「それにしても」
 
 
完全な人間などいないが
 
 
「アレは、おかしい」といったところで、会議室にいる皆の見解が一致した。
 
 
完璧な人間なんていないけれど
 
 
「とにかく、いくらなんでも」
 
 
誰あろう、碇シンジのことである。
 
 
ちなみに本人はここにはいない。初号機ケージ内に張ったテントの中で寝ていた。
 
 
冬月副司令以下、ネルフ総本部の主要メンバーが一所に揃って、子供の話である。
 
 
普通ではないが、話題の彼が、「まさしく・おかしい」のであるから仕方がなかった。
 
 
エヴァ初号機専属操縦者、サードチルドレン、中学2年生、碇シンジ
 
 
というのが、彼の肩書きであり、以前はそこに碇ゲンドウ総司令の息子、とかいう項目もくっついていたりもした。
 
 
エヴァ初号機専属操縦者、第三新東京市冷度管理人(フリーザー)、碇シンジ
 
 
などと名乗り、毎日三分間だけ初号機に乗り込んでは、ゴドム、無尽冷気塊の処理にあたっていた。もし、彼がそれをやらなかったらどうなるか・・・・・マギに計算させぬでも14分の冷凍刑、実際にくらった身としては問答無用の実理解がある。ここにいる全員、それは分かっている。それは英雄的行為である、と。ちょっと一人称がカチンと来気味でも。ちょっと口調が極悪宇宙人の首領みたいでも。それだけは確かなこと。
 
 
目にもみえる底無しの雪球・・・・・攻撃と言うよりは天災の類であろう。もはや。
 
 
それに抗える者がいないのであれば。そのように呼んで諦め慰めるしかない。だが。
 
 
彼が、災いを、呑んだからこそ 
 
 
こうして、自分たちが動けているのだと。理解は、しているのだ。
 
 
冷気に固められ停滞していれば、世の流れは情け容赦なく、自分たちを置いていく。
これも一つのタイムトラベル、などといなす余裕などあろうはずもない。愚の刑罰だ。
かけるにも、かけられるにも、愚の一字。人類知の光などない、黒い霧・・・・。
 
 
まあ、それはいい。自分たちも毒霧を吹いたことがない、とはいえぬ身だ。
 
 
そして、自分たちは、一応、それを回避した。
 
 
 
「赤木博士」
 
冬月副司令が、赤木リツコ博士に呼びかけた。「”術式”は成功、といっていいのだろうか・・・・・妨害に妨害を重ねられ、手順の完遂も怪しいのは分かるが」
 
 
無茶な問いではある。”術式”、と聞いて見当のつく者しかここにはいないが。そんなこと当人かその両親に聞くべきではあるが、この場においては彼女しかいない。
 
 
「・・・・・・・・」
我が世の春、みたいな顔をした東方賢者は、今までのように即答しなかった。
 
しばし。
 
まとわりつく二人の幼子を穏やかにほどいて・・・・話は聞いていたのだろうな・・・・まあ、東方賢者であるから子供と遊びながらでも当然、理解はしているのだろう。
伊吹君が微妙な表情をしているが。
 
 
「ほぼ、成功、といえるでしょう。時間が限られた、とはいえ初号機も起動可能。肉体的な欠損、健康障害もありません。もとからそうでなかったとはいいませんが・・・・彼は、碇シンジ君は、”血の通う、普通の人間”になった。彼の子供も、そうなるでしょう」
 
 
洞木ヒカリ、鈴原トウジ、綾波レイ、といった子供もいたが、省略がないのはそれが肝心なことであるからだ。「<コピー>も、おそらく作成可能でしょうね」
傍らに月の童子を侍らしていても、東方賢者に揺らぎはない。侍らしているからこそ、かもしれないが。初号機を使える、という事実には変わりなく、本人が何をほざこうと業界のど真ん中にいるのは間違いなく、簡単にも難しくにも、足など洗えるはずもない。
 
