スーパーロボット七つ目大戦α
<風雨来記もとい北海行 ルート>
「ふむふむ・・・・・・なるほど、北へ・・・・・か」
激闘の一夜が明けて・・・・・パイロットたちはさすがの疲労でそのままバタンキュー状態で、最も体力のある大十字九郎と赤木俊介でも昼まで寝こけてしまい、惣流アスカや綾波レイなど、夕方まで起きてこなかった。そのため、今朝の朝刊を朝のうちに読めたのは、ほとんど睡眠を必要としない渚カヲルだけだった。暗いうちから起き出して、エヴァの整備作業の様子を確認し、再々度の侵攻に備えつつ、じっと朝日を待っていたのだが、来たのは敵ではなく読売であった・・・・もとい、新聞。世界情勢の異変や綻びから碇シンジの位置を探れはしまいかと、淡すぎる期待とともに戯れのように手にとってみたのだが。
めったに揺れることのない渚カヲルの赤い瞳が、わずかに細められる。
そこには・・・・・
戦闘中の葛城ミサトのどこか手を抜いた様子と、ロジャー・スミスが出撃しなかった理由がこれで分かった。確かに、裏で”このような真似”をしていたのなら、戦っているヒマもなかっただろう。なるほど、連絡所もカラで、早朝から大河内社長から呼ばれているわけだ。
動くことになる。この光景も見納めだ。21世紀警備保障本社ビル屋上からお台場の光を浴びながら、「北極(ノースポール)を探しに・ZABADAK」を歌う渚カヲル。
「歌はいいねえ・・・」自分の歌に朝から酔う渚カヲル。どこぞのガキ大将と違って強制参加のリサイタルを開いているわけではないから、誰からも文句は出ない・・・・。
「らら」
独白に答える声。少女の声。背後から。おそらくは賛同の意。
世から浮いた、それゆえに世界の調律を行える、巫女の声。
こんな時間に屋上に出入りする奇特な人間は自分ひとり・・・・渚カヲルが気配を感じないような特殊な血をもつ社員はこの会社にはいない。ゆっくりと振り向く渚カヲル。
二人の少女が。そこにいた。
日傘を差した、どこかアンティックドールをおもわせる、編んだ赤紫の髪にベレー帽を被った少女と。軍服と女学生の制服を足して二で割ったような不思議な形式の服に、ある種の生体サポート機能を内蔵させているらしい胸部の白いプロテクター。
もう一人は、黒髪に、白い肌、黄色のサマードレス・・・・高級避暑地で十代の少年が見かけれたなら、生涯の切ない思い出になりそうな、高嶺の向こうに咲く儚い恋を絵に描いたような美少女。
二人の少女と、渚カヲルの目があう。微笑をかわす。
「君たちは・・・・・」
「あなたは・・・・オリン?」
「いえ・・・・・彼は、綾人君じゃない・・・・違う人だわ」
問いに対しては、謎の問い。そして、自分は彼女たちの探し人ではなかったようだ。
彼女たちも、人を探している。なるほど、同じなのか。波が、同調するわけだ。
「ら・らら」ベレー帽の少女がもういちど調律の声。それで、二人の姿が消える。
メトロノームのように、こっくりと首をかしげる渚カヲル。気配は消失した。
「僕の歌を聞きにきた天使ではない、ということか・・・・・・」
確かに、それだけはなかろう。
「できれば、この件に関してご説明願いたい」
大河内社長のデスクには、秘書によって切り抜かれた新聞の広告欄の拡大コピーが、十枚ほど。大手の新聞社全紙の一面下部全てを借り切って、ばかでかい広告が打ってある。どうすればこのような真似ができるのか・・・・・よほどの圧力と大金が動いたのは確かだ。その内容は・・・・・一言で言えば<求人>いやさ、<求ロボ>とでもいおうか。
<来たれ!正義のスーパーロボット!
集まれ!熱血パイロット!力漲る整備員!
悪を倒すためには給料もいらぬ一途な貴方!
