スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<いま、あいにいきますルート>
 
 

 
 
行方不明だったアルフィミィとその愛機ベルゼイン・リヒカイトが半ば撃墜されるような形で戻ってきた。何かを大事に抱えているようなまずい着地で機体は当然ズタズタで当分使い物にならず、またそれ以上に、いやさマジンガー一家の者にとってはそれこそが最重要のこと、内部のパイロットの命も・・・危ぶまれた。ひどくまずい体勢でキャンプまで届いた衝撃の量が戦闘経験の豊富な彼らに強い不安を抱かせる。
 
 
連日の捜索に疲れ切っていたが、そんなものは吹き飛んで大急ぎで機体に乗り込み現場に駆けつける。その間、長兄が代表してアルフィミィに通信をいれ状況を確認する。全員がそれをやりたかっただろうが、混信しては意味がない。ここは焦らず冷静に、迅速にだ。
「アルフィミィ!アルフィミィちゃん!」
真顔でちゃんづけであるが、もちろん笑うところではない。
返答がない、意識もないのか強すぎる落下衝撃でコクピットのどこかが破損したらしく吹き飛んだ部品がパイロットの、アルフィミィの額を切りつけていた。流血が少女の瞼の上を彩り。小さな、自らの意思で開くことのない唇に・・・・吸い込まれる
 
 
その様子は、もどかしいほどに、スローモーションに、モニタ越しの彼らの目には映った。
ひどく、不吉なものを連想させて。全力で全速で機体を飛ばし駆けさせる。グレンダイザーも、スペイザーも、マジンガーも、グレートも、ダイアナンも、ビューナスも、ボスボロットも、
 
そして、エヴァ初号機も。
 
 
各機体に備えられたレーダーが天空から追跡者の来訪を告げている。
モビルスーツ・・・・所属、アクシズ・・・・・何度も大戦をくぐり抜けてきているマジンガーたちの機体の記憶にある戦闘記録は解析し、来訪者の名を即座に割り出してパイロットたちに教えた。戦闘のプロである剣鉄也でさえそんなものは一瞥しただけで、あとはじいっと通信モニタの中の、下手すれば爆発するかもしれないベルゼイン・リヒカイトの中にいる末妹の姿から目を離さない。降下してくるモビルスーツの数はどんどん増えていくが、そんなものはいちいち確認するほどのことじゃなかった。マジンガー一家の者たちは全員、そう思っている。
 
 
帰ってきた。
 
 
末の妹が、帰ってきた。
 
 
ずっと探していた、アルフィミィが、帰ってきた。
 
 
一家のもとへ・・・・・・・
 
 
今、いくから。今、いくから。今、兄貴と姉貴たちがいくから、待っていろ。
何があったのか知らない、何をやって来たのか、知らない。あとで聞かせてもらう。
たぶん叱るだろう、怒るだろう。これほど面倒かけて心配させたのだから。
だが、帰ってきた。それだけでこんなにも喜ばせてくれて、どんな顔をすればいいのか。
だから、生きていてくれ。皆、祈りながら走った。魔神の名を冠せられながら、なにかに、だれかに向けて、己に燃える全エネルギーをぶちこむようにして、祈って。
 
 
「・・・あ・・・・・・」
小さな声であったが、マイクが拾ってくれて通信に乗り、一家の者たち全ての心に響いた。
生きている。アルフィミィは生きている。当たり所が悪くて死んでしまったりしてない。
生きていて、くれている。その声はあまりにも弱いけれど。確かに。末の妹の命の声。
 
 
「・・・・・あ・・・・・つきました・・・・の」
 
 
「「そうだ!」」「「そうよ!!」」「そうだよ!」「だわさ!!」
 
混線のことなどもうどうでもいい。力の限りマジンガー一家は全員で肯いた。誰かは秘密だが中には感極まって号泣している者もいた。
 
「シンジさん・・・・・・いますの・・・・・・・」
幽かに声はだせるが、いまだ瞼は開かない。これで、目が見えませんの、とか云ってしまっても、もちろん、つっこみどころではない。マジンガーブレードで斬首されるだろう。
 
 
「いるよ!!いますぐ、いますぐにそっちに行くから!!」
碇シンジが即答。アクシズのモビルスーツ部隊がベルゼインの落下地点めがけて急速降下しているようだが知ったことではなかった。どちらが速いかなんてことも忘れている。
ただ、そう答える。アルフィミィのために。
今からそっちにいく、というからには結局、「いない」わけだが、もちろんつっこみは不可。ブレストバーンで焼き殺されるだろう。もしくはニーインパルスキックで蹴殺。
 
 
「・・・・・だめ・・・・・・あくしずさんのほうが・・・・・・はやそうですの」
 
 
感情の塊、激情の土石流と化しているマジンガー一家より意識朦朧のアルフィミィの方が
ずっと冷静な判断をしている。降下するアクシズ部隊は自分を破壊するのが目的だからそのまま砲撃を加えればすむのだ。ハマーンの怒りを象徴するかのような膨大な火力で焼き薙ぎ払いにくるだろう。遠慮なしに宇宙サイズの砲撃兵器なんぞ使われた日にはここいら一帯の地形が変わるかもしれない。そんなものをまともに喰らえばいかにマジンガーといえどタダではすまない。わざわざまとめて敵の攻撃範囲に入ってくることはない。
 
