立ち聞きなどしていない。そこは武士の情けというか、結論は知れきっているのだから、あえて葛城ミサトの苦労を覗くこともない。それよりも、巨大ロボットの元祖、おそらくもう目にすることもない骨董品、とりあえずバビルの塔格納庫に入った「鉄人28号」を見学させてもらっていた。礼儀として整備員が砂落としなどをやっている現場でパイロットたちがそろって「ほー」「へー」「これが・・・・・」「なんともはや」「ある意味、すごいわね」「どっしりはしているが、あまり格好よくはないな・・・」「ああ、鎧武者のイメージはないな・・・国産なのにな」「メンテナンスは行き届いてるみたい・・・装甲の材質も変えてあるんじゃないかしら」「そうじゃなかったら困るだろ?技術は日進月歩なんだ」「でもよ、マジンガーZなんてずっと超合金Zだろ?」・・・・”歴史”を感じていた。
 
 
「せめてご子息とかなら・・・・」
城田氏、紫東遙、ロジャー・スミスなども、同席を微妙に避けて(それを求める葛城ミサトを見捨てたわけである)さすがに覚えないわけでない後味の悪さを雪ぐために金田正太翁の背景を探っていた。まさか罠であるとか人間爆弾であるとかいう可能性はないだろう・・・そういったヨミが使いそうな手段はバビル2世がサーチして安全を確認されているから塔にいれたのだ。はっきりいって、鉄人28号は、予想通りの骨董品であり、現代の激戦に耐えられるとは思えない。ひととおりに見ただけですが、と但し書きがつけられてはいたが、それが整備の方からの評価だった。
 
 
家族の方も年寄りがこんな突飛な行動に出てさぞ驚いていることだろう。死に場所を求めているという感じでもない、正太翁は歳を喰ってはいるが気力は横溢しており、自分の足でちゃんと立ってリモコンもちゃんと操作できる。達者なものなのである。
それだけに、必死に探しているかも知れない。なんせ鉄人もいっしょなのだ。
彼に二代目、三代目がいてもおかしくない。というか、もはや彼らの時代だろう。
それが出馬せずに、老骨に鞭うって正太翁がでてきたということは・・・・・・
 
 
「なかなかガードが高いな・・・・・・」
金田正太翁が一財産どころか百財産くらい築いたのは、こうして鉄人を持って来たことでも分かる。骨董品を維持するのは金がかかるのだ。しかし、どうやって築いたのかは分かっていない。あの眼光から後ろ暗い行動は考えられない。神様が少年ヒーローが苦労しているのを見て、その苦労に同情して天から百兆円くらい投下してくれたのかもしれない。いやマジで!・・・・・それくらい城田氏、紫東遙らの手際をもってしてもてこずる。
いや、彼らも人間であるから、あえて”てこずりたかった”、のだとしても責めることはできまい。
 
パイロットたちは歴史の見学、城田氏たちは調査、そうこうしているうちに・・・・
 
 
わりあいに時間がたっていた。
 
 
応接室からまだ金田正太翁も葛城ミサトも出てこない。電光石火にコトを済ますかと思っていたが意外に・・・・・まだ断り切れていないらしい。
 
 
「まさか・・・・昔の方ですから・・・・”ここで断られては男子の面子がたたぬ。腹を切る!”とかいうことになっているのでは・・・・・なおかつ、ミサトのことだから止めもせずに介錯とか・・・」
時間を確認して、ちょっと不安になったらしい紫東遙が冗談紛れてそんなことを言う。
 
 
「いやまさか・・・・・しかし、遅いですね」いくら城田氏が堅物で真面目でも今のが冗談であることくらい理解できる。結論はすでに出ている以上、自分たちの知る葛城ミサト、ドロン・ベル首領にしてロボ・クラナド代表が、こうもてこずるとは・・・違和感がある。
 
 
「ドロシー、お茶を取り替えにいってくれないか」付き合いが二人より長い分、違和感がよけいに強いロジャー・スミスが気を遣った。ドロシーはなぜこの三人がそんなに心配するのか分からなかったが、とりあえずお茶も冷めたであろうから頼み通りにメイド役をなすR・ドロシー。アンドロイドであってもそれが”様子もみてこい”、という隠語であることくらいは見当がつく。
 
 
そして
 
 
「行ってきたわ、ロジャー」
R・ドロシーがもどってきた。「で、どうだったね、あの二人の様子は」尋ねるロジャー。秘書役の優秀さがちょっと自慢。
 
 
「二人ともかなりうち解けているわ。今後の作戦行動の展開とか、新人の育成についても話し合ってる・・・・・・あの人・・・・もう、仲間入りさせたのね」
 
 
ぴくり、と動くロジャー眉毛。だいぶ世間の風にあたり、人情の機微を理解してきたと思っていたがやはり、そういった面はまだまだだよ、R・ドロシー・ウェインライト!
そんなことはあるはずがない!と断固として言いたかったが、それくらい二人の話術の鍔迫り合いが厳しい、ということなのでドロシーを責めるのもかわいそうだ。
秘書役の間違いは己の間違いでもあるのだ。他の二人も驚いた目でこちらを見ている。
 
「そ、それは、多分勘違いだろう、ドロシー」
 
「では、仲間でもない人間に作戦行動や構成員についての情報、機密をトップの者が話したというの?」アンドロイドの追求は厳しい。そのあたりから判断すれば確かにそうだ。
 
「そ、それはそうだが・・・・・」交渉人かたなし。言葉がないロジャー・スミス。
それが本当であるのか、ドロシーの勘違いであるのか、夕食の時間になるまで葛城ミサトたちが部屋からでてこなかったのですぐには分からなかった。
 
 
仲間が増えることに異論などないが、それにしても、それにしたって・・・・・・
年齢制限はあるだろう、やっぱり。アル・アジフ君は外見年齢とするして、だ。
 
 
まさか、こんな黒を白くするようなことは・・・・・・・・