 
肉体現象的に、強幽霊無敵精霊状態であるかわりに、「未来」がない・・・・
 
 
使徒に対する必殺の毒、である、という事実を必要とされる状況は幸福か。
 
 
そんな十字架を背負っていたわけだが、この度、なんとかその解除に成功した。
 
 
言うなれば・・・・・・・”こぼれた碇シンジはまたくめばいい術式”。
 
 
全体を把握していたのは、碇夫妻と冬月副司令、そして、渚カヲル。
 
正確には渚カヲルがだいぶ上塗りというか針を進め補正をかけたようだが・・・・。
赤木博士にしてみても、あとから追跡認知して理解している領域も多い。
雨だの左手だの鉾だの槍だのそこに至るひとつひとつのピースは関わったそれぞれが強烈な実感をもっているが。
 
 
大山鳴動して鼠一匹というか、都市震撼して子供一人というか。
 
 
死人が甦ったとか、聖者が街にやって来たとか、使徒が勢揃いで頭を下げにきたとか、
ものすごい奇跡が起こった、わけでも、ない。むしろ、異常だったものが普通な、正常になっただけ、というか。凄まじいものを、すごくないようにした、というか。
スーパーから、スーを抜いて、パーマンというか。SUGOKUをSUKOSHIにした、というか。とはいえ、それが目的なのだから、達成できたのなら、それでいいのだが。
 
 
命のかたちも魂のかたちも未だ解明できない医療機器だが、可能な限りの検査を行ってみたところ、これといった異常は発見できなかった。としか、科学者は発言できない。
 
 
多少、言動がおかしかったからといって、術式が失敗したかどうかなど。
 
 
断言できるのは、せいぜい、あんな術式など、もう二度と行えない、ということだけだ。
 
 
ただ・・・・・・・
 
 
 
「サウダージ、トスカ、恨(ハン)、ふさぎの虫、暗愁・・・・・」
 
東方賢者のその声色に、その場のほぼ全員が、ぞぞぞ、と背筋震える。
 
 
「再誕、生まれ直し、といっても赤ん坊のそれとは違う。むしろ、一段階進んだ、精神的な成熟、と見るべきなのかもしれない・・・・・」
 
その目はどこを見ているのか、少なくとも説明ではない。独白に近い。
 
サウダージとは、あえていうならブラジル風味の孤愁であり、トスカ、とは、露西亜的メランコリーであり、いったんそれが目をさますと、突然自分たちの住んでいる村に火をつけて全員がどこかへ飄然と旅立ってしまうような、どうにも”くらあい”心情である。
恨、というのは韓国式で、なんともいえぬ無気力感。ふさぎの虫、とは、心臓の横に隠れていて弱り目祟り目の時にこそ活動を開始して「ガブリ」と一撃をくらわす性格の悪すぎる憂鬱のことであり、暗愁とは、古式ゆかしい和風、いずかたともなくおとずれてくる深い愁いのこと。
 
 
「シンジくんも、少年の殻を破り、大人になりかけている・・・・・そう、チルドレンからチルドマンに・・・・・・とはいえ、やっぱりおかしいわね」
 
東方賢者はわざわざ皆につっこませて余計な時間を浪費させたりしない。
 
「なにかが欠けているのかもしれないけれど・・・・・パーツは最強の吸引力で自然に集まるようになっている。合体ロボと違って、肉体強度、生命存在的には弱くなるわけだからその点を好んで妨害する敵もいなさそうだし。打倒にしろ殺害にしろ誘拐その他敵対行為・・・”通常の”取り扱いはしやすくなるわけだしね・・・・さて、ミッシング・パーツはどこなのかしらね」
 
 
赤木リツコ博士にも分からぬものが、おいそれと他の者に分かるわけもない。
 
そんなレーダーを造れるものなら、とっくにこの場で見せびらかしているだろう。
にしても、ちょっといろいろとぶっちゃけすぎではなかろうか。もう少し表現をオブラートに包むとか。まあ、これでドン引くようならこの場にいる資格もないのかもしれない。
 