”ドロン・ベル”はそんな人たちを求めて
おります。一緒に悪の寝首を掻きましょう!>
という巨大な煽り文句に、北海道の無人原野の地図がくっついている・・・・・
細かい連絡先など一切なく、情報量としてはほとんど三行広告のレベルである。
こんなもんがよく載せられたものだが・・・・おそらくそれは、葛城ミサトの隣でミイラのようなカサカサ唇のロジャー・スミス氏の仕事なのだろう・・・・・バックボーンとして特務機関ネルフの影があったとしても。ただ、この広告には異様な迫力だけはあった。
なんせ、いつ撮影されたのか、昨夜の戦闘シーンの写真が生々しく掲載されており、ぺたんこになった飛行要塞が逃げていくところなど、「寝首を掻く」という悪い冗談のような表現に読む者をねじ伏せるような説得力を与えていた。真実の重みというやつである。
ただ、その写真にはダイ・ガードは写っていない。エヴァとデモンベインだけだ。
「”ドロン・ベル”などと・・・・・冗談がすぎます。葛城三佐」
その意味を理解した、同席の城田氏が苦い顔で。大杉課長も情け無さそうな顔をしている。
こうもデカデカと正面きった”悪への挑戦状”など、本家ロンド・ベルでさえやらない。
「そのままロンド・ベルの名称を拝借しようかとも思いましたが、向こうはすでにこっちをそう認識しているようですし、こちらのほうが混乱するかな、と考えた次第です」
徹夜あけだが、葛城ミサトの眼光は女虎のごとくギラギラと。これからまた戦うことを考えている者の目だ。そして、大河内社長に向け一礼。
「いろいろとご厄介になりましたが、今夜、発ちます」
「まるで梁山泊の豪傑だが・・・・説明はまだしてもらっていない」
大河内社長の厳しい顔に、葛城ミサトの方もいぶかしげに歪む。
この派手派手しくも内容がなく、ただ単に無人の北の広野にスーパーロボットがこれより陣取ること”だけ”を知らしめたこの意味なし広告の本来の目的が分からぬ社長でもあるまいに。
この説明を、これからの自分たちの行動計画を、21世紀警備保障は、ダイ・ガードは、聞く必要はない、いや、聞いてはいけないのだ。そのために、昨夜襲撃してきた連中を叩きのめした写真から、ダイ・ガードを外したのだから。民間企業であり、言っちゃあなんだが対ヘテロダイン対策の兵器であるダイ・ガードがこれ以上の無理をすることはない。製造目的の通りに、ヘテロダインとだけ戦っていればいい。バカにするわけではない。ヘテロダインもそれなりに脅威であり、ロンド・ベルがスカウトに来ただけのことはある。
あの三人に動かされるダイ・ガードは、ビームもミサイルもついてないのになかなかのものだが・・・・自分たちにつき合わすわけにはいかない。世界征服を狙うミケーネ帝国は是が非でもこっちをつけ狙ってくるであろうし、執念深そうなハ虫類である恐竜帝国も同じくで、ここまで公衆の面前で大恥じかかせてやれば、ほかの悪の組織の手前もある、必ずや追ってくるはず。経済観念のない悪の軍団が何より重視するのはメンツなのだから。
襲撃優先度が下がり、多少は、ダイ・ガードのお台場周辺はましになるだろう・・・。
幹部が指揮をとる軍団クラスは無理でも、小型の威力偵察部隊・・・・分かり易く言うと”ヤクザのショバ代集金”部隊・・・くらいなら、十分にダイ・ガード一機で撃退できる、と葛城ミサトは判断した。できるだけ、そうなるように、と願うからああも激烈な挑戦的な文章になった。ともあれ、喧嘩は売ってしまったのだから、さっさと発たないと。
葛城ミサトはロジャー・スミスに目配せする。もっとも、急ぐ理由はそれだけではない。もっと切実な理由があり、ビッグオーを温存していたのはそれがあった。
説明なんぞしとる時間さえ惜しいのだ。それがわからぬ人物ではないはずだが・・・・・
短いご縁でしたけれど、
このご時世ではむつかしいでしょうが、せめても危険の少ない時を過ごしていただきたいのですが・・・ヘテロダイン退治というのも社会的意義のある重要な仕事でありますし。
そのために、わたしどもの行動計画を知ることはその妨げ、邪魔になるだけです・・・
出来うる限りの発つ「濁り」を薄めたつもりではあります・・・・・・
即ち、ここで縁切り わかれることはつらいけど しかたがないんだ 貴社のため
