次回予告
 
 
    信じる者は救われる
    騙した者は騙される

 
 
 
<ぷれびゅう>
 
VTOLは予定時間に到着したのだが、何かJA連合側にトラブルがあったとかで、こちらが迎えに行くまで機内から降りないように、と時田氏から連絡があった。
「招待しといて待機?冗談じゃない、帰るわよ」と啖呵をきりかけた葛城ミサトだが、「ご招待しておいて不様な話ですが、今日ここでしか観戦できない、外国から超豪華ゲストを招いた超特別イベントをプログラムに超追加いたしましたので、ネルフの葛城三佐をはじめとしたパイロット、整備の皆様にはぜひご覧になっていただきたいのです。この不手際は幾重にもお詫びいたします、が、内容はご満足いただけると確信しております。世界最先端の超戦闘ロボットの超テクノロジーがいかんなく発揮された超素晴らしい・・・・」
「分かりました・・・・待てばよろしいのでしょう。へいへい、”超”待ちます」
エヴァを二体持って手ぶらで帰るわけにもいかない。だが、このスキにエヴァの覗き見なんてセコい真似をしようってんならタダじゃおかない・・・と言外に釘を刺しておいて仕方なく葛城ミサトは了承した。またはそれを種に因縁をふっかけることも出来る・・・・
別段、ここには仲良く親睦を深めにきたわけでも、技術見学しにきたわけでもない。
 
「明暗、レイ、そういうことになったから。いい?」
 
「・・・了解・・・・(ウルトラって・・・なぜいわないの、皆・・・・)」
 
「オレたちも別に構わねえよ、・・・・どうも、本当にトラぶってるみてえだしな。どうも空気がキナ臭い・・・・・・まあ、敵地で順調に物事が進む方が気味が悪いからな。
ただ、参号機に勝手に触ったら、ここら一体何百年も立入禁止の”瓦礫場”になるって伝えておいてくれ。人間も全員一族郎党皆殺す」
 
「わ、わかったわ・・」
 
「よろしく頼む。で、提案なんだが、そういうことなら、ちいと早めだがここらで腹ごしらえをしておかないか?敵地で敵の飯を食うほどまぬけなことはない。時間通りに食えるとも限らない。
鼻羅に弁当を作らせておいたんだ。日本じゃまずお目にかかれない食材を選り抜いたんだ、どうだ葛城の姉貴。うめーぞお」
 
黒羅羅明暗は食の大国からやって来た宗教関係のトップである。桁外れの金持ち物持ち。
綾波レイはともかくとして、葛城ミサトの食指が動いたとしてもムリからぬ。
 
「生ものが多いからな、なるべく早めに食べてもらいてえんだ。鼻羅が、張り切っちまってな、一人で食うと腹八分を越えちまうんだ」
 
とまで言われては、ケーキは別腹、オスカルはベルばら、女が廃るってものよ。
お相伴にあずからせていただきやすか・・・・・けひひひ・・・・・
本陣を遠く離れた何が起こるか分からぬ敵地での待機状態、よくも食欲が起きるものだの野太い神経。明暗が持ってきたでかい重箱を開くと、そこは未味の領域、食のワンダーランドが広がっていた。馬味とかいて「うまい」と読む。好(ハオ)。
壺中の天にも似たその重箱の中の味世界に葛城ミサトと綾波レイは吸い込まれるハメになるのであった。好。
 
 
「これは横公魚っていってな、食べると疫病を防げる」
そう言って明暗は、赤い鯉の刺身にしたそれを綾波レイの皿にとった。
おいしそう、とも、食べる、とも言っていないのに。疫病を防ぐ、健康にいい、だから食え、という論法で、食事に淡泊な綾波レイは、いや、淡泊と言っても今まで見たことも聞いたこともないものを勧められてなんといっていいものか迷って葛城ミサトの顔を見るが、そちらも苦笑いしているのみ。頼りにならない。好。
 
「これは鮨魚(けいぎょ)食べると狂気が治る」
「これは豪魚・・・チョウザメに似ててな、食べると白鮮が治る」
「これは此魚魚(せいぎょ)・・・これを食べると驕らなくなる」
「これは青虫夫(せいふ)酒・・・・飲むと金持ちになれる・・・・ってか、使った金がブーメランのように戻ってくんだな、これが」
「これは赤弊鳥(せきへい)・・・胸と腹が赤くて緑の頭に金のトサカをもつ派手なヤマドリだが火除けのまじないになる」
「これは丹遺魚(せんいぎょ)・・・・魚身蛇頭で六本足、馬の耳のような目があって、これを食べると夢にうなされなくなる」
「これは仙鼠(せんそ)・・・齢500を越えて頭が大きく白くなった蝙蝠のことだ。
食べると仙人になれるぞ・・・・退屈だがな」
「これは魚巣魚(そうぎょ)。鯉に似てニワトリのような足がある。食べると、こぶ、いぼ、まめが治るぞ」
「これは謄魚(とうぎょ)・・・・目と口が大きくて青い斑紋があって尾が赤い、食べるとできものができないぞ」
「これは悠魚(ゆうぎょ)・・・・尾が三本で足六本、目が四つで食べると愁いがなくなる」
「これは幼鳥(よう)・・・・体が青くて目が赤い鴨のような水鳥で、食べると安産間違いなし・・・葛城の姉貴、一丁どうだい」
「これは魚陸(りく)・・・・牛のような形で蛇の尾と翼を持って陸上に住む魚だ。食べるとむくみが取れる」
「これは木礫(れき)・・・・黒斑紋のあるうずらで、食べると痔が治るぞ」
「デザートに龍肝果、外は霜のように冷たく、中は蜜づけのように甘い。食べると喉が乾かないぞ。」
 
 
・・・・このような調子であった。好(ハオ)。