 
「原因は、はっきりしてるんじゃないですか?」
 
そこで揶揄するは少年の声。「あまり建設的な言い方じゃないな・・・・子供の進路相談室じゃないんだから。要は、碇シンジ君がこの先もエヴァ戦闘の用に耐えられるかどうか、ということ。どうも、現状では無理のようだし・・・・・その点、”トドメ”を指してしまった誰かさんは責任をとるべきじゃないですか?」
 
 
反対とも賛成ともいいかねる、なんとも微妙な、グレーな空気が流れる。
 
 
火織ナギサであった。他の者が言えぬであろうから、碇シンジのために、言ってやった、わけでもなさそうだった。外見は渚カヲルくりそつであるが、心の内は分からない。
 
指摘された”誰かさん”に皆の視線が集まるのは、自然なこと。
ただ、ガン見なのは恐れを知らない幼子ふたりのみ。大人は微妙なチラ見である。
 
 
綾波レイ、イコール、誰かさん
 
 
「とれ、というのなら、とります」
 
視線を集めようと、まるきり態度が変わらない赤い瞳の少女。
第三新東京市における最強生物の座を奪った伝説。これまた内心は分からない。
 
 
ただ、その行動はものすごく分かりやすかった。
 
 
14分の冷凍刑から、一番最後に目覚めた彼女だが、その後の行動は一番素早かった。
結果をともなう行動としては間違いなく最速。その決断は反射なのか本能なのか。
とにかく早い。初号機に作業現場に零号機で乗り込むと、言ったのだ。はっきり。
 
 
ゴドムの雪球を、食い尽くせ、と。
 
 
そんなレロンレロンちんたらショリショリいってないで、もっとガッツリいかんかいワレ〜!お残しはゆるしまへんで!!と、ばかりに、大食いどころか、もはや超喰いである。
 
それを、強要したのだ。人類の所業ではない。いくらなんでもそんなことできるはずが。
 
 
食い尽くした。
 
 
かなり往生したようだが、なんとかやってのけた。偉業といえば偉業だが、一人で己の意思のもとにやってのけたなら、ひどく感動的な場面になったはずなのだが。零号機がそばで監視しているだけで、放課後、苦手な給食を詰め込んでいるかのような、かわいそうな小学生な感じになってしまうのは、なぜか。
 
 
「のこさないで」
 
「全部、たべて」
 
 
内に秘めた気合いの度合いはとにかく、発言はそれだけで。説得でも懇願でもない。
 
よほどの弱みを握られていようと、いくらなんでもそれで従えるはずもない。現状でも英雄的行為なのだ。どんな悪徳バーターでも代償交換されたとみていいだろう。
それを越えよ、などとどこの幻想王国の王女が頼もうと出来るわけが。
難題解決のため、竜を倒すのではなく竜になれ、と勇者に命じるような。
 
まさに問答無用御意見無用国の狂王女。しかもてめえは相手の言質を取っていた。
 
 
それでも、キャラクター変換を果たした碇シンジには通用せぬだろう、と誰もが思った。
今までの芸風とは明らかに違う。誰のいうことも聞かぬ冷血無慈悲の首領キャラ。
「脳に冷気がきた」と綾波レイほどばっさりいかずとも、「そういうことなら仕方がない」と皆が思っていたところであった。鈴原トウジでさえ、半分諦めかけていたのだ。あまり暑苦しく押すと、薄氷のように魂がパリン、と割れてしまうのではないか、という恐れもあった。天罰を人の身ひとつで受ける、というのはそういうことではないのか、と。
いくら相手が美少女だろうとブチキレる時は、ぶち切れる。それが人間。
 
というか、自分が言われたら、絶対そうなるだろうなあ、とほとんどの者が思っていた。
 
 
だが・・・・・・
 
 
「え?ここで全部呑み込むと、桜が咲きませんよ。植樹の手配とかもう・・・」
 
どこで覚えたのか本部の予算を勝手に持ちだして、いろいろと発注していたことがここで発覚した。犯罪と言えば犯罪であるが、副司令権限でそれはチャラにし皆も黙認した。
まあ、それどころではなかった。
 