葛城ミサトは無言の中に真摯の思いをこめて、大河内社長を星影の瞳で見あげる。
だが、その返答は葛城ミサトの思いもよらない、鶴の一声、
「我が社のダイ・ガードを”ドロン・ベル”に派遣するのだ。説明を受ける権利はあると思うが」
というものだった。古傷のある味のある顔でニヤリとされて、赤くなる葛城ミサト。
「え?ええっ?そんな・・・・!!あのですね、大河内社長!・・・・いや、その、城田さん、大杉課長、社長がどう聞いてもワンマンに独断専行されているんですけど、役員や株主総会はだっ、大丈夫なんですか」
予想外の返答に、小娘のように狼狽える葛城ミサトであった。上司があの碇ゲンドウであるから、同年代の男性にこんな、高倉健さんみたいな味のある笑顔を見せられた日には。
免疫がなく、抵抗できなかった。
「ふぅ、む・・・」
ネゴシエイターとしては、こんな風に笑み一発で、自分を無理難題をもってコキ使うこの鋼鉄の女を陥落させるこの人物にわずかな嫉妬と羨望さえ感じてしまうロジャー・スミス。
「いいんじゃないですか。国内ならば、我が社の輸送機”あほうどり”ですぐ運べますし」
大杉課長がにんまりと笑う。・・・・煮染めたようなおでん味はあるが、ちょっと葛城ミサトを陥とすほどではない。
「城田さあん・・・・」
思わぬ話の成り行きに、堅い理性のブレーキ意見を期待して城田氏を見る葛城ミサトだが、
こちらからも、思わぬ一声にピン刺しされてしまう。
「もし、あなた達の目的地が”小樽”であるのなら、話はかなり現実味を帯びてきますが」
「ぬあっ!?な、なんでそれを・・・・ロジャーさん?バレ?」
「いえ、こちらの機器を使用させてはもらいましたが、記録を読まれるようなことは・・」
”小樽”この地名一つで目をむいて驚く二人。21世紀警備保障を甘く見ていたのか?
産業スパイや施設の盗難、ストーカー対策の一種で、盗聴を封じるのも最近の警備の仕事であるから、逆に言うと、その手口を知り尽くしたプロがいるわけだが。
「うぐぅ」
恨みがましげに葛城ミサトがジト目になる前に、城田氏が説明する。それは盗聴でもなんでもなく、ただの推理と情報収集の結果と、そして今日の広告の意味とを組み合わせたものなのだ、と。
彼もまた、戦術アドバイザーとして漫然と昨夜の戦闘の場にいたわけではない。
じいっと、状況をみて分析していた。こういうのが敵にまわすと怖いタイプである。
その分析によると、葛城ミサトという指揮者は、「碇シンジとエヴァンゲリオン初号機の回収」を最優先に考えており、その他のことはトッピングにすぎない。
利益も正義もほとんど関係ない。城田氏の慧眼はそれを見抜いていた。
下手に同行しようものなら、不幸な、痛い目を見るのが分かり切っている。
目的が、他人が共感共鳴しようがない、えらく個人的なものであるからだ。
たとえ大局と逆行しようが、目的のためには作戦行動する・・・・。待つより動く。
ゆえに、城田氏は葛城ミサトたちがここを去るにしても、そのままおとなしく第三新東京市に戻るとはゆめ思っていなかった。普通の、凡百の指揮者ならばそうするだろう。
なんせ貴重な人造人間エヴァ三体と、三名の子供の命を預かってきているのだから。
恐ろしくて、あてのない進軍を続けられるはずがない。だが、それを葛城ミサトはやる。
戦術教本的にいえば、狂っているとしかいいようがない。話を聞くと、碇シンジとエヴァ初号機、だけがロンド・ベル入りを果たしているのだからなおさらだ。頭がおかしい・・・・それはいいすぎにしても、暴走といえる。よくもまあ強制帰還命令がでないものだ。
その「暴走」が、北の大地へ向かうと聞いて、城田氏に閃くものがあった。
葛城ミサトは「空中戦艦」を手にいれるつもりなのだと・・・・・・
碇シンジと初号機を載せたロンド・ベルのアーガマに追いつくにはそれしかない。
行動の先読みをして待ち伏せ合流をするにしても、同程度の足がなければ。
そして、昨夜の戦闘のように、どうしても電源設備のない場所ではエヴァは中途半端にしか戦えない。今度また敵を蹴散らす時にはそれを解消できる、移動する大容量発電所を必要とするはずだ。
だが、そんなものをおいそれと手にいれられるわけもなく、いくらネルフでも軍からは徴発できないし、金を払っても買える代物でもない・・・・・ご都合主義にもほどがある。