この距離までくればアクシズ部隊もマジンガー一家を捕捉している。多少、驚き面食らってはいるようだが、それで追撃の手を休めるはずもない。部隊を指揮しているのはマシュマー・セロ。ハマーン様絶対の薔薇の騎士であるから完全破壊を確認するまで退くこともありえない。ちなみに、アクシズ的にいえば、アルフィミィなど、どう考えてもこそ泥であるし、盗られてものがさしたる重要機密ではないとはいえ、押し入られた場所がこれが自分たちの本陣ともなれば見逃すわけには絶対にいかない。正義は我にある、と。マシュマー・セロは思っているし、法律的に云ってもまったくもって正しい。
 
とはいえ、追跡でエネルギーを使ってもいるしここでまともにマジンガー一家を相手にする気はない。なんでこいつら、旗艦を離れてこんなところにいるんだ?とも思った。
アクシズ部隊が一戦構える気で降下するのならば、マジンガー一家は悠々と現場に到着できただろう。だが、そうではない。降下しながら目標に砲撃を加えて、破壊を確認したら即座に反転、宇宙にトンズラ、いやさ、帰還を果たす・・・こうなれば、マジンガー一家は手の出しようがない。「フッ、運のいい連中だ」鼻で笑う薔薇の騎士。こういったタイミングこそ、指揮官の実力が問われるものだ、とかなんとか自画自賛しつつ、ザク�靴寮鐺�コンピューターが絶好のタイミングを弾き出してくれている。ナポレオンのような騎兵を出し入れするような臨機応変な才能は今や必要なくなってきているのだ。
 
「だから、マシュマー”様”が指揮官でいられるんだけどね・・・・」新型ゲルググに搭乗するロザミア・バダムが唇を歪める。マジンガーたちをこんなところで発見したのは驚いて、あの不明機を捕獲して素性と連中との繋がりを明らかにしたかったがもうタイミングが遅すぎる。薔薇の騎士の号令のもと、天から降る三百を越える光の槍が不明機を貫き破壊するだろう。硬いが鈍重なマジンガーどもがガードする間はなく。
 
 
「それにしても・・・・・なんで”あんなもの”が欲しかったんでしょうね。他に使えそうなものがいろいろあったでしょうに・・・・」
バ・ウのグレミー・トトが不思議そうに問う。答える者も答えられる者もいない。
「こんな真似までして・・・・・・手に入れたいものですか・・・・分からないな」
 
 
 
天から自分に向けられる数多くの砲口を感じながら、アルフィミィはおそらく、この身体では最後になるだろう、言葉を紡いでいく。自分はもとよりこんな存在であるから、消えることに、消えてゆくことに、とくに恐怖はない。恐怖もないから・・・・悔いもない。
 
 
 
「あくしずさんから・・・・・・もらってきた・・・・・ぱーつが、ありますの」
 
それは思いつきとしてはなかなかのものだった。
 
「それをつかえば・・・・・・とっくんも・・・・うまくいきますの・・・・・」
 
きっと、うまくいくだろう。うまくいけばシンジさんも、みんなもよろこぶ。
 
「さいごのえねるぎーで・・・・・それを・・・・きゃんぷに・・・・おくりますの」
 
このぱーつまで壊されたら、なにをしにいったのか、分からなくなる。それはだめ。
 
「だから・・・・・・こっちに・・・・・きては・・・・・だめですの・・・・」
 
このぱーつをうけとるために、みんなが壊れてしまったら、とてもいや。それもだめ。
 
 
「だめ・・・・ですの・・・・・・・」
 
 
薄く光を感じていた瞼が、どんどん暗く、冷たくなっていく。転送機能を無理に使ってベルゼイン・リヒカイトに限界がきた。リンクしている自分にもそれが伝わってくる。
もう少しすれば。強い光が来るはずだ。瞼どころではない、自分と機体を焼き尽くす強くて熱い光が。「こうなった・・・」「・・それしかねえ」「やるしか・・・」「でも初めて・」「実戦・・・」「俺たちはいつも・・・」「必殺・・」通信機から声がひっきりなしに流れてくるけれど、意味がききとれない。大きいのか小さいのかそれもよくわからない。ただ、声の色のようなものがわかる。
声の色は、さまざまだったけれど、共通しているのは疑問の色。
なんで、こんなことを?と。自分たちの末妹は、なぜ、こんなになるまでこんなことを?
 
 
妹として、兄や姉たちに教えることがあったから、すこしうれしくなった。
疑問に答えることができることを。答えはある。なんで、こんなことをしたのか。
答えたら、怒るかもしれないですの。でも・・・・・
 
 
でも、どうしてもそうしてあげたかったのだから。しょうがない、ですの。
 
 
アルフィミィが頬笑んだ。末の者、その人の群で弱く幼く、そして最も神に近い者のうかべる笑み。
 
 
 
光がきた。
 
 
 
強い、光が。コクピット全体を吹き荒らすような強い、強い光がパイロットを呑み込む。
あとかたもなく。全て、染めてしまう。小柄な、影ものこさずに。光の、嵐だった。