 
「流して」
 
その一言で斬り捨てられる哀れ。とにかく、その雪球、全部飲み干せ、と。赤い目は。
 
 
「綾波さん・・・・・・・・分かりました」
 
 
碇シンジがなんで大人しく従ったのか、誰にも分からなかった。
あんな稚拙なごり押しを呑む別腹があるのなら、かもしれないが。
 
不気味であったが、結果には文句のつけようがない。また、暑くはなるが・・・・
 
 
とにかく、エヴァ初号機は、ゴドムの天災攻撃を都市全域から消滅させた。
 
 
が、碇シンジはあの調子のままで。自宅にも戻らず、ケージ内にテントを張ってそこで日がな一日、寝転がっている。学校にも行かず訓練にも参加しない。
 
 
「冷気を呑み込みすぎて、お腹が痛いのです」などとバカな言い訳も、その吐息がやけに冷たいのを実際感じてみれば、全否定するわけにもいかない。いきなり天職を失ったおとうさんのようでもあるが、万事においてやる気がない。体調が悪いのであれば入院させるところであるが、「もう、ここでないと初号機に乗るテンションが保てません」と、本人が言うのだからどうしようもない。何かあれば乗る、という意思表示はしているわけだ。
 
本部の人間にしてみれば、それは助かることでもある。なんせ、呑み込んだ、とはいえ、それをどうやって消化するのか・・・・・していないのか、おっかなびっくりで経過観察中でもある。なにか異常が、機体の腹が凍りつくようなことがあれば、表に出ていったん吐き出すなり対処をする必要があるが、近くにパイロットがいれば即座だ。葛城ミサトや惣流アスカがいれば黙っていないのだろうが、まだ二人は戻ってきていない。
 
 
 
鬱、といえば鬱なのだろう。
 
 
あれだけのことがあったのだ。バラバラになっていた自分を組み立てたのだから、馴染むのにそれなりの時間がかかってもおかしくない。彼に時間を。そののち、愛なり言葉なり。
 
 
ネルフ総本部もヒマというわけではない。冷凍停滞から逃れてしまえば、労働活動が待っている。なんにせよ、都市ごと冷凍牢に入れられるところだったのだ。その落とし前をつけねばならない。こちらをアイスケーキのように切り分ける気まんまんだった周辺上位組織相手に代償を要求しまくり、体制再々編にもっていく。とりあげられた人材を取り戻し、優秀な人材機材をよそから取り上げる。その代わり、不要無用な部門をよそに投げ飛ばす。
 
悪魔と呼ばれようと、そんなものは、かとちゃんぺである。
 
 
第三新東京市、ネルフ本部が、業界の最前線である事実は、かき消されなかった。
その時、歴史は動かなかった。まあ、現状の続行にだって地獄の努力が必要な刻もある。
 
 
そんなわけで、発令部実働部の主要な面子がそろう時間というのはあまりに貴重。
 
 
こまごまとしたことを民主的に決めている余裕などない。いっとう大切なことだけ共有できればそれでいい、とすべきだった。使徒迎撃用武装要塞都市、特務機関ネルフ総本部における、一等大事な点とは。頭でも肌でも理解できている者だけがここにいる。
 
 
つまり・・・・・
 
 
旗艦機体をどれにするのか、ということだ。
 
 
現在、本部にあるのは、エヴァ零号機、エヴァ初号機、エヴァ参号機、エヴァ八号機。
どれもクセの強いものばかり。半異形といっていいクラス。その運用もまた。
 
司令が決定すればよさそうだが、この場におらぬしどうせ副司令のいいなりである。
副司令、冬月コウゾウ氏にしても、これは悩むところである。普通考えるなら、これまでの安定の実績からして、零号機にするところではある。エースとも、サイキョー機体というのもまた違う意味合いだからだ。実際、綾波レイの零号機は、その任を何者よりも誠実に負ってきた。鋼鉄の責任感をもって。ゆえに、普通考えるなら、続投であろう。
 