しかし、葛城ミサトとロジャー・スミスのコンビは不可能を可能にする・・・・行動力があったようだ。小樽には、彼らの現状にあつらえたようにタイムリーな空中戦艦がある。
まるで運命の神に魅入られているかのような都合の良さだが、あくまで都合がよいのは葛城ミサトたちであって、その空中戦艦は現在、かなり不幸な目にあっているのだ。いやはや、その不幸さ受難さゆえに、城田氏のアンテナにひっかかったというべきか。
空中戦艦の名は「ヒリュウ改」。
いったん沈められた外宇宙航行船を戦艦に改造したもので、まだ試験航海も終わっていないピカピカの一年生であり、それにあわせてかスタッフや艦長の方もピカピカの一年生という・・・・・まことに”間の悪い”新型戦艦であった。こんな悪党が跳梁跋扈する年でなければ、順当に経験を踏ませてもらい、今度こそ外なる宇宙へ旅立つ人類の代表たるクルーが育成されていただろう・・・・・が、今はそんな呑気な時ではない。何から何まで長い時間が必要となる、大器晩成型の戦艦などに用はなかった。即戦力が必要なのだ。
と、いうわけで、ヒリュウ改の不運は始まる。
まずは配備されていた優秀なパイロットをゴッソリ引き抜かれてしまったのだった。
艦の護衛や攻撃の中核を担うべきパーソナル・トルーパー部隊が、機体もろとも。
アルトアイゼンだのヴァイスリッターだのヒュッケバインシリーズだの、それらを束ねる隊長機として、グルンガストという戦艦殺しの座長格の大看板スーパーロボットまで。
それにともなう整備関連のスタッフも、他の旧式戦艦の補充スタッフとして艦橋の人間も、まあボロボロと連れて行かれた。これも軍隊のつらいところだが、艦長がぴかぴかの一年生で、しかも若い女性ときているのだから、人脈も影響力もない、金がないヤツはオレんところに来い!どころではない、それゆえに歯止めがかけられない。まるで童話にある、貧しいひとに黄金の皮膚をあたえた王子様の像や、腹をすかした人に自分の頭を食べさせるあんぱんまんのようであるが、哀しい。
哀・艦長、その名はレフィーナ・エンフィールド。
そんなことって本当にあるのか、と言われそうだが、実際にあるのだから仕方がない。
これで士気があがるはずもなく、下がる一方だが、まだ追い打ちをかけるような事態が。
引き抜かれたパーソナル・トルーパー部隊の代わりに配属されたのが、なんと「ボール部隊」。一応、モビルスーツではあるが、その形状は「目玉」に、小さなマニピュレーターがついているだけ、という「これで一体どうしろと?」と叫びたくなるような、相手にする敵にしてみれば、どんなエースパイロット、いやニュータイプや強化人間が乗っても負ける気がしないだろう。端的に言うと「目玉おやジム」!。さすがにこれを寄越してきた軍の偉いさんにも人の心があったのか、最新型AI搭載、ということで人命の心配はない。
それが七つ。リーダー機は充血のように赤くしてあったという・・・・・
で、その「ボール部隊」であるが、「エアロゲイター」と名乗る宇宙人の部隊が襲撃してきて、”全滅”してしまった。まあ、分かり切った結果で、これは相手が悪い。なんせ宇宙人なのだから。ちなみに、ヒリュウ改の前身、ヒリュウを宇宙の海で沈没させたのもこの宇宙人であった。つまり、目をつけられていたのだろう。それでもけなげなレフィーナ艦長は、負けじと士官学校主席の頭脳を発揮して、切り札である艦首超重力衝撃砲を最良最高のタイミングで発射させてなんとか敵を撃退した・・・・・
だが・・・・軍人の道は厳しい。
「ボール部隊全滅」の責任をとらされて、ヒリュウ改の秘蔵の機体、「地球圏最後の番人」の異名をとる、一説によるとあの黒金の城、マジンガーZの三倍強、史上最強の防御力を誇る「ジガンスクード」も取り上げられてしまった。これがあるのとないのとでは、艦の存在の重みがまったく違ってくる。最後の看板役者も消えてしまい、竜は竜でも、タツノオトシゴ程度になってしまったヒリュウ改。
おまけに、そのジガンスクードがどこに行ったのかというと、同じ軍の艦、スペースノア級万能戦艦、クロガネやハガネやシロガネあたりに配備されたならまだしも、どういう流れでそうなったのか、なんと「ナデシコ」というネルガルなる企業が建造した戦艦に配備されたというのだから、無念としかいいようがない。
だが、不運はまだ続く。ピカピカの一年生の艦に、艦長に対するバランスをとるかのよに配属されてきた「オールドタイプ」部隊。経験豊富で歴戦の勇士、ズゴッグだのアッガイだの、機体は古いがそこは気合いでカバー!まだまだ若いモンには負けやせんぞお!!という、退役軍人の会、”白流星倶楽部”からせっかく馳せ参じてきてくれたのはいいが、
いかんせん、北の大地の冷気は老体にはきつかった。
バタバタと訓練で倒れていき、すぐに一人残らず本土へお帰り願うことになった・・・。
さすがにこれで「健康管理不行き届き」で責任をとらされることはなかったが、これでヒリュウ改の評判とテンションは際限なくクレバスの底へ。
永遠に入学試験を受け続ける万年くんのような状態に陥ってしまった。
本来の力を発揮することを許されず、宇宙へも飛べるはずの竜は、海に繋がれたまま。
”間が悪い”としかいいようがない。手駒さえそろえば、現在稼働しているものども・・・・横須賀にいるナデシコ、沖縄のリーリャ・リトバクさえも押しのけて最強の戦闘艦として登極できるものを。肺炎にかかった存在理由(れぞん・でーとる)。
若いレフィーナ艦長も、そのルックスのみならず、未知の敵、宇宙人相手に一撃一砲で戦況を覆してみせたその判断力は高く評価されるべき。だが、運がない。「幸運」が。艦長の適性としてそれは致命的なのか・・・。切実なことに、若くして抜擢されたはいいが、人脈がないため、強引によそから腕利きパイロットや機体を員数つけてくることができない。このままでは試験航海すらもままならぬ。なんせ、この目立つ巨体、竜が天を舞えば、悪党どもは黙ってはいないだろう。我先にと攻撃し、最悪、奪われてしまうかも知れぬ。
はっきりいって、ヒリュウ改は完全ではない。まだ鱗の固まりきらぬ、飢えた鮫に会おうものならそのまま食いちぎられてしまう、幼い竜だ。時間を稼ぐ、護衛役が必要なのだ。
だが、それがいない。このまま小樽で燻るしかないのだろうか・・・・
「わたしなんかが艦長になったのが、いけなかったのでは・・・・」
運がない若き艦長はさぞかし、苦悩していることだろう。北の大地で。
いや、そんなことはない、と南西より語る女が居る。葛城ミサトである。
そういった経緯で、試験航海中の護衛役に事欠いて困っている不運の空中戦艦・・・・
なんせ外宇宙航行船がベースである・・・・その能力はアーガマなんぞを凌駕する、はず。
狙いをつけた葛城ミサトに命じられたロジャー・スミスがどのような交渉を行ったのか。
想像に難くない。
城田氏はさらに推理を進める。
そして、それは急ぐはずだ。そのことを知っているのは彼女たちだけでは無論ない。
他にもオファーがあるかもしれぬ。いや、この時点のオファー、または廻されてくる人材にろくなものがいるはずもない。苦悩する艦長の心の隙に悪の組織の工作員が潜り込む可能性すら十分にある。籠絡の計・・・・古来より行われてきたことだ。珍しくはないが効果的だろう。そうなる前に、自分たちがその座に座り込む。・・・・戦闘に使用しなかったビッグオーは、おそらく”手付け”なのだろう。それほどまでに、葛城ミサトは空中戦艦を、基盤となる移動手段を求めている・・・。碇シンジと離ればなれになった元々の原因がそのことであったのだから、なおさらであろう。
自分たちが人の足下を見ているだけに、他の人間の動きにも聡くある・・・・。
おそらく、この時点で葛城ミサトが選択したのは、空中戦艦という足を得てより、そのまま第二次ロンド・ベルとして、本家の牽制にまわることだろう。そして、その活動は国内に制限される・・・・なぜなら、こんな名前で派手に暴れれば、本家のロンド・ベルが向こうからコンタクトをとってくるに違いないからだ。現在の状況で神出鬼没の独立部隊を追うよりは、おびき寄せた方がよほど確実だろう。
・・・・これはあくまで想像にすぎない。魂胆がまだほかにあるかもしれない。
葛城ミサトもその点の本職であるのだから。