しかし、悩むところであった。ゆえに、この時間をつくった。
 
 
碇がいれば、初号機一択で話は早いのだが・・・・・・・
 
息子があの調子ではなあ・・・・・・・・・・・とてもユイ君の血が入っているとは思えない有様・・・・・・術式は大いに失敗したのではないか・・・・・14の器が育つまで待ってはみたが・・・・肝心要のユイ君の因子がない六分儀オンリーならあの無気力もわからんでもない・・・・根源的な何かが欠落している・・・・・・
 
 
レイも分かってやったわけではないだろうが・・・、
 
 
言うことを通したあれは、要は彼の根負けで、レイの根勝ちにすぎない。
大した時間ではないが、そういうことだ。
 
力も気位も彼が上でも、めんどうくさくなったのだろう。
 
あれは、父親にも母親にもない性質。こうだと思えば、ひたすら貫くのが正反対に見えるあの二人に共通する気質。それが子供に引き継がれていない、というのは、ありえない。
 
碇ゲンドウ、碇ユイ専門家であるからこその視線で、他の者が見抜けぬのは当然だ。
 
 
その最重要な碇ファクターを、欠いていると、なると・・・・・・
 
 
とても・・・・・・主人公には・・・・・・・・
 
 
 
「けれど、碇君にもとってもらいます」
 
 
悪びれた風もない、というより、至極当然、自然の中の自然、といった様子の綾波レイ。
リンゴから手を放せば落下する。当たり前のこと。そのリンゴを拾うのは碇シンジ。
当たり前のこと。みたいな。
 
「いやいや!!それ待ちいや綾波!」「鈴原も待とうね。まだ発言途中みたいだし」
さすがにあんな調子とはいえ、友のために立ち上がろうとした鈴原トウジを彼女が抑えた。
抑えつけられた。ぎゅーと、強く。青葉シゲルと日向マコトが顔を見合わせ野郎合掌する。
 
 
「へえ・・・・ここにいないから気の毒だけど、聞いておこうか。彼は、どんな責任を?」
 
興味本位、という表情であるが、問いかけ自体は鈴原トウジ以外全員を代表していた。
やることは苛烈だが、少女なりのスジ、というものがあるのは確か。口にすればそれを必ず通すであろうし、また、通させる。それは・・・・・
 
 
「復元・・・・・・元に戻すこと」
 
まったく未来志向ではなかった。その目は若人らしい先を見ていない。
去りがたい過ちの時を。強い赤色。闇を裂く代わりに、弱い明星(アスター)など叩き潰し。昔のようにせよ、というのは、理屈ではなく情念の物言いで。それはあの竜女のようでもあり。元に戻す、といっても、既に失われたものはどうするのか。もう自分たちの中にしか存在しない影がある。無茶ぶりが過ぎる、といえよう。
 
 
が、彼女が、少女が、それを望むなら。
 
 
しっくり、きた。まさに欠席裁判で、ひでえなあ、とは思うのだが。ほぼ全員が。
 
 
一人だけ、わけのわからぬトンデモ職業に落ち着いている場合でもないだろう、と。
少年ひとりだけ謎未来に飛来遁走してもらっても、自分たちはまだ困るのだ。正直。
戦いの時は真っ先に矢面に立ち進み、日常では一番最後に食事をとること。むろん飢饉の時も・・・などと言い出すのかと思っていたが。綾波レイが碇シンジに望むのは。
 
 
「ははっ」
 
守護者の鎧を着続けるような、もっと、”まっとう”な呪いかと思っていた火織ナギサは、一瞬、目を丸く、満月のように、して、吹いた。「ははははははは!」
 
 
「つぎの曜日くらいには」
 
「「特撮かい!!」」
 
思わず鈴原トウジとダブルで突っ込んでしまった。
 
大昔の特撮番組で、次の週には怪獣に破壊されまくった街が元通りになるようなことを言うのがあまりにもアレだったので。なんという寡黙せっかち。
 
 
 
その頃、テントの碇シンジは、「命の水。これでも飲む、だーるね。そーれ、ごくごく」葛城ミサトが戻らないのでまだいる赤野明ナカノにどえらく強い酒を飲まされていたので、お約束のくしゃみなどしなかった。