悪の軍団がどの程度北の方へ誘われるかどうかは分からないが、市街地で暴れ回られる分がわずかでも減るというのなら、やってみても損はなかろう。どこから莫大な広告費を捻出してきたのかは分からない・・・・・エヴァもデモンベインも「改造」を施された様子はないのでもしかすると・・・・・いや、それを考えるのはやめておくほうがいいだろう。
大河内社長が会社のダイ・ガードを北海道まで出張させようというのは、現在の状況でダイ・ガードを単独でほうっておかれてもしょうがない、ということに尽きる。ヘテロダインが恐竜帝国の用心棒のようになっていた、ということを考えれば、こちらもドロン・ベルの警備役となったほうがよい。そう判断したためだ。勢力善用、自他共栄である。
葛城ミサトの最優先目的が、エヴァ初号機パイロットを手元に戻す、という大局もへちまもないなんとも個人的なものではあるが、その為に選択する手段は、こちらの目的や利益と合致する。・・・・・人や財産を守る、という。彼らも、同じく都市の守護役。
そして何より、彼らには恩がある。それを返す社会的道義的責任を果たさずして、なんの会社か。人の集まる組織には、困難の時にあっても、それくらいの強さはあるはずだ。
冷静沈着な城田氏の目に意志の炎が燃える。
「小樽周辺にヘテロダインが現れた場合、我々は行かねばならないのですから」
「そういうことです、手間は同じなのですよ、葛城さん」
「城田さん、大杉課長・・・・」
ダイ・ガードは正直言って、そんな出鱈目に強いロボでもないし、特殊な能力があるわけでもない。ヘテロダインも、渚君の四号機ならおそらくやれるだろうし、目の前で実演してくれたのだから、レイの零号機にだって。ただ・・・・・警備会社という肩書きは、魅力的ではある。すっかり人間不信に陥っているらしいヒリュウ改の艦長相手には、こちらを信用させるに足る顔である。今はまず、とにかく艦が入り用なのだ。パイロットのこともあるし・・・・エヴァは子供で、デモンベインは若者と少女、まともなのはロジャーさんだけときている。・・・・頼りないパイロットで哀しい思いをしたという艦長ならなおさらである。いかにもイキのよいダイ・ガードパイロットの三人はこの点、好感度高そうだし・・・・
この親切な申し出にもかくのごとし�紊里海箸鯤△涼罎嚢佑┐討い襪鵑世蹐Δ福ΑΑΑ�
ロジャー・スミスは睡眠不足の目で葛城ミサトの方を見る。確かに悪いことではないがね
R・ドロシーのようにアンドロイドには裏表はないものだが・・・・・人間は
疲れ目であるので、雇い主を見損なうロジャー・スミス。だが、それはすぐに修正される。
なんと、葛城ミサトは真顔でこんなことを言い返したのだ。
「いやー、お申し出はうれしいんですが、出撃枠は最大でも15機しかないもので」
男たちはどよめき耳を疑った。R・ドロシーでさえ一瞬、目を丸くした。
この時点で、彼らは「無償の正義」の存在を考慮に入れていなかった。この世に。
あんな広告を信じてほんとにやってくるスーパーロボットがいるなどと。思いもしない。
だが、葛城ミサトは・・・・あの広告の文章を考えたのも彼女なのだが・・・・どうも
本気で蛍のように、スーパーロボットが寄ってくると考えている、らしい。その顔は。
あっけらかんと、聖なる童女のように。汚れをしらぬ、女神のように。
「アーメン・・・」胸のまえで十字を切って御名を唱えるR・ドロシー。
大河内社長もその笑顔の前に圧倒されてしまう。豪傑、いやさ、これが傾国なのか。
あの広告の真の意味を読みとれなかった自分たちの魂は・・・・・徒に年老いていたか
北の大地で果たして何が起きるか?、そして、そうあっさりと目的地に向かえるのか?
「それは、難しいかもしれない・・・・」
屋上でどこからか拝借してきた天体望遠鏡で、遠方を見る渚カヲルがつぶやく。
赤い瞳に映るのは、用途違い、時間違いであるはずなのに、「木星(ジュピター)」。
方角は、さいたま。消えた少女たちの気配が向かった方角。
「さいたまジュピター」
さいたまを包む半球状の巨大なフィールド。その色彩がちょうど木星のようであるからそう呼ばれる。外から入ることは不可能。もちろん、さいたま県民が税金をつかって自分たちを守るために造り上げた代物ではない。さいたまは、「占領」されているのだ。
それだけのことが出来る力を持った何者かに。
「RAHXEPHONルート」もしくは
「夢でもし会えたら〜ケフネスの聖油